5歳の子どもの多くは、保育園や幼稚園などの集団生活を送っているでしょう。同年代の子どもと過ごす日々では、人との協調性や社会的なルール、理解力、想像力などの成長のほか、競争心や思いやり、譲り合い、親切心などの情緒の豊かさが大きく育ちます。
園生活では、集団の一員としてマナーやルールを守って過ごす子どもであっても、リラックスできる家庭では、自己主張が強かったり、聞き分けが良くなく言い訳や口ごたえをすることもあるのではないでしょうか。
それは、2歳頃の「イヤイヤ期」と思春期の「反抗期」との間にある「中間反抗期」とも言われる子どもの姿で、順調な成長であり保護者を信頼している証でもあります。
とはいえ、言葉が達者でときには口ごたえや無視をすることもある子どもと過ごすのはストレスが大きいもの。
5歳ごろによくある中間反抗期について、子どもの心を尊重しながら保護者も乗りこえていける方法や考え方・接し方を、保育士ライターの炭本まみが解説します。
5歳児は、知的好奇心が豊かで素直な子どもらしい姿をイメージしているかもしれません。もちろんそのような子どももたくさんいることでしょう。
5歳児頃に保護者や周囲のひとへ反抗的な態度や言動をする中間反抗期は、すべての子どもに現れることではありません。
1歳半から3歳頃までの「イヤイヤ期」は、自分と他者との違いを知り、自分自身に目覚めることで、さまざまなことに対して自己主張しながら成長していく時期です。
イヤイヤ期が短かったり、なかにはイヤイヤ期のない子どももいます。また、イヤイヤ期であってもママ・パパがイヤイヤ期ととらえず子どもを尊重し寄添っていたため、大変さを感じなかったという場合もあります。
また、小学校高学年から中高生頃までの思春期にある「反抗期」は、子どもから大人への第一歩であり、周囲の大人が言うことに対して疑問を抱いたり、干渉されることに嫌悪感を感じたり、悩みごとを大人に相談できない・したくないと心に秘めたり、友だちが優先で親を無視する行動もあります。
思春期の反抗期もすべての子どもにあるわけではありませんが、これまでの子育てよりも子どもと適切な距離感を保ち、見守ることが大切になります。
「イヤイヤ期」と「思春期の反抗期」の間にある反抗期を「中間反抗期」といい、おおよそ5歳頃から長ければ10歳くらいまで続く子どももいます。
まだまだ幼い5歳の子どもが、親や大人に対して口ごたえや言い訳、無視をするのはなぜなのでしょうか。その理由をひも解いてみましょう。
素直でかわいらしかったわが子が、少しずつへりくつを言ったり口ごたえをするようになり、寂しく感じたり、イライラしたり、どう対応して良いのか正解がわからず戸惑うママ・パパも多いでしょう。
中間反抗期はなぜ起きるのでしょうか。それには、下記のような理由があります。
年齢とともに、ゆずり合ったり相手を思いやったり、我慢したり主張したりと、これまでとは違った感情が複雑に絡み合うようになっていきます。
家庭の外で感じるストレスや社会的な態度で頑張る自分を、家庭では開放しママ・パパに甘える姿が中間反抗期です。
園生活や学校生活を楽しく過ごしているように見える子どもですが、子どもなりに努力し疲れやストレスを感じているものでしょう。複雑な思いや感情を説明できない・したくない気持ちが、ママ・パパへの反抗的な態度=甘えとなって現れます。
中間反抗期を起こしている子どもの姿は、具体的にどのような様子が見られるのでしょうか。さまざまな個性や特徴がありますが、主には以下のようなものです。
園生活では、子どもなりに努力をして自分を抑え、スムーズな友だち関係や園生活をしていたのでしょう。ですがそれは決して無理をしているのではなく、外の世界ではきちんとしようという前向きな姿であり、正常な成長の現れです。
けれどまだまだ幼い5歳なので、家庭では反動で疲れやストレスを反抗するという表現でママ・パパに甘えていたのでしょう。 家庭で本来の自分や、ストレスを表現できるのはとても大切なことです。家庭が子どもの心の寄りどころや居場所になっていることの表れだからです。
筆者の経験では、5歳児の中間反抗期の悩みは、男の子の保護者から多く寄せられていました。中間反抗期には、男女差があるのでしょうか。
中間反抗期の男児は、言葉よりも態度で表現することが多い傾向があります。例えば、叩いてくる・物を投げつける・物を壊そうとする・机を叩くなど物に当たるなどの姿が見られます。
女児は、口ごたえをする・言い訳をする・親を言い負かそうとする・泣いて訴えるなどの姿が見られることが多いものです。
反抗期の子どもに対するママ・パパの接し方については男女による違いはほぼなく、子ども一人ひとりの性格や、その時の状態による違いがあるでしょう。
反抗期を成長ととらえ、上手く関わり合いながら少しでも親子双方でストレスを軽減する関わり方は、どのような方法があるのでしょうか。
反抗期の子どもに対する接し方には正解があるわけではありません。子ども一人ひとりの性格やそのときの状況、子どものしている態度により変わってきます。
大切なことは、子どもが成長をしている証であること、子どもの人格を否定するようなことを言わないこと、子どもを尊重し寄り添いながら上手く気持ちを切り替えられるようにすることです。
どんな場合でも共通する、大切にしたい接し方をお話しましょう。
子どもからの言い訳や口ごたえ、嘘や乱暴な言葉を何度も繰り返し聞くことは、ママ・パパにとってストレスを感じることでしょう。
