年末年始など帰省したときにママ・パパを悩ますのが、祖父母(および親戚の人々)との考えの違い。昔の価値観を押し付けられ、時代錯誤な発言にママ・パパがモヤモヤ…なんてこともよく聞きます。
とくに最近はジェンダーなど多様性に対する意識が高まり、個々を尊重する考えが広まりつつありますよね。しかし祖父母世代に多様性を認めさせるのは難しく、「男のくせに泣くな!」「女の子はお手伝いを…」など、男女のステレオタイプにこだわる祖父母がまだまだ多くいます。
このようにママ・パパ世代と祖父母世代で異なるジェンダー観。「祖父母の発言にモヤモヤしたら、どうすればいい?」みんなが年末年始を楽しく過ごすためのコツを、「孫育て」に長年関わってきたNPO法人孫育て・ニッポン 理事長のぼうだあきこさんに詳しく伺いました。
祖父母世代は子どものころから、「男は男らしく・女は女らしく」「周りに合わせる」よう教えられてきました。何十年もの間その考えで過ごしてきたのですから、いまさら祖父母世代に「個々の考えを尊重して!」と主張しても難しいものです。
しかし、ママやパパ世代もジェンダーをはじめとする多様性に触れ始めたのは、じつは比較的大人になってからではないでしょうか?。
また、ママ・パパ世代であっても、それほど多様性に対する考えがしっかり根付いておらず、迷いながら子どもに接したり、意識的に気をつけている人も多いことと思います。むしろその結果、祖父母世代の意見につい敏感に反応し、モヤモヤしやすいのかもしれませんね。
とはいえ、どうしてもママパパの中には、祖父母の何気ないひと言が気になる人もいます。祖父母に「今はこういう考えなんです」と説明するのはダメなのでしょうか?
ジェンダー以外にも、ママ・パパを悩ませる祖父母の発言はありますよね。「まだ小さいのに保育園に行かせるなんて…」「一人っ子だからかわいそう…」など、挙げ始めたらキリがありません。
けれども同居でない限り祖父母に対応するのは帰省のときなど、いっときのこと。1年365日のうち、たった数日です。もしも祖父母から気になる発言があっても、できれば賢く受け流しましょう。
私がよく言うのは、「合わない上司だと思え」ということです。みなさん、仕事ではうまく受け流しているのに、親族となると難しいんですよね。もう仕事だと思ってうまくやることです。
おもちゃや洋服を選ぶときなども、「男の子なんだから」「女の子なのに」と祖父母に言われることがあります。自分たちが好きなものを選んでいるだけなのですが…。
最近は男の子でもピンク色の服を着ますよね。しかし祖父母世代からすると、”ピンク=女の子”。そのため男の子がピンク色の服を着ると、変だと感じてつい口を出してしまいます。
このとき「今は男の子でもピンク色の服を着せるんです」など、ママパパが自分を主語にしてしまうと、つい言葉が強くなりがちに。
そんなときは反論したい気持ちをグッと抑え、”子ども”を主語にして意見を伝えるのがポイント。「〇〇はピンクが大好きで、ピンクの服を選んだんですよ」と、あくまで子どもの意思であることを伝えると角が立ちません。
子どもも3~6歳くらいになると大人の話も分かってくるので、ママ・パパと祖父母の考えが違うことに気づいてくると思います。その場合、子どもにどう説明すればいいですか?
祖父母とママ・パパの意見の違いについて子どもに聞かれたときは、「そういう考えもあるね」と、いろいろな考えがあることを教えてあげましょう。あとで祖父母の意見を否定する必要はありません。
あくまで「祖父母の意見・個性」として、受け流すといいでしょう。子どもの方が周りに順応しやすいので、双方の意見の違いも意外にすんなり受け入れてくれそうです。
子どもも大人になり社会に出たら、さまざまな考えを持つ人と関わります。祖父母との関係は「人によりさまざまな考え方がある」と多様性を学ぶ絶好の場!将来のための生きた社会勉強と思いましょう。
「いろいろな考えがあって当たり前」と考えられる祖父母は少数ですが、逆に言えば、「多様性を受け入れにくいこと」もまた多様性。ママ・パパの方から祖父母の意見を受け入れ、受け入れにくい時には賢く受け流してくださいね。
時代錯誤な発言を繰り返されると、祖父母に会うのがイヤになってしまうこともあります。
考えが合わないからといって、親の都合で祖父母との関わりを奪ってしまうのは、もったいないですね。子どもがママ・パパから得られる愛情と、祖父母から得られる愛情はまったく違います。また子どもにとって祖父母との交流は、家庭内だけでは得られない経験を学ぶ場でもあります。
まだ子どもが小さいうちは、最低限でもいいので、ほどよく祖父母と関係を保っておくといいでしょう。「大きくなったら子どもだけで祖父母宅に遊びに行かせよう」と、ママ・パパの方から賢くつき合っていきたいですね。
まだまだ祖父母世代にとって多様性はなじみが薄いもの。けれども「昔と今では子育てに対する考えが違う」ことも、祖父母世代に少しずつ広まっています。
せっかくなら多様性について家族みんなで”対話”する機会を作ってみてもいいですね。それぞれの意見を出し合い、違いを楽しんでみましょう。
対話について言い出すきっかけが難しかったら、「子どもの学校の宿題で出たから」「多様性についての絵本を読んで」など、子どもの教育と絡めてしまうのも1つの手。
「こんな意見が出たら子どもはどんな反応を示すかな?」など、ママ・パパが議論を楽しめるといいですね。
背景の異なる大人がたくさんいるのですから、それぞれ考えが違って当たり前。さまざまな意見に触れてわが子が成長するチャンスだ!と、せっかくなら祖父母との考えの違いを楽しんでみてください!
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意見が異なる祖父母との関わりは、子どもがさまざまな考えに出会って成長するチャンス!
多様性を認め意見の違いを楽しめるなど、わが子をタフに育てないなら、まずはママ・パパが多様性を楽しんでみてください!
NPO法人孫育て・ニッポン 理事長 ぼうだあきこ
母親だけが子育てを抱え込むのではなく、パパ、おじいちゃん、おばあちゃんなど家族のつながり、そして、地域の中で子育てができる社会になるよう活動中。父親の育児参加を促すNPO法人ファザーリング・ジャパンにも設立当初から関わり、理事を務めています。
ライター Ayako.O
学校ではしっかり者、家では甘えんぼな姉と、最近料理に目覚めつつある弟、2人の小学生を持つママです。子どもたちの成長はうれしい反面、小学生ならではの悩みも新たに生まれて、まだまだ子育てに模索する毎日です。
なぜ祖父母世代は、ママ・パパ世代と考えが異なったり、ジェンダーなど多様性を受け入れにくかったりするのでしょう?