4歳の娘が、遊んでいないのに「今日は〇〇ちゃんと公園に行って遊んだの」と言ったり、まったく予定はないのに園の先生に「私のうちは今度お引越しするの」と報告してしまったり…。
本人に悪気はなくウソをついている、というのとも少し違うようです。子どもの言っていることが一体何が本当で何が違うことなのかがわからなくなってきました。どう受け止めればいいのでしょうか。
絶対にウソだと思う話を子どもがしたり、すっかり信じていたらやっぱりウソだった、というとき、親はどうすればいいでしょうか?
はい、そんなときは、ぜひ次のようにしてくださいね。
小さな子どもは想像力が豊かです。
2〜3歳の子どもなら、紙に〇をたくさん描いたあと、それがいろんな顔に見えてきて、これはパパ、これはママ、などと言うことがあります。
3〜4歳になると、キャラメルの箱などをふすまや障子のレールの上に置いて「電車~しゅっぱ~つ」と言いながら走らせるときもあります。
そのときの子どもは、その〇はもうパパやママにしか見えてなく、キャラメルの箱は電車そのものに見えています。 そうやって子どもは、自分で頭に描いたものを本当に見たかのように思ってしまうことがあります。
でも、さっきのような場合、親は「これは顔じゃないでしょ」なんて言わないし、「電車じゃなくて箱でしょ」とも言いませんよね。子どもの想像力を認めているわけです。
なのに、親は子どもの口から出てくる言葉や話には想像力を認めず、現実に起こったことしか認めないことがよくあります。そしてそれらを「ウソ」と呼び、それを言った子どもを「ウソつき」よばわりしてしまうことも…。
子どもは想像力がたくましいがゆえに、特に3歳から6歳くらいのころは、現実と夢の世界、現実とドラマ、といったものがごっちゃになってしまっていることがよくあります。
たとえば、実際は行ってないのに「海に行った」と言ったとします。
その時も、「ウソをつこう」なんて思ってはおらず、「海っていいなあ」と思い、行った自分を想像しただけで行った気持ちになり、それを口にしただけのことも多いものです。
たしかに事実ではないことを言ったかもしれませんが、それは「思い違い」「勘違い」に近いもので、「ウソをついた」わけではないのです。
たとえば大人は「鬼のような形相で」などとよく言いますが、それも想像力を働かせて言っただけで、実際は鬼とは全然違う顔だし、そもそも鬼なんて見たことないはずです。でも、そう言っただけで「ウソつき!」なんて言われたら、困ってしまいますよね。
その話が明らかにウソだったとしても、誰も傷つけず、特に困ったことも起きないのならば、気にせず「もう!うちの子は本当に想像力がたくましいんだから」と、笑って許してあげてほしいと思います。
空想からではありませんが、「ウソをつく」という意味では、子どもは本当のことを言ったのに叱られたりすると、本当でないことを言う、つまりウソをつくようになることがあるので気をつけたいものです。
たとえば、ピアノのふたで指を挟んだから「指をはさんだ」と本当のことを言ったのに、「ピアノに触っちゃダメでしょ!」「バタンと閉めるからでしょ!」なんてきつく叱られたら、次からは、指を挟んでも「はさんでない」「触ってない」とウソをつくことがあります。
ケガをしても「また叱られるだけ」と、本当のことを言わなくなることもあります。
でも、仮に空想や記憶違いから言ったとしても、たとえば「〇〇ちゃんのお母さんが死んだんだって」など、人の生死に関してウソを言う、誰かのことを傷つけるウソを平気で言う、話の中でウソの方が多い、明らかに故意にウソをついている…などの場合は、ウソをつくクセ=「虚言癖」(これが結構多いのです)がついてしまう前に、なんらかの指導や注意が必要です。
ただし、本人には悪気はないことが多いので、強く叱ったり、「ウソをつくな!」と頭から否定するようなことは言わないようにしましょう。
まずは「本当?」と言ってから、「でも、ママはウソだと思うな」などと、自分の見解を軽い感じで、しかしはっきりと告げるといいでしょう。
子どもは「あ、ばれた」と思い、ウソが通じないことを知り、ウソを言うことがずいぶん減っていきます。
人を傷つけるウソを言った時は、「そんなことを言ったら〇〇ちゃんがきっと悲しくなっちゃう」と言って、できればその理由(悲しむ理由)もていねいに伝えます。
それは同時に、相手の気持ちを考える、といういい機会にもなります。
「子どもはウソをつかない」とよく言われますが、みなさんご自身の子ども時代を思い出してもわかるように、子どもでもウソはつきます。
その先入観をなくし、「子どもでもウソをつくことはある」と、大らかな気持ちでいると、ウソをついたときの対応も落ち着いてできるようになりますよ。
私たち大人も、人から何かを誘われた時に、「きょうはちょっと用があって…」などと、子どもの前で平気で「本当ではないこと」を言うことがあるはずです。
「想像だけで言うこと」「ウソをつくこと」は確かによくないことではありますが、あまり神経質になりすぎないようにすることも子育ての上では大切なことです。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
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