3人の子どもを子育て中の現役ママFP・北村由紀です。
小学校あたりから取り入れる家庭が多いおこづかい。必要なときやごほうびとしてその都度渡す?毎月決まった額を渡す?親としては判断が悩ましいところですね。
「お手伝いのごほうびで都度おこづかいをあげると、おこづかいをあげないとお手伝いしなくなるのでは?」「毎月決まった額をあげると無駄づかいが増えるのでは?」などの心配事を解消するおこづかい制度運用の方法をご紹介します。
2015年度の金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査」によると、全国の小学生の全学年において、7割強がおこづかいをもらっています。
「〇〇ちゃんは、おこづかいをもらっているんだって」と言われ、「そろそろわが家も…」と考え始めるものですが、気になるのはその金額ですよね。
まずは全国の小学生のおこづかい額をご紹介します。
「迷ったら"学年×100円"が相場」といわれることもあるようですが、実際の結果を見てどう思われますか。
表にある最頻値とは、最も多く回答された値です。どの学年でも、平均値が最頻値よりも高くなっていることから、おこづかい額は家庭によってバラツキがあることが分かりますね。低学年でその差が大きいのは、始めて間もないおこづかいの金額に悩む家庭が多い表れでしょうか。
このように、おこづかいの金額設定はとても重要ですが、どのようにあげるか、その渡し方も悩みどころです。
おこづかいの渡し方として、大きく2種類あります。
お手伝いのごほうびとして渡すような「都度制」と、毎月決まった金額を渡す「定額制」です。どちらを採用しようか悩んでいるママ・パパも多いことでしょう。
ここからは2つの方法のメリット・デメリットをご紹介します。どちらが今のわが子に合っているのか、参考にしてくださいね。
小さい子どもが初めてのおこづかいを経験する際には、お手伝いのごほうびとしてその都度おこづかいをあげる「都度制」から始めると、お金が労働の対価であることを分かりやすく教えることができます。
■メリット
■デメリット
お手伝いのあと、その都度すぐに渡すことがポイントです。小さな子どもであればあるほど「今やったお手伝いのごほうび」と認識し、お金の重みと達成感を味わい、やる気アップにつながります。
なお、お手伝いの内容と金額は、その場の思い付きで決めるのではなく、必ずあらかじめ決めておきましょう。簡単なものからちょっと頑張らないといけないものまで、段階的に金額設定することで、「同じ金額だから簡単な方を選ぼう」ということを防ぎます。
また、どのお手伝いをどれだけやったかがわかるよう、表やグラフなどで結果を残し、見えるところに大きく貼ってみましょう。小さなシールやスタンプでマークすることをおすすめします。
このように”見える化”することで、「好きなお手伝いばかりしている」といった気付きを促したり、ママやパパから声かけをしたりするきっかけにもなります。
その都度あげることで心配なムダ遣いを防ぐには、前述のようにお手伝いをマークしたり、中身の見える瓶などにおこづかいを貯めて、"経過を見せる"ことが効果的です。
「こんなにたくさんお手伝いしたんだね!この瓶がいっぱいになったら、欲しがっていた〇〇が買えるね」と目標まで貯金してから買うという経験をサポートしてあげましょう。
努力をしてお金がたまっていく様子を見える化することで、貯金の概念が学べます。
そして、その都度渡すやり方でいちばんよく聞く心配事は、「お金をもらえないお手伝いはやらなくなるのでは?」というもの。
そんなときは、「身の回りのことを自分でしたり、家族の一員としての役割を果たすことは、ごほうびがもらえるお手伝いではなく、当たり前のこと。家族が気持ちよく生活するために、大人も子どもも担当しようね」と事前のルール決めが大切。
そこに対価はないことを十分に言い聞かせておくことが重要です。
さらには、おこづかいと一緒に「いつもありがとう」と感謝の言葉かけをすること。筆者も、末っ子で時々この問題に悩まされていますが、「お母さんが喜んでくれるからお手伝いしよう」と自然と気持ちに変化が生まれるのを根気よく見守っています。
私の声かけにうれしそうな顔をする様子を見て、素直に話を聞いてくれる小さいうちから少しずつでも習慣化しておいてよかったと感じています。
