早い子どもなら1歳を過ぎた頃からスタートする「イヤイヤ期」。もう3歳になるのにまだ続くの?と、疲れているママやパパはいませんか。
「イヤイヤ期」の始まりや終わりには個人差があって、3歳を過ぎ5歳になっても続く子どももいます。かと思えば2歳を過ぎるころに落ち着く子どももいるのです。
そもそも3歳って、どんなことができるようになる年齢なのでしょうか。
「なんで?」「どうして?」「ママ見てー!」と、色々なことを知り、さまざまな感覚がさらに研ぎ澄まされ、知的好奇心や情緒がぐっと育っていく時期ですね。
具体的に3歳の子どもの心と体の成長を知り、子どもの成長段階を知ることで「イヤイヤ期」にイライラしない子育てに少しずつ変わっていけるかもしれません。
3歳児のイヤイヤ期とその対処法について、保育士ライターの炭本まみがお話します。
そもそもイヤイヤ期とはなんなのでしょうか。
イヤイヤ期は、子どもが自分の存在に気づきママやパパと自分は違う意思を持つ別の人格だと理解し始めることです。これまで素直に言うことを聞いていたけれど、自分でやってみたい、自分のペースを崩されたくない、という子ども自身の意思をはっきりと素直に表現します。
ただし、時には「なんでも自分の思い通りにしたい」「とりあえずなんでもイヤイヤという」「できることであっても嫌がって甘え、自分でやらない」などさまざまなイヤイヤ期があり、ママやパパを惑わせます。
イヤイヤ期は、自立した人間へと発達していく第一歩の姿。
そうはいっても、ママやパパだって人間ですから、腹が立ったりつい叱ったり、「いい加減にしてよ…」なんて言ってしまいますよね。
こんな大変で疲れる日常の子育てですが、イヤイヤ期のピークは子どもそれぞれに違います。1歳過ぎた頃からスタートし、終わりを迎えたのが小学校入学後という子どももいます。また、3歳前に落ち着いたという子どももいます。
成長や発達に個人差があるように、イヤイヤ期の時期も個人差があります。
ですが、3歳の子どもの成長発達や特徴を知ることで、保護者の受け止め方も変わり、イヤイヤ期が少しおさまったり、ひどい癇癪やいつまでも泣き止まない姿が減っていくかもしれません。
3歳になると保育園や幼稚園など集団生活を経験している子が多いかもしれません。また、ママやパパは、大人との意思疎通が言葉を通してできるようになってきて、子育てが少しずつ楽しいと思える時期であり、自己主張が強く口ごたえをして生意気さを感じたり、思う通りにしたいと意思を通そうとする大変な時期でもあります。
3歳の子どもの体や心の発達とは、どれくらいなのでしょうか。個人差もありますが平均的な成長や特徴を紹介します。
体重は生まれたときの約4倍程度に増え、筋肉が発達していきます。さまざまな体の部分の使い方が器用になり、できることが格段に増えるでしょう。
また、体幹がしっかりしてくるため転ばずに歩いたり走ったりできるようになります。
個人差はありますが、全身運動、手先の運動が急激に発達し、体や指先の使い方にぎこちなさが消え、器用に動けるようになっていきます。
3歳になると、先を見通したり、経験したことを踏まえてイメージしたり、空想の世界を楽しめたりと、想像力が発達していきます。
おままごとや、ヒーローごっこなどが楽しい時期でもありますね!お付き合いをせがまれるママやパパもいるのではないでしょうか。
まだまだ空想と現実の世界が混同していたり、色々なものに生命が宿っていると考えたりしています。「お花さんがニコニコしてるね」「お庭におばけがいたよ」などイメージ豊かな言葉を話します。
また、ママやパパがしていることをよく見ていて、お手伝いをしたがったり、小さな子どもやお年寄りなどに優しくしたりする行動や、「今日●●ちゃんが泣いていて、さみしそうだったの。」など、人の気持ちを思う優しい気持ちが育つ時期でもあります。
人を思いやる、人の気持ちを理解したり想像力を働かせ思いを寄せるという心の動きは、自分自身がママやパパ、周囲の大人に大切にされていることを感じたり、自分も心に寄り添ってもらっていると十分に伝わっているからこその心の動きです。