「また?」「いつもそうだね」「いい加減にしなさい」と、子どもの言葉をさえぎってしまいたくなるものです。
ですが子どもはママ・パパが嫌いになったわけではありません。子どもも強い言葉を言ったり反抗的な態度をすることに傷つき葛藤をしています。
また、反抗的な態度であっても、ママ・パパの言葉はしっかり聞いていますし、態度や表情もよく観察しています。
子ども自身を否定するような言葉や、売り言葉に買い言葉のように一緒に感情的になることはなるべく控えましょう。
子どもの言葉を最後まで聞き「そうだったんだね」「そんな風に思っていたんだね」と、まずは受け止めてあげましょう。
それでも子どもの思うままにしてあげられないことがあったり、暴言・暴力などしてはいけないこと、片付けなどのしてほしいことがありますね。
そんなときは、「ママ、片付けしてくれるとうれしいな」「●●ちゃんはどうしたらいいと思う?」「叩いたり怒ったりしないで、ゆっくり教えてくれるとよくわかってママ助かるな」などと伝えてみましょう。
●●でなくてはならない、〇〇しなさい!ではなく、ママはこう思う、パパはこうしてくれるとうれしい、と保護者の方が自分軸としてのメッセージを送ると、意外と伝わることが多いものです。
命令されるよりも、ママはこうしてくれるとうれしいな、と言われると受け止めやすく、子どもの心や状態も変わってきます。ぜひお試しください。
反抗期で文句を言いながらもお願いを聞いてくれたり、子どもが行動を自ら改善したときは、必ず認めてあげましょう。
「片付けできたね、ママうれしいな」「怒らないで言えたね。ママ助かるな」など、保護者がどう感じたのかを添えて伝えます。ただ認める言葉だけよりも、子どもの心に沁みるはず。
子どもはママ・パパが大好きです。反抗期であってもその気持ちは変わりません。ママ・パパが喜んでくれることは何よりうれしいのです。
反抗期の子どもの対応で保護者の方も疲れ切っていることでしょう。ですが、どんなときでも子どもの味方であり、大好きなのだという気持ちを伝えていけるといいですね。
かんしゃくを起こして泣き叫んだり、乱暴をしているときは、いくら話しても耳に入らず子どもには伝わりません。
外出先なら危険や迷惑にならない場所へ移動し、落ち着くのを待ちましょう。 自宅なら、そのまま黙って見守りましょう。
かんしゃくはそのうちおさまりますので、冷たい水を飲ませたり涙や汗を拭いて落ち着かせます。
落ち着いてきたら「いつも優しいのに、どうしたの?」「怒らないで教えてくれるとうれしいな」と話します。子どもが上手く話せないときは「〇〇したくなかったのかな?わかるよ」と心に寄り添ってあげましょう。
どうしようもない葛藤や、言葉にできない悔しさ、イライラする気持ちに寄り添ってあげることで、かんしゃくや乱暴はどんどん減っていきます。
怒らないで言葉で伝えた方が早いし、余計なエネルギーを使わないで済むということも理解できるようになります。
子どもに寄り添うことは親子の信頼関係が深まり、子どもの心もさらに成長していくことでしょう。
反抗期は子どもが成長するための大切な時期です。
反抗期の子どもと同じ土俵に立ち、一緒になって感情的な言葉を投げ合ったり、叩いたり、怒鳴ったり、子どもを否定する言葉をかけることは、子どもの心に大きな傷を付けてしまいます。
反抗的な態度は、子どもの心の葛藤や日ごろのストレスの表出であり、家庭では本当の自分をさらけ出し、保護者に甘えたい気持ちの裏返しです。
子どもの表面上の言葉や態度に動じず、「イライラしてるんだな」「疲れてるんだな」と受け止め、受け流しましょう。
決して力づくで止めたり、傷つくような言葉で子どもの感情を押さえつけるようなことはやめましょう。また、ほかの子どもと比べて否定するようなこともいけません。
「片付けしてくれたらうれしいな」などの柔らかな言葉がけをしても変わらない場合は、
など、子どもが自分で決めるように言葉をかけることで、納得した気持ちで行動ができるようになります。
また、子どもは人の役に立ちたいという気持ちが育っていくものなので、命令ではなくお願いをされることも心地よく感じるものです。
してほしいことを命令するのではなく、子どもに選択させることでスムーズに生活できることも多いのです。
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5歳は、心と体が大きく成長する時期であり、家庭以外の社会と触れ合って生活することが、複雑な感情や情緒を育む時期でもあります。
子どもの心を育てるのは、周囲の温かな目とやさしさ、そして子どもを思う愛情です。子育ては保護者の日常であり、きれいごとと思われるかもしれません。ですが反抗期には必ずゴールがあります。疲れたときは、子育てから離れ、リフレッシュできるように、家族や周囲の人に頼りましょう。
また、怒ったり感情的になることももちろんあるでしょう。それは仕方のないことです。 そんなときは、「さっきはごめんね。ママ怒りすぎちゃったね。」と子どもに素直に謝りましょう。こういった姿を見せることも子どもの成長に良い影響をもたらします。
子どもの成長を楽しみにしながら、のんびりとした気持ちで過ごしていきましょう。
炭本まみ
保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。