一方、定額制のおこづかいは"将来につながるお金のレッスン"そのものだと言えます。
■メリット
■デメリット
まずは、決まった金額の中でやりくりしながら好きなものを買う経験をたくさん積ませたいものです。限りあるおこづかいだからこそ、自分がいちばんうれしい買い物の仕方を一生懸命考え、それまでにない感情をたくさん味わうでしょう。
そして、お金には限りがあることを理解し、やりくりして好きな物を買うことに慣れてきたら、"自分のためのお金""人のためのお金""いざというときのお金(貯金)"と3つの予算に分けて管理することをおすすめします。
こうすることで自然に“先取り貯金”を覚えて、将来の家計管理にスムーズに繋げていくことができます。貯める楽しみも、使う楽しみも覚えながら、定額制だからこそのやりくりスキルが身に付きます。
おこづかい制のゴールは、お金と上手に付き合いながら生きていく力を身に付けること。そういう意味でも、段階的に毎月決まった額を渡す定額制を目指したいですね。
ただ、定額制になるとお手伝いはごほうびではなく家族の一員としての“(対価のない)お仕事”という位置づけになります。そのため、筆者の家ではまずはお手伝いのごほうびとして都度制からスタートして、お手伝いが習慣化した段階で定額制に切り替え、そのあとは、都度制+定額制の「ミックス型」にしています。
運用方法としては、当然の家の仕事にはごほうびを渡しませんが、プラスのお手伝いに関しては上限を決めてプラスのお小遣いを渡しています。こうすることで、必要に応じてより多くのお手伝いを頑張ってくれています。
社会で言う、「固定給+出来高による歩合給」の疑似体験ですね。
都度制も定額制もメリット・デメリットがあります。今のわが子にとってはどちらが合っているのかを考えて採用してみてはいかがでしょうか。
トライアンドエラーで、途中で切り替えることもできますし、先ほど紹介したミックス型もよいでしょう。今あるおこづかいの中でやりくりするスキルも大事ですが、自分でお金を生み出す力も必要。子どものうちからこれらを鍛えられるのがおこづかいです。
お金の価値観は、大人になってから修正することは簡単ではないと言われています。おこづかいを通して、お金や社会の仕組みを生活の中で自然に身に付けるには、家庭での習慣がいちばん効果的です。
とはいえ、筆者の家庭では特別なことはしていません。わが家の生活にかかわるお金がどれくらいかかっているのか、どうやってやりくりしているのかを知ってもらうため、一緒に買い物に行ったり、銀行に連れて行ったりしています。おこづかいの話もよくします。
子どもにとって、お金は欲しいものが何でも買える魔法の道具のように見えますが、おこづかいとして初めて自分のお金を持つことで、そうではないことを学びます。おこづかいが足りなくてガマンをしたり、無駄づかいをして本当に欲しいものが買えず悔しい思いをしたり、コツコツ貯めてやっと手に入れられる達成感を味わったり、様々な感情を体験うできるのがおこづかい。たとえお金関連で失敗をしたとしても、子どもの失敗はたいていが取り返しのつくものです。
わが家の3人の子どもたちは、お金への関心も取り組む意欲もそれぞれです。その子なりにやりくりをしようと頑張っている姿に、おこづかいの可能性は無限大だなと感じています。
ぜひ、子どもが素直に親とコミュニケーションが取れる小学生の間に、お金の学びを親子で楽しんでくださいね。
キッズ・マネー・ステーション
「見えないお金」が増えている現代社会の子どもたちに、物やお金の大切さを知り「自立する力」を持ってもらいたい、という想いで設立。 全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2020年までに1500件以上の講座実績を持つ。http://www.1kinsenkyouiku.com/
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー 北村 由紀
小5・小3・年中の現役ママFPとして和歌山市で親子の学びを応援する教室を開催。「家族の未来にワクワクを」をモットーに、ママ向け、親子向けに家庭で楽しく生きるチカラを育む方法をお伝えしている。他に、行政講座講師、小学生新聞・WEBコラム執筆で活動中。