忙しい子育ての毎日の中で、子どもへの関わりが果たして本当に子どものためになっているのかな?と常に考えながら子育てをしていくのは難しいもの。
子育てに悩むママ・パパはみんな、将来の自立に向け愛情をもって子どもを育てていることでしょう。
でも普段のかかわりの中で、子どもの自立を阻んでしまうことになるかもしれないのが過保護な接し方。
子どもがかわいいという気持ちからくることで、過保護は決して悪いことではありません。ただし、ある一定のラインを超えることで子どもはもちろん保護者自身にも色々な心配なことがあるのです。
今回は過保護な関わりが子どもにとってどんな影響があるのか、皆さんが過保護な関わりをし過ぎていないか、また同時に「過干渉」にまで及んでいないかなど、子どもとのかかわりを詳しく掘り下げていきます。
保育士ライターの炭本まみが、これまでの保育経験で見てきた事例も踏まえて解説します。
過保護とはどんなふうに子どもに関わることなのでしょうか。また、保護者が子どもに対してどんな気持ちを持って子育てをしていることを言うのでしょう。
過保護とは、過保護とは、必要以上に子供を甘やかしたり、子供の要望を叶えてしまったりすることをいいます。
このような保護者の行動が過保護の例になるでしょう。
一見、子どものためにしているようですが、過保護は子どもの自立心や挑戦しようとする気持ちを先取りし、成長の芽を摘んでしまいます。
子どもができるのに保護者に甘えてくることに対し、応えることと過保護は少し意味が違います。
子どもが自立に向かっていく成長過程の中で必要な「甘え」に対して、受け入れてあげることはとても大切なことです。しっかりと受け止めてもらえることで子どもは自ら成長し、親から離れ自立していきます。
甘えを受け入れることが過剰な「甘やかし」となり、保護者から先回りしてしまうことが過保護に、そして過干渉へとつながります。
過保護と同じような意味合いに取られることが多い「過干渉」とはどのようなことなのかも知っておきましょう。
過干渉とは、過保護よりもさらに子どもの行動や思考に口出し・手出しをすることです。保護者の思うままに子どもを動かしたい、子どもに指示を出す、子どものいうことを信じ切ってしまい冷静な目で子どもを見つめられなくなることもいいます。
子どもよりも保護者の方が人生を先にあゆみ、さまざまな知識や経験があるのだから、子どもは保護者に従うべきである、または、従った方が良いと思っている人もいるかもしれません。
また、子育てに対して強い責任感を持つ真面目な保護者にも「過干渉」の傾向が見られます。
このように、過保護は子どもの意見や要望を際限なく受け入れてしまうことであり、「過干渉」は子どもの考えや選択に関係なく親が決定したり行動や考えを制限する、という違いがあります。
過保護も「過干渉」も行き過ぎてしまうと、子どもの成長や大人になってからの生き方に、大きな影響があると言われています。
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子どもが求めてくる「甘え」に関して応じることは過保護とまでもいかないくらいのことであり、かえって子どもの心の安定に必要なことです。
逆に子どもの「甘え」が過ぎ、保護者に「依存」している状態が続くのであれば、子ども自身や家庭内の雰囲気、保護者の関わり、子どもの園生活などの環境に根本的な何かがあるのかもしれません。
「甘え」を受け入れることを過保護ととらえる人がいたり、保護者はそう思っていなくても周囲に過保護と思われたり言われたりすることがあるかもしれません。
ですが、子どもは時折甘えたくなることがあるのは当然。保護者に愛情を確認したくなる気持ち、ちょっと疲れている時などがふいに甘えたくなるときかもしれません。
きっと自分の子どものことは、保護者がいちばんよく理解しているでしょう。そんなときはしっかり甘えを受け止め、安心感を与えてあげてください。
ただし、子どもを尊重せず保護者の思う通りに子どもを動かそうとしたり、子どもからの希望がないのに子どものできることを保護者がしてしまうことは「過干渉」となります。「過干渉」については、子どもが自ら成長しようとする意欲を奪い、保護者の言いなりになりながら大人になっていくことで、子ども自身が将来困難を抱えることがあります。
また、行き過ぎた過保護も同様です。
過保護または「過干渉」に育った子どもには、どんな心配が生じることがあるのでしょうか。
適度な甘えや依存を受け止め、子どもを安心させてあげることが、子ども自らの成長と自立を促します。その受け止めをしすぎる、親が率先してしまうことが過保護となってしまう、とお話をしました。
では、過保護にし過ぎた子どもは、成長段階でどんな影響を受けるのでしょうか。 具体例を紹介します。
保護者の意見が自分の意見である…保護者に賛同し意見を合わせることで、保護者の機嫌がよくなったり、叱られたり文句を言われたりしないので、自分も保護者の言う通りだと思い込みながら成長していきます。
本来持っている自分の意思や、考え、選択には正解・不正解はないにもかかわらず、何が正しいのか、自分が意見をもっても良いのか迷い、誰かに意見を求めてしまいます。
そのため、他人の顔色や意見、態度に振り回されたり、自分が本当はどうしたいのかがわからなくなり、大変つらい思いをします。
過保護な環境で育つと、子どもの頃から心配のあまり、失敗する前に保護者が手助けしたりアドバイスや助言をし、失敗しないように育ったため、失敗や苦い経験が極端に少なくなります。
