3歳を過ぎた子どもは一般的に大人との会話がスムーズになってきて、生活面は自立が進み、保育園や幼稚園へ通っている子どもも多いでしょう。また、園生活では集団生活を楽しく過ごしているかもしれません。
なぜウチの子はこんなにも言うことを聞かないの? 一日中イライラしっぱなし、怒りっぱなしのママ・パパはいませんか?
3歳のそんな時期は、子どもにどう関わることがベストなのでしょう。そしてNGな対処方法とは? 保育士の炭本まみが、詳しくお話します。
言葉の発達や生活面の自立が進み、成長を感じる3歳児ですが、まだこの世に生まれて3年。経験が少なく新しいことに出会うたびに戸惑い、驚きます。感じたことや複雑にからみあった気持ちを、言葉で大人に伝えることは大変高度なことですから、3歳児にはむずかしいのです。
そのため、「イヤ!」「ダメ!」という言葉だけで表現したり、泣いたり叩いたり暴れたりして言い表せない複雑な気持ちを表現しているのです。
着替えや食事、トイレや人との関わりが少しずつ自立してくる時期なので、一見なんでも理解してできそうですが、まだまだ発達途中。ママ・パパに対して反抗的な態度をしたり言うことを聞かない、3歳の子どもの背景を深く掘り下げてみましょう。
3歳の子どもがなかなか言うことを聞かないのは、成長する上で誰もが通る道だとわかっていても、手こずる子育てを毎日するのは大変なことです。
でも、もう少し深く3歳児の姿を知っておくことで、少しあきらめがつくかもしれません。
3歳は自我の芽生えであり「自分でやりたい」「自分が決めたい」「自分はできる」という自立へ向けた心の成長期であり、第一反抗期の時期でもあります。
大人との会話のやり取りがスムーズになり、生活面でも自立してきますが、思うようにいかないことが多かったり、まだまだ自分の気持ちや感情をコントロールすることができないため、癇癪を起したり叩いたりして、どうしようもない気持ちをママ・パパに対して「反抗的な態度」で伝えているのです。
決してママ・パパの育て方が悪い、躾がなっていない、わがままに育ったということではありません。誰もが通る正常な成長のひとつです。
どうか心配しすぎず、そして子どもに対してイライラする自分を責めることなく、その時期が通り過ぎるのを待ちましょう。
小学校入学くらいまでは、言うことを聞かない子どもに対し疲れやストレスが溜まり、ママ・パパは大変な日々を過ごすことも多いでしょう。
イライラが募り、思わず叩きたくなったり、怒鳴りたくなったりすることもあるかもしれません。けれどそれも親として誰もが通る道なので、自分は愛情がない・忍耐力が無いのかな?と思わなくても大丈夫。
3歳でもママ・パパに対して試すような行動をしたり、顔色を見たりしています。
親が子どもに振り回されてしまい、その日によって対応や態度が変わることなく接すると良いですね。
そのためには、保護者の心の中で「ここまではOK、ここからはダメ」という線引きやルールを決めておくのがおすすめ。できることならママ・パパで共通認識し同じ対応をできることが理想です。時には毅然とした態度で接すること、一度決めた対応はコロコロ変えないことが大切です。一貫した対応が、子どもをしっかりと自立し自分で考える子どもへと育てます。
実際に3歳児との関わりで辛く大変な思いをしているママ・パパへ、保育士の筆者が経験してきた子どもの接し方や声の掛け方を、シチュエーションごとに紹介します。
お買い物で大変なとき・下の子を抱っこやおんぶしているとき・買物帰りで荷物をたくさん持っているときなど、なぜか大変な状況のときに限って抱っこをせがまれることも多いでしょう。
なぜ子どもはどこでもお構いないしに突然「抱っこ」というのでしょうか。 それは、保護者から自分への愛情を確認したいという気持ちが根底にあるからです。
可能であればすぐに抱っこしてあげましょう。抱き上げられないときはしゃがんで抱きしめるだけでも大丈夫。そして「お買い物の荷物をたくさん持っていて重いの。おうちに帰ったらいっぱい抱っこするからね」など理由をわかりやすく伝えてあげましょう。
それでも抱っこをせがむときは、荷物を置いて抱っこしてあげましょう。抱っこしながら、今は長く抱っこしてあげられないけれど、帰宅すればたくさんしてあげるからね、と話します。ママ・パパが自分の要望に応えてくれたことがうれしくて、意外と納得してくれますよ。
長く愚図つかせない方法は、できるだけ早く、短くても良いので、抱っこの要望にすぐ応えてあげることです。大変なことですが、トライしてみてください。
お菓子やおもちゃなどを見るたびに買って!という子ども。「ダメよ」と言うと、泣き叫ぶ…。ママ・パパは、あまりお菓子売り場やおもちゃ売り場は通りたくないかもしれません。