周囲の人の行動や言動、気持ちなどを見て感じ取り、同じことをしようとする時期ですね。
3歳以降は、そこから自分の考えを深めたり、記憶し、心も体も本格的な自立へと向かいます。自立へ向かうためにもこのようにいいな、と思うことを感じ取れるように、子ども自身や周囲の人の良い所や優しい気持ちを表す場面などを、わかりやすく言葉で伝えたり、日ごろの会話の中に取り入れていきたいですね。
3歳の言葉の数は1,700語前後と言われています。こちらも個人差があり、3歳になるのにあまり話さない子ども、年齢以上にお話の上手な子どももいます。
2歳から3歳前までは「これ、なあに?」「牛乳、ちょうだい」などの二つの言葉=二語文が主ですが、3歳を過ると「どうしてカラスは黒いの?」「ママ、おなかすいた。おやつちょうだい」「明日、お出かけはどこへいくの?」などほぼ大人と同じように会話ができるようになっていきます。
人とのかかわりは、言葉を介したかかわりが中心となり、友だちとイメージした世界を共にしながら並行遊び(一緒に遊んでいるように見えて、一緒にいるだけ)からちょっとしたルールの中で遊べるようになっていきます。
3歳になると記憶力や思考力がグーンと成長していきますが、半面、自分の思い通りにならないことに関して納得いかないと怒ったり泣いたり、予定の変更について動揺したり怒ったり、なんでも頑固に一人でやりたがったりもします。
心も体も成長していく3歳児。そんな3歳児のイヤイヤ期はなぜ起きるのでしょうか。また、イヤイヤ期はどんな様子なのでしょうか。
2歳までの「じぶんで!」「イヤ!」というイヤイヤ期と3歳のイヤイヤ期はどんな違いがあるのでしょうか。
1歳から2歳のイヤイヤ期では、こちらが言うことに対して返事をするように「イヤ!」と言ったり、言葉を介して説明しても通じず駄々をこねたり泣き叫ぶようなイヤイヤ期であったのに対し、3歳くらいからのイヤイヤ期では、言葉を介して自分の意のままにならないことに納得できないことを伝えたり、屁理屈(大人にとっては)を言ったり、体の動きに任せて乱暴する子どももいます。
あきらめがつかずに一日中怒っていることもあります。かわいらしいものですが、直接かかわるママやパパにしてみれば1歳過ぎから続いているイヤイヤ期はいつ終わるんだ? と、疲れとイライラがつのることでしょう。
次の項では、ママやパパはどのような対応をしたら良いのでしょうか。また、イヤイヤ期が一日も早く終わる方法や、イヤイヤが始まったときにすぐおさまる方法をご紹介します。
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筆者が保育士時代には、保護者の心持ちが少しでも楽になるよう、3歳児のイヤイヤ期の壁にぶつかっている保護者には、さまざまなアドバイスをお伝えしていました。
中でも、
というアドバイスと、
というアドバイスは、繰り返し伝えていました。
保護者からは、「親の気持ちの持ちようで、子どもがすぐに落ち着くと気づいた」
「反抗期・イヤイヤ期は面倒と考えず、怒らなくても良い方法を考えるようになった」と、言ってもらえました。
保護者は仕事や家事、子育ての毎日に疲れ果てた上、自分の時間がなく、ストレス一杯に過ごしているでしょう。そんな大変な子育ての時期に、保護者自身の関わり方や心の持ち方、子どもの姿の捉え方を変えることに、大きな負担を感じるかもしれません。
ですが、慣れると逆に親も楽であり、子どもは安心し落ち着いていきます。子どもは環境の変化や保護者の心の揺れに大変敏感であり、不安になります。
子どもは日常が「いつもと同じである」という秩序を感じることで、安心するので、保護者が意識をすることでイヤイヤ期は落ち着いていくでしょう。
日常生活のルーティンは子どもを安心させます。食事のときに座る椅子、眠る前の準備など、いつも同じことがある日変わることは、まだ色々な事情を理解できない3歳児にとって不安な気持ちになるでしょう。
言葉で説明し、事前に変更することを伝えておくことで癇癪を起こさずに済むことがほとんどです。