失敗を恐れたり、失敗はいけないことだと思い込んだり、失敗を恐れるあまり新しいことに取り組みにくかったりします。
また、うまくいかなかったとき、大変動揺し、解決策が思い浮かばず深く落ち込んだりします。
自分の興味や関心のあるものへ誰の目も気にせず向かっていくことや、無心で夢中になることが「良いこと」なのか「しても良いのか」が自分で判断せず、物怖じしたり、引っ込み思案になったりすることもあります。
そういう姿を見た保護者にさらに「どうしていつもそうなの、早く行きなさい」と急かされ、さらに自信が失われていくこともあります。
過保護や「過干渉」に育つことで、困ることにあわないよう保護者が手出し・口出しをしてしまいますが、少しずつ成長し学校生活などで過ごすときに、どうしてよいかわからず苦労します。
単純な質問をしにくかったり(何か言われるのではないかという恐怖心・緊張)、体調不良を言い出せなかったり、わからないことを聞くことがむずかしくなることもあります。
特に「過干渉」に育った場合は、子どもの頃は親の言うことを聞いていればスムーズで安心した生活を送ってこられました。自分の思いや希望を押し殺していても、それは無意識のこともあります。
ですが、親の手から育っていこうとしているときに、引き留めるかのように干渉をするのは、子どもにとって辛く苦しいことです。
「ママ(パパ)がかわいそうだから」「さみしそうだから」「機嫌が悪くなるから」と、成長とともに親を思いやり、自分の気持ちを押し殺しても親に従おうとします。
それは、保護者のことが大切で大好きだからですし、信頼関係を壊したくないという子どもの本能でもあります。
最後には、これまで抑圧されていた様々な感情が、成長とともに爆発し、保護者に対する強い反抗心を抱くことも少なくありません。
保護者に嫌悪感を感じ、話さなくなったり、乱暴な言葉を吐いたり、暴力を振るったりすることもあるでしょう。
これまで保護者の過保護や「過干渉」にあい、自分の感情にフタをして育った子どもは、「アダルトチルドレン」にもなりやすいと言われています。
「アダルトチルドレン」とは、子どもの頃は保護者の言うことを聞き「良い子」になっていましたが、成長するとともに生きづらさを感じ始めることを言います。
「アダルトチルドレン」(AC)は、子どものころに家庭内トラウマ(心的外傷)によって傷つき、そして大人になった人たちを指します。
子どものころの家庭の経験をひきずり、現在生きる上で支障があると思われる人たちのことです。
それは、親の期待に添うような生き方に縛られ自分自身の感情を感じられなくなってしまった人、誰かのために生きることが生きがいになってしまった人、よい子を続けられない罪悪感や、居場所のない孤独感に苦しんでいる人々です。
ACという言葉は、伝統的な精神医学や心理学の枠組みでの診断名ではありませんが、自分の育ってきた環境、親や家族との関係を振り返って自分自身を理解するための、1つのキーワードとしてとらえることができます。
大切な大切なわが子のことを思うがあまりの過保護や「過干渉」でしょう。
わが子に対して、困らせようと思って子育てをしている保護者はいないはず。
子どもとの距離を適度に保ち、成長過程に合った子育てをすることが、健全な発達をうながすことになるのです。
これまでの育児が過保護「過干渉」になっていないか、ちょっと振り返ってみましょう。
過保護にまでなっていないと思うけれど、もしかしたら子どもに口出ししすぎかな? そんな風に感じるのは保護者なら皆一緒です。でも、もしかしたら少しだけ過剰になっているかもしれませんね。まずは、過保護になりすぎていないかをチェックしてみましょう。
過保護になっていないか、あくまでも参考にしていただくためのチェックです。
心配が過ぎると、どうしてもこのようなことをしてしまいがちですね。 ですが、少しずつ小さな失敗や責任を子どもに負わせることが、子どものこれからの成長や社会性に必要なことなのです。
では、子どもにとってどのような関わりが将来の子どもの心を支える自信と自立心を育てるのでしょうか。大切なポイントをいくつか紹介します。
関わり方だけでなく、家庭ではできるだけ、保護者ではなく子どもがたくさん話せる環境・雰囲気を作ってあげたいですね。
子どもの発信する言葉から成長を感じたら、「そんな風に考えられるようになったんだね。成長したね。ママはとてもうれしいなぁ」と、子ども自身にも成長を感じられるよう伝えてあげましょう。
このような繰り返しが、子どもの自信と自立を育て、自分で判断したり困った人を助けたり、好奇心が芽生えたり、苦手にも挑戦できる人格を育てます。
子どものさまざまな成長の芽は、家庭という安定した土台があってこそ芽吹き育ちます。
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子育てにおいて保護者なら誰もが抱える不安のひとつ、「過保護」についての基本的なお話をしました。
もしかしたら周囲の人から「そんなに過保護に育てて……!」などと言われ悩んでいる保護者がいるかもしれません。
「過保護」をはじめ「甘えを受け入れる」、「過干渉」の各行為には、どれにも愛情がたくさん含まれているのは間違いのないことです。
子どもの将来をみすえ、どんな子どもに育ってほしいか、人として社会人としてどんな大人になってほしいかを考え、ちょっとだけ育児を振り返ってみませんか。
炭本まみ
保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。