世界中で愛され続けている『きかんしゃトーマス』。"ハマり度"の差はあれども、多くの子どもが乳幼児期にトーマスの世界観にふれ、親しむ時期があるもの。いっしょにアニメを観たり、絵本を読んだりするママやパパも、その魅力的なキャラクターたちに詳しくなったりしますよね。
そんな『きかんしゃトーマス』とこれからの未来を生き抜くために欠かせない力「非認知能力」の関係に着目した本が1月に発売され、いま非常に話題となっています。
「非認知能力」とは点数化できない力。読み書きの力や運動能力という点数化できる力「認知能力」に対して、自制心や忍耐力、意欲や向上心、協調性・社交性やコミュニケーション力などの計れない力をさします。これからの正解のない時代、予測できない未来を生きる子どもたちには欠かせない力だと言われています。
本書は2018年6月から2019年5月に実施された東京学芸大こども未来研究所と株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツによる『きかんしゃトーマス』と非認知能力の関係についての共同研究成果に基づいたもの。非認知能力の観点から選定した10のお話と74のキャラクター図鑑で構成されています。
この話題の本を、非認知能力を専門にする教育方法学の専門家、中山芳一先生が紹介します。
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(C) 2021 Gullane (Thomas) Limited.
イギリスの牧師、ウィルバート・オードリーとその息子クリストファー・オードリーによって長きにわたって綴られてきた『汽車のえほん』シリーズを原作とする『きかんしゃトーマス』。子どもたちはもちろん、保護者の方々もよくご存知のことでしょう。
このたび、この『きかんしゃトーマス』と非認知能力をつなげたステキな本が、東京学芸大こども未来研究所によって世に出されることとなりました。題して『きかんしゃトーマスでつなげる非認知能力子育てブック』(東京学芸大こども未来研究所著/東京書籍刊)です。
私の著書でも、「非認知能力は周囲から押し付けられるものではなく、自ら伸ばしていくもの」だと述べてきました。そのため、わが子に非認知能力を伸ばしてほしいと思ったとき、親たちはわが子にとっての「環境」となり、その時々に必要なさまざまな非認知能力の大切さを伝えていくことが求められるわけです。
しかし、それは保護者の方だけががんばる必要はありません。むしろ別の誰かが伝えてくれた方が良い場合もあるのです。
子どもの頃に見たテレビ番組のヒーローのようになりたい、漫画の主人公のようになりたい…こうした憧れを抱き、なろうとした経験は、多くの人が持ったことがあるのではないでしょうか。実は、これらのメディアも子どもにとっての「環境」となって、大切なことは何かを子どもたちに教えてくれるのです。そんな風に、あの名作『きかんしゃトーマス』を大切なこと(=非認知能力)の観点で整理したのがこの一冊なのです。
(C) 2021 Gullane (Thomas) Limited. (C) 2021 Gullane (Thomas) Limited.
本書は、大きくPart1とPart2の二部構成になっています。
Part1では、10のお話とその流れを詳しく紹介。各エピソードを読み解くことで、対応している非認知能力の大切さを教えてくれます。
Part2は、非認知能力の観点によって選定された74のキャラクターについてエピソードも絡めながら、それぞれに関連付けられる非認知能力を紹介しています。
たとえばPart1で紹介されているエピソードのひとつ「ケビンのじまんのフック」は、トーマスたち機関車とは姿や形が違うクレーン車のケビンについてのお話です。ケビンは、トーマスたちと同じように遊びたいのですが、それをできずにいます。しかし、そんなケビンだからこそできるフックを使った作業で、周囲の仲間たちが喜んでくれるようになります。このエピソード、本書では主題として「自分の良さに気づくこと」を掲げています。
このケビンのエピソードは、私が個人的に心惹かれたエピソードでもあります。自分をマイナスに否定するのではなく、自分の中にあるプラスを見出して肯定できるようになることは、自分、そしてわが子たちが生きていく上で必要不可欠だと思うからです。
このように、物語の登場人物を内なる他者として自分の中に取り込むことは、「自分づくり(自己形成)」へつながります。それが、人格(パーソナリティ)とも重なってくる非認知能力を伸ばしていく上でも重要になるというわけなのです。
わが子に「自分の良さに気づこう!」とか「ほかの人たちの役に立てるようになろう!」などと直接伝えるのではなく、『きかんしゃトーマス』のエピソードから自然に学び取ってもらうという方法はアリではないでしょうか。それを実現できるために助けてくれるのが、本書であると確信しています!
このほかにも本書には、様々な非認知能力とつながる主題のラインナップが用意されています。
みなさんも、ぜひ親から子へ伝えたい大切なメッセージを見つけてみてください。そして、わが子が生きていく上で大切な「非認知能力」を、トーマスたちから伝えてもらいましょう!
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中山先生のお話をうかがいながら、5歳息子、2歳娘をもつ編集部Fもこの本を読んでみました。
「非認知能力につなげるきかんしゃトーマスのお話」として紹介されている10のお話は、ちょうど寝る前の読み聞かせにもぴったりのボリューム。それぞれ話の流れの振り返りと、実生活につなげられるまとめもついていて、おやこの新しい読み聞かせタイムに生かせそうです。
「非認知能力につながるきかんしゃトーマスの図鑑」では、それぞれのキャラクターの名言にも注目。非認知能力につながるポイントが紹介されているので、これを読んだうえでアニメや本でのお話にふれることで、それを見ている子どもへの声かけにも役立ち、ストーリーを更に有意義に楽しめそうだなと感じました。
これまで何気なく見ていた『きかんしゃトーマス』。非認知能力を育むきっかけとして、おやこの新しい学びや楽しみを提供してくれそうです。
『きかんしゃトーマスでつなげる非認知能力子育てブック』
著:東京学芸大こども未来研究所
価格:1,870円(税込)/Kindle版(電子書籍)1,496円(税込)
発行:東京書籍
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。