⾮認知能⼒の重要性を裏付ける【ペリー就学前プログラム】って!?教育内容を徹底解説

⾮認知能⼒の重要性を裏付ける【ペリー就学前プログラム】って!?教育内容を徹底解説
「⾮認知能⼒」という⾔葉は聞いたことがあっても、その重要性を実証した「ペリー就学前プログラム」の具体的な教育内容は意外と語られていません。⼦ども主導の活動を通して、計画⼒や問題解決能⼒、社会性などを育てたこのプログラムと、その中から子育てに活かせるポイントを抜粋して紹介いたします。
目次

1.ペリー就学前プログラムの教育内容

ペリー就学前プログラムの特徴は、⼦ども主導の活動を重視した点にあります。 具体的には、以下の3点の方針をもとに日々の保育が行われました。

⼦どもが⾃分で計画を⽴て、選択し、実⾏する機会を多く設ける

遊びを通して問題解決能⼒や社会性を育む

保育⼠が⼦どもの興味関⼼に基づいて環境を整え、適切な働きかけを⾏う

例えば、ごっこ遊びの時間には、⼦どもたちが⾃分の役割を決め、ストーリーを考えて遊ぶことを促します。保育者は必要に応じてアドバイスを与えますが、基本的には⼦どもたちの主体性を尊重します。

また、さまざまな教材を⽤いた活動も⾏われました。例えば
・積み⽊やブロックで構造物をつくる(空間認識能⼒、創造性)
・絵本の読み聞かせと話し合い(⾔語能⼒、想像⼒)
・砂場や⽔遊び(探究⼼、協調性)
・リズム遊びや歌(⾝体表現、情動調整)
など、遊びを通して多様な能⼒を伸ばす⼯夫が凝らされていました。

こうした⼀⾒シンプルな活動の背景には、⼦どもの発達段階に応じた周到な計画があります。

ブロック遊びひとつをとっても、子どもの発達段階に応じて遊び方が変化していきます。2歳頃は、積む、崩す、並べるなどの感覚を楽しむことが中心ですが、3歳頃になると、つくったものを見立てて遊ぶようになります。4歳頃には、友だちと協力して大きな構造物をつくるようになり、5歳頃になると、設計図を描いて計画的につくるといった高度な遊びへと発展していきます。このように、ひとつの遊びでも、子どもの成長に合わせて少しずつ変化させていく工夫がみられました。

プログラムのもうひとつの柱である家庭訪問では、保育者が週1回、90分間にわたって子どもの家庭を訪問し、母親に対して子育てのアドバイスを提供しました。子どもの発達段階に応じたおもちゃの選び方や、子どもとのコミュニケーションの取り方など、具体的な提案をしていたようです。また、母親の就労や家庭環境などの問題についても話し合い、必要に応じて社会的支援につなげる役割も担っていました。

プログラムに参加した⼦どもたちは、その後の⼈⽣で⾮常に好ましい成果を収めています。 こうしたペリー就学前プログラムの教育内容を、今の⼦育てに活かすためのポイントを整理します。

2.ペリー就学前プログラムを子育てに活かすには?

①⼦どもの興味・関⼼を出発点にする

まずは、⼦どもが何に興味を持ち、どんな遊びを好むのかをよく⾒ることが大切です。そこから、その⼦なりの課題や育ちの芽を⾒出し、遊びを通して必要な経験を積み重ねていくことが⼤切です。

②主体性を尊重しつつ、適度な援助をする

⼦どもが⾃分で考え、試⾏錯誤する経験が何より重要です。うまくいかないもどかしさも成⻑には⽋かせません。悩む姿を⾒守りつつ、必要な時には助⾔やヒントを与えるといった、さりげない援助が理想的でしょう。

③多様な遊びを経験する

ペリー就学前プログラムのように、発達段階に合わせてさまざまな遊びを経験させることも有効です。体を動かす遊び、ものをつくる遊び、ごっこ遊び、表現する遊びなど、バランスよく取り⼊れることで、多⾯的な能⼒の育ちを促すことができます。

④良好な、おやこ関係が⼟台

⼦どもの育ちを⽀えるのは、何よりも安⼼できるおやこ関係です。⼦どもの気持ちを汲み取り、温かく受け⽌める。時には⼀緒に悩み、喜びを分かち合う。そうした営みの積み重ねが、⼦どもの情緒を安定させ、意欲や探究⼼を育んでいくのです。

ペリー就学前プログラムの成果は、幼児教育の重要性を改めて認識させてくれます。単に知識を詰め込むのではなく、⼦ども⾃⾝が環境に関わり、試⾏錯誤しながら学ぶ過程を⼤切にする。そうした経験の質こそが、⽣涯にわたる学びの基盤を形作っていきます。

⼦どもの可能性を信じ、その成⻑に寄り添う。それが⾮認知能⼒を育む近道です。


【参考文献】
Lifetime effects: The High/Scope Perry Preschool study through age 40. High/Scope Educational Research Foundation. ローレンス・J・シュヴァインハート他(2005)
The rate of return to the HighScope Perry Preschool Program. Journal of Public Economics.
J・J・ヘックマン他 (2010)
The Perry Preschoolers at late midlife: A study in design-specific inference. National Bureau of Economic Research.
J・J・ヘックマン、G・カラパクラ (2019)

ライター/監修:でん吉(保育士資格)

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執筆者

保育士 でん吉

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