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原坂さん教えて!おやこのお悩み相談室

何か言うとすぐ「だって~」「なんでしなきゃいけないの」と口ごたえ。素直じゃないわが子にどう接したらいい?

何か言うとすぐ「だって~」「なんでしなきゃいけないの」と口ごたえ。素直じゃないわが子にどう接したらいい?
子どもコンサルタントの原坂一郎さんに、子育ての悩みについてアドバイスしてもらうこの連載。今回のテーマは"子どもの口ごたえ"について。どうして大人の言うことを素直に聞けないの?と思ってしまいがちですが…。
目次

おやこのお悩みVol.19:「大人が言うことにすぐ『だって~』と口ごたえするわが子」

最近、子どもに何か言うと、すぐ「だって~」「どうしてしなきゃいけないの」などと言って、なかなか素直に言うことを聞いてくれません。大人の伝え方が悪いのでしょうか。どうしたらいいのか教えてください。

「どうして○○しないの!」と言えば、「だって~、〇〇なんだもん」

「早く食べてね」と言えば、「どうして~?」

「は~い」といい返事をしていた、素直なわが子はどこに行ってしまったのか…と思っているママやパパはいませんか?

はい、どこにも行っていませんよ。

だって、子どもが、そう言うようになったのは、ちゃんとわけがあるのですから。
あっ、私も言っちゃった!

大人だって"言い訳"しますよね…!

人に何かを言われたらすぐに「だって…」と言う人は、大人でも、言い訳ばかりする人のように思われてしまうことがあります。
「あの人は素直ではない」というレッテルをはられてしまうこともあるかもしれません。

でも、普段私たち大人は、じつは誰もが言い訳ばかりの日々を過ごしているものです。

遅刻すると「ごめんなさい、電車に乗り遅れちゃって」
メールの返信が遅くなると「来ていたのに気づかなくって…」
ビジネスの世界でも「仕事が混んでいまして…」「対応に手間取っていました」などの言葉が始終行き交っているものです。

それらは、ひと言で言えばすべて「言い訳」です。

人、自分の行動にはすべて理由があって、それを理解してほしいと望む傾向があります。その行動が他者に迷惑をかけたときは、余計にその事情を言いたくなります。

子どもも同じで、親に何かを言われたときや自分が責められたときは、「だって」と自分なりの事情を言いたくなるのです。

「言い訳」であることには変わりないのに、大人が言うとそれを認め、相手が子どもだと「言い訳ばっかりして」と腹が立つこともあるのはどうしてでしょうか?

一番大きいのはその言い方の差です。
大人は言い方がうまいのです。

さっきの例でも、大人は単に言い訳を言っているだけなのに、ほとんどの場合、なんらかの謝罪言葉をまず最初に言っているはずです。
人は最初に謝られてしまうと、それを受け入れる傾向があり、そのあとの「言い訳」にも理解を寄せてしまうのです。

人から何かを指摘されたときに、まず謝罪の言葉を言ってから言い訳に入れるようになるのは、人との関係を気にする年齢になった頃です。

それまでは、子どもが「だって~」とすぐに言い訳じみたことを言ったとしても、「ああ、自分をわかってほしいのだな」くらいに思い、事情をちゃんと言葉で言えるようになったその成長を、むしろ喜んでほしいと思います。

「素直じゃない」わけでなく「自分の行動に責任をもちたい」という気持ちの表れ

子どもに「こうしてね」と何かを頼んだり、「ダメよ」と注意をしたりしたときに、「なんで?」「どうして?」という返事が返ってきたときも、腹が立ってしまうことがあるかもしれませんね。

親としては「は~い」という返事が聞きたかっただけなのに、まるで食ってかかるような口ぶり。

でも、これも決して子どもの性格が素直でなくなったりしたのではありません。
「自分の行動に責任を持ちたい」という、自我の芽生えから来るもので、これも子どものすばらしい成長のひとつなのです。

自分の行動を制限されるときは、私たち大人でも疑問が出てくるものです。電車が止まったらそのわけを知りたくなるし、もしも電車から降ろされたなら「なんで~」と言いたくもなってきます。

理由がわかると人は納得して動き、有無を言わさず強引にやらされると不快になります。
子どもも、自分の意思ではないものを要求されたり制限されたりしたときは、理由が知りたくて仕方がなくなるのです。

これは1歳や2歳のときには決して起こらなかったもので、人として大きく成長した証です。

簡単に理由を添えるだけで、子どもの反応が変わる

子どもに「なんで?」「どうして?」と言われがちな親御さんには共通点があります。理由も言わずに、子どもに何かを指示していることが多いのです。

もうすぐ食事だからと言って、いきなり「片付けなさい」と言われたなら、大人でも「なんで?」と言いたくなります。
食ってかかっているのではありません。ただ素直に理由が知りたいのです。

その時ひと言、「もうごはんの時間だから、そろそろ片付けなさい」と理由を添えて言うと、「なんで?」とはもう言わなくなるはずです。

お店で「触ったらダメよ」としか言わなければ、「どうして?」という言葉を返した子どもも、「品物が崩れるから触ったらダメよ」と、理由を添えて言うと、以前のように「は~い」という素直な返事が返ってくることがうんと増えるはずです。

理由と言っても、ごく短い理由で構わず、言ったとしても数秒で言える理由を添えるだけでいいのです。
理由も言わずにやめさせたものは「頭ごなし」とも言えますが、理由を添えてやめさせたものは「しつけ」にもなります。

子どもに何かを頼んだり、禁止したりする時は、ぜひ短い理由を添えて言ってみてくださいね。きっと今までとは違った反応が返ってきますよ。

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