買って、子どもが言う理由には、本当に欲しい気持ちと、買ってと言ったらママ・パパはどうするかな?と試している気持ちもあります。
ママ・パパはそのたびに買ってあげる必要はありませんし、逆に絶対に買わないという選択も必要ありません。
本当に必要なものであったり、珍しいものであったりする場合は買ってあげても良いかもしれませんね。また、お菓子などであれば、50円までなど金額を決めてから出かけるなど約束をすることでも、愚図つきが長引かないコツです。
買ってと言われるがままに買うことは、良くないかもしれませんが、買ってと言われても絶対に買わない、欲しい理由も聞かないという姿勢で反射的に「買わないよ」「家にもあるでしょ」と言うのは、子どもが泣き叫ぶことに拍車を掛けます。
お財布を見せてお金が無いよと言う、これを買うと夕飯が買えないよなど、子どもにも分かりやすく買えない理由を話し、それでも泣く場合はきっぱりと買わないよと言いましょう。
生活面でのルールなど、自立し理解しているにも関わらず、食事の途中に遊びだしたり、立ち歩くようなときは、「もうごちそうさまかな?」と聞きます。
それでもテーブルに戻ってこなかったり、何度も繰り返す場合は、「もうおしまいね。」と言って片づけます。
泣いても暴れても、食事を再度渡すことはしません。辛いですが、毅然とした態度で対応し、食事中は立って歩かない、遊ばない、ということをしっかり伝えましょう。
その都度してはいけないことだということを怒鳴らず、怒りつけず、冷静に伝えます。 また、いたずらにつながるものを子どもの手の届くところへ置かないように気をつけましょう。
いたずらは、子どもにとっては遊びの一つです。遊び足りない、刺激が欲しいなど、心が遊びを欲している状態でもあります。
時にはいたずら遊びが子どもの想像力を育てることも多くあります。
段ボールやペットボトル、レジ袋、など、廃材を使って遊ぶことは、いたずら遊びに近い感覚を得られ、楽しめます。
保護者や他人に対して、いたずらをしたり叩いたり、意地悪をした場合は、なぜいけないのかを伝えるとともに、相手に対して子どもと一緒に「ごめんなさい」とお詫びをしましょう。
いたずらをした子どもに対して、怒ったり言って聞かせるだけではいけません。相手がいる場合は、必ずお詫びをすることも伝えましょう。
子ども一人だけで謝ることがむずかしい場合は、ママ・パパも声を出して一緒に言ってあげるといいですね。そのときに子どもが「ごめんなさい」と言えなくても、そのことについては叱ったり説き伏せる必要はありません。
いつか保護者の姿を見て、謝れるようになりますよ。
人に対して直接ではないいたずらをしたり、騒いだり、迷惑をかけるようなことをしている場合に注意をしてもやめない場合は、違う場所へ連れていくなどして、なぜダメなのかを伝えます。注意をしても泣いたり叫んだり、叩いてきたりして話を聞けない場合は、その場所から退散しましょう。
このように保護者が対応することで、いけないこと・社会のルール・迷惑な行動などを伝えます。
公共の場で騒いだり、走り回ったりすることはいけないことと、どんなに小さくても教え続けることが大切です。
子どもと四六時中一緒にいることは、とても大変なことです。
保育園や幼稚園へまだ通っていない場合は、一時預かりを利用したり、実家やパパ(ママ)に預け、週末の数時間だけでも自分の時間を持ちましょう。
また、家庭内ではママ・パパがよく話し合い、子育てに関して情報を共有したり協力し合うことが大切です。
それがむずかしい場合は、民間の託児所や自治体の子ども預かり事業などを利用しましょう。美容院、通院、気分転換など仕事が理由でなくても利用できますよ。
上手く周囲に頼り、ストレスを発散することは心に余裕ができ、子どもとの関わりでもイライラが軽減するはずです。
言うことを聞かない子どもに対しての対応の中には、保護者としてしてはいけないことや言ってはいけないこともあります。
基本的には子ども自身の人格を否定せず、子どもの行動に関して指導をしたいですね。
具体的なNG例を解説します。
「いけない行為」に対する指導ではなく、子供自身を否定するような対応はNGです。
このような言葉を子どもにかけることは、子ども本人の人格を否定することになります。 子どもの行動に対して注意するよう十分に気を付けましょう。
いけない行為を主語にして、なぜそうしたのか子どもの話に耳を傾けましょう。
その上で、「そうだったんだね。そうしたかったんだ。けどこうするのはいけないから、今度からこうしようね。」と、落ち着いたときに伝えます。
「置いていくよ」「もう知らないよ」「もうここに連れてこれないな」と、本当は実行できないことを言って子どもの心を動揺させ、言うことを聞かせようとする言葉は、子どもに対して何も実りにはなりません。
ママ・パパが怒るから、嫌なことを言うから、仕方がなく言うことを聞くという思考になりますね。
なぜいけないのか、なぜ子どもの言う通りにはしてあげられないのか、泣いていても嫌がってもその理由を話し、毅然とした態度で対応する方ことを繰返していれば、必ず子どもは自立し、保護者の言うことも素直に聞けるようになっていきます。
駄々をこねたり、泣き叫んだり、暴れている子どもは、そのようなネガティブな表現で自分の複雑な気持ちを保護者に伝えようとしています。
保護者にとっては「またか」と思ういつもの駄々をこねる子どもの様子は、見ているだけでも疲れとストレスが溜まりますね。
けれど、子どもは一生懸命に保護者に自分の思いを伝えようとしています。そのたびにていねいにかかわることは非常に大変なことですが、無視をしたりその場から立ち去ったりするのはやめましょう。
子どもは駄々をこねながらも、保護者が寄り添ってくれることを信じています。信頼関係を崩してしまうような保護者の態度は子どもの心を非常に傷つけます。 ひと呼吸置いて、「どうしたの?」と声をかけてあげましょう。
「じゃあ今日だけ特別ね」「明日からはないからね」と言うことを聞かず駄々をこねる子どもに譲渡する日と、「ダメだよ」「今日はしないよ」と保護者の中で決めたルールをかざす日があると、子どもは混乱します。
子どもが素直に言うことを聞いたり、社会のルールや家庭のルールを理解し、行動できるようになる日が遠のいてしまいます。
ダメなこと、少しくらいは良いことの線引きを決めたら、子どもの対応はその日によって違ったり揺らいだりすることのないよう、一貫性を持って対応しましょう。
また、「帰ったらしようね」「また明日ね」と約束したことは、必ず守りましょう。これも保護者との信頼関係を保つことになり、将来も大人や周囲の人に信頼を寄せることのできる素直な子どもに育ちます。
子どもは意外と口には出しませんが、約束は忘れていません。どうか保護者から積極的に「昨日、また明日って約束したものね。今日は公園でたくさん遊ぼうか」と声をかけてあげてください。
言うことを聞かない子どもに対して、思わず暴言を吐いたり、叩いたり突飛ばしたりしたくなる気持ちもわかります。
自分の時間や計画、想いを、思う通りにできない日常生活が何年も続くのは相当なストレスです。忍耐力はそう長くは続きません。
ですが、子どもを暴力で支配してしまうことは絶対にいけません。心も体も傷つき、保護者も自責の念にかられることでしょう。
また、暴言や暴力が子どもに向いてしまうということは、ママ・パパのストレスがかなり上昇しているということでもあります。一時預かりを利用するなど、子どもとの距離をうまく保ちましょう。
あまりにも言うことを聞かない子どもに、障害の疑いを持つこともあるかもしれません。しかし、障害の可能性については、医師以外は判断することはできません。
自分でさまざまな情報を集め、子どもに当てはまるからと言って障害があると決めつけないことが大切です。
保育園や幼稚園へ通っている場合は、担任に相談してみましょう。さらに、心配がある場合は発達障害や自閉症などの可能性があるのか医師に診断してもらうこともおすすめします。
障害については、4歳から5歳を過ぎないとはっきりと診断できないとも言われています。 病院のほかにも、自治体の発達支援センター、子育てセンター、保健所、児童相談所などでも相談が可能です。診断はつかなくても、子どもの傾向から関わり方を教えてくれる場所もあります。心配が募る場合は、相談してみましょう。
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言うことをきかない3歳の子どもと過ごす保護者は、出口のないトンネルにいるような、辛さと逃げ場のない大変さやストレスを抱えているでしょう。
大変な時期の子どもを一人で育てるのは非常に辛いことです。一人で抱え込まず、周囲の人に頼ったり相談し、上手くストレスを発散しながら子育てをしていきましょう。
そのうち、驚くほど聞き分けがよくなったり、意思の疎通がスムーズになったりし、楽になってきます。
3歳児のママ・パパもまだ保護者として3年目。失敗をしても子育てはいつでも取り返しがつきます。完璧を目指さず過ごしてくださいね。
炭本まみ
保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。