子どもの自立のための第一歩として訪れる「ギャングエイジ」。
大人に対して反抗的な態度をとったり子ども同士のトラブルが増えたりと、親も不安を抱えることが多い時期ですが、社会性を育むための土台を築く大切な時でもあります。
発達過程を理解した上で、余裕をもって対応したいですよね。ギャングエイジとは一体どんなものなのか?その時期や特徴、問題点とこの時期だからこその子どもとの関わり方を詳しく解説します。
「ギャングエイジ」とは子どものみの少人数のグループを作って、仲間内だけの価値観やルールに従って活動する時期を指す心理学用語。小学3〜4年生から高学年に見られる子どもの成長過程のひとつです。
じつは文部科学省の審議会でも触れられているほど、教育に関わる人たちの間ではメジャーな言葉でもあります。
低学年までは男女や決まったグループ関係なく遊ぶ子が多い中、この時期には同年代、同性の中で5〜6人程度の小さなグループを作って、そのグループのメンバーを基準に行動するようになります。
子どもたちは家庭とは異なる価値観に出会ってたくさんの刺激を受け、協調性や社会性を育んでいく大事な時期です。
ギャングというと海外の暴力団や強盗団をイメージする人も多いと思いますが、もともとギャングは集団・仲間を表す言葉なので悪い意味ではありません。
ただ、ギャングエイジ期には子どもの態度や言動が反抗的になることで、「あんなにかわいかった子がなぜ!?」と、戸惑う親も多いでしょう。
ギャングエイジ期の子どもの態度や言動にはどのような特徴があるのでしょうか?
グループの中で過ごすことで仲間と遊ぶ楽しさや、子ども同士自由に行動できる面白さを発見するこの時期。先生より友達を優先したり、家族と過ごすよりも友達同士でいたがるようになります。
「これをするのが当たり前」「これをするのがかっこいい」といった子ども同士の新たな価値観が生まれます。
その考えが周囲の大人の意見と異なる場合には嘘をついたり、秘密をつくることも。
また、自分の意思を貫くために大人に反抗的な態度をとることも出てきます。
大人への憧れが高まるギャングエイジは、強い言葉を「大人みたいでかっこいい」と思う時期。
そのため「うるせえ」「黙れ」などの今まで使わなかった強い言葉や「消えろ」などの攻撃的な言葉を使う子も出てきます。
グループの中の価値観やルール、例えば「これをしていて当たり前」といった共通認識を優先させたいために家庭や公共の場での約束やルールを破ったりすることも出てきます。
集団の中にいることで気が大きくなるため「みんながいるから大丈夫」と感じることも要因です。
男女の体つきの違いが顕著になってくることで、異性を意識し始めるのもギャングエイジの特徴のひとつ。
それまでは男女の区別なく付き合えていた子も自然と男女別のグループに分かれていき、遊び方にも男女の特徴が表れてきます。
同性でグループを作った場合には、男女で異なる傾向が出てきます。
男の子のコミュニティは危ないことや悪いことをかっこいいという価値観が生まれ、あえてルールを破るなど、やんちゃな行動が目立つように。
女の子のコミュニティは共感できるかが重要になるため、グループ内でも気が合わない子を対象にいじめや仲間はずれといったことが起こります。女の子の場合、早い子は小学校2年生くらいから特定のグループを作り、そのままギャングエイジに突入することもあるため変化がわかりにくいことも。
現代では子ども同士で遊ぶ機会が減っていることから、ギャングエイジを経験しないという子もいます。
塾や習い事をしている子が多く、ゲームやネットなどひとりで遊べる環境も充実していることも要因になっているようです。
親にとっては何かと不安なことも多いギャングエイジ期ですが、経験しないとなるとそれもまた心配ですよね。
ギャングエイジは失敗したり叱られたりしながら、同年代との関わり方や集団行動を学ぶ大切な機会です。
経験しないことが悪いということはありませんが、集団の中で我慢する、感情をコントロールするといった耐性がないことから人間関係で苦労をするといったことは出てきそう。
なるべく子ども同士で遊ぶ機会を設けて、子どもの世界を広げてあげるのも親の大切な役割です。
とはいえ反抗的な態度についついイライラしてしまいそうですよね。ギャングエイジ期の子どもとはどう関わるのがベストなのでしょうか?
危なっかしい子どもたちの行動についつい口を出してしまいがちですが、ギャングエイジ期の子どもたちは友達との世界に親が介入することを嫌います。
物理的に危険なことや、誰かが大きく傷つくような場面でない限り大人は口を出さずに見守るのがベストです。
この時期の子どもの嘘は共通の秘密を持つことであり、仲間意識を高めて信頼感を深めています。
ただし各家庭ごと、やって良いこと・悪いことの基準をはっきりと設けて、それを破った場合には叱るなど、けじめは持たせましょう。
また「宿題は終わった?」「今日は〇〇さんと一緒だったんだね」と声をかけることで、大人はきちんと見ているんだと意識させることも大事なポイントです。
見守られているという安心感を与えることが危険な行動から踏みとどまるきっかけになったり、大きなトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
感情的に叱ったり、「正しい行動」を全面的におすのは逆効果です。
この時期に一番大事なのは子どもの行動を否定しないこと。社会性を育むための基礎を学ぶ時期なのだということを理解した上で、子どもの意見を尊重してあげる余裕を持っておきたいですね。
信頼関係が崩れてしまうため、何か悪いことが起きた時に友達を悪くいうのもNG。 子どもが話しかけやすく、悩みを話しやすい環境を作るために、冷静な対応を心がけたいですね。
集団に同調しない人がグループから仲間外れにされたりと、ギャングエイジ期はいじめが生まれやすくなっています。
気を付けておきたいのは、いじめられる側だけでなくいじめる側にもなりえるということ。
グループ内で明らかな上下関係ができていたり、子どもの言動に違和感を感じるなどのいじめの兆候が見られた場合は、学校の先生や関わりのある大人から状況を聞く、学校や地域の子育て窓口に相談するなど大人から働きかけてあげましょう。
子どもの変化にいち早く気づき行動することが、子どもを守ることにつながります。
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長く感じられるギャングエイジも、終わってみればあっという間。高学年になって興味の対象が変わったり、自分の内面に意識が向くことでグループ行動への執着も収まってきます。
たくさんの出来事を乗り越えたわが子はぐんと成長しているはず。心配事も多いと思いますが、発達の過程ととらえて見守っていきたいですね。
ライター Ichika
山梨県生まれ。関西、九州での生活を経て11年ぶりに地元に戻りライター業をスタート。身内や友人に教育関係者が多く、たくさんのヒントを得ながら自分なりの育児を模索中。子育て経験をもとにした体験談やコラムも発信しています。