3歳の成長発達の項でお話したように、このころは先を見通す力がついてきます。スケジュールの変更や日常生活のルーティーンの変更をしようとするときは、事前に話してくことで安心するのです。
自分が決めた順序で最後までやり通したい、自分が決めたことをしたいという気持ちをくみながら、「こういう風にしようと思っているんだけど、●●は、①と②とどっちがいいかな?」などと選択させるのも安心でき、混乱せずに過ごせます。
時計や細やかな時間の概念はまだまだ理解できない3歳児。
「長い針が12と1と2のどれかででかけようと思うのだけれど、どれがいい?」と子どもの選択をさせると同時に、「1になったらお出かけするなら、長い針が10まで遊んでていいよ」など、短い先の見通しを持たせることが有効です。
遊んでいる最中に「さぁ行くよ」と突然言われるよりも、「長い針が10になったよ。片付けしようね」と言われれば「あぁお出かけするんだったな」と自ら納得できますね。
癇癪や泣き叫ぶようなことが減っていくはずです。
子どもは今日出かける、ということはわかっていても、遊びだせば自分のことに集中したいものです。事前にママやパパと時間について話し合い共通認識しておくことで、遊びたいけれどお出かけだから仕方ないな、片づけようという気持ちになりやすいのです。
まだ小さな3歳児ですが、先の見通しを持たせるため、細かく予定や約束、確認をしましょう。
子どもが何に興味を持っているか、声をかけて何かを促す前に子どもの様子をちょっとだけ観察する習慣をつけましょう。
遊んでいる際も、ふと集中力が切れることがあります。そんな時に声をかけてみるのも良いですね。
また、おもちゃの遊び方や興味を持っていることをよく知っておいて、そのことをママやパパからも話しかけ、遊びに誘うなど日々の関わりの積み重ねも、癇癪やイヤイヤを最小限にする近道です。
癇癪を起こしたり泣き叫んでいるときは、自分のしたいことができなくなる不満と不安の表現です。頭ごなしに叱ったり、無理矢理行動させるのではなく、「まだ遊びたかったよね」「楽しかったんだね。わかるよ」と気持ちに寄り添う言葉をかけてあげましょう。
ぐずったり泣いたりするほか、周囲の人に叩く・蹴る・暴言を吐くなどの乱暴行為をした場合や、社会のルールに反するようなこと、人の迷惑になること、人を傷つける行為をした場合は、「叩くと痛いから、叩いてはだめだよ」「ひどい言葉をいうと、心が傷つくから言ってはいけないよ」と、理由をきちんと伝え静止しましょう。
暴れている時は、聞く耳を持たないかもしれません。
落ち着いてからでも構いません。ダメなこと・人の迷惑になること・家庭で決めているルールや約束を守らない場合は、その都度理由を伝えながらいけないよ、と話します。
今日は特別、明日からはダメだからね、などその日によって対応が変わることは子どもが迷ってしまうのでやめましょう。
毅然とした態度で伝えるべきことは伝えましょう。といっても、怒ったり怒鳴ったりする必要はありません。
ママやパパは3歳児になり、理屈を言ったり、反抗したり、泣き叫んで思いを通そうとしたりする子どもを前に、疲れきってしまうかもしれません。
3歳児のイヤイヤ期は、1歳過ぎから続くイヤイヤ期よりさらに1歩成長するためのチャンスです。
1歳ごろのイヤイヤ期とは違い、イヤイヤと癇癪をおこしながらもママやパパが伝えることや子どもが感じ取って成長する面が社会生活で生きるための大切な土台となります。
3歳児のイヤイヤ期は、ルーティーンが変わることで見通しを持てない不安感や、言葉を覚え会話ができても尚、まだうまく表現できないもどかしさ、もうなんでもできそうだけれどまだママやパパの手助けが必要なくやしさなど、複雑に絡み合った気持ちがあります。
そういった子どもの抱えている気持ちを理解してあげた上で、どうすればイヤイヤ期の癇癪や大泣きをしなくても済むことになるのか、子どもの気持ちを汲んだ対応をしてみましょう。
また、ママやパパがイヤイヤ期ととらえないことも大切です。
子どもが自己主張していること、子どもが不安に思っていること、どうしたいのか、どうして不安定な気持ちになったのか、その背景や前後に理由がなかったか思いを巡らせてみましょう。
そうした関わりをしてもらった子どもは、自分や家族を好きになり、信頼し、自分の気持ちを律しながら自立していきます。
そして心が安定するとイヤイヤ期を脱し、さらに興味関心を広げ、集中して遊びに取り組むようになります。
3歳児のイヤイヤ期は、成長と自立のチャンス。では、その成長や自立をうながす遊びはどんな遊びなのでしょうか。
カラフルなおもちゃ、音のなるおもちゃ、キャラクターやヒーローのアイテムを手にしたその日は喜びますが、あっという間に飽きてしまいます。高価で手の込んだ現代のおもちゃは、よくできていますが子どもの脳を使う創造性に欠けるものが多いため、3歳の子どもには物足りません。
3歳は好奇心が旺盛であり大人の真似をしたがる時期です。おもちゃ屋さんで購入するおもちゃ以外に、おうちで集中できる遊びを紹介します。
ほかにも日常生活の中で、お手伝いにも近いようなことを子どもの活動や遊びとして取り入れ、子どもが楽しく集中し満足感を得られる活動を続けていれば、癇癪や泣き叫ぶ行動もおさまってきます。
空いたペットボトルに指でつまんだおはじきを入れて遊びます。誤飲しないよう見守りながら遊ばせましょう。
上手に入れられるようになったら、ペットボトルのフタにおはじきサイズの穴を細く開けてあげます。
初めより集中しなければおはじきが入らないので、夢中になって遊びます。
おはじきが指で上手に入れられるようになったら、スプーンや箸ですくって入れましょう。今度は手の動かし方をうまく調節しなければ入りません。飽きずに楽しめますよ。
靴ひもなどのしっかりしたひもに、短くカットしたストローを通していきます。 できるようになったら、画用紙などにパンチで穴を開け、ひも通しをして遊びます。
これもひも通し専用の市販のおもちゃを買ってしまうと、遊びが広がりませんね。
おうちにあるもので代用ができますし、その方が色々なものをとおしてみようかな?という想像力やイメージが広がります。
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2センチくらいの幅のある色々な色のリボンを30センチくらいにカットし、たくさん用意してあげます。
テーブルの足や椅子の足など、さまざまなところへたくさん結んで遊びます。または、リボン同士を結んで長くつなげてみましょう。
リボン結びができるのはまだもう少し先ですが、指先を使った団子結びであっても、結べるうれしさとたくさん結ぶことで集中力が高まります。
少し大きめの紙に、直線や波線など色々な線を書いてあげます。子どもはその線の通りにはさみで切ります。
どうしたらなめらかに切れるのか、画用紙を動かしながら切ることを覚えたり、はさみの刃の中心部分で切り続けることがきれいに切れるコツだと理解し、楽しみます。
できるようになったら、新聞広告やチラシを切るのも楽しいですよ。 カラー広告は切ったら、糊で紙に張り付けお店屋さんごっこや絵本作りなどにも発展できます。
折り紙を半分に折ることから始めましょう。大切なのは、角を合わせてしっかりとした折り目をつけること。 これも指先の器用さが育ち、脳にも刺激が伝わります。
初めから何か作品を作ろうとしなくても良いのです。半分、三角、四角に折って広げてと、少しずつ折る回数を増やし、簡単な作品作りへと進んでみましょう。
100円ショップなどで売っている色々なシールをたくさん用意し、剥がして貼るという遊びをしましょう。
慣れてきたら、線描きで何かの形やシールを貼る場所を記したイラストを描いてあげ、そこにはみ出さずにシールを貼ります。
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イヤイヤ期をイヤだなぁと感じるのは、ママやパパなら誰しも一緒。だからこそ、いかに子どもとうまくコミュニケーションをとり、楽しい日々にしていくか、どうしたら子どもが安心して生活し、不安な気持ちで癇癪や大泣きをしないか、目の前のわが子をよく観察し、紹介した対応にトライしてみてください。
炭本まみ
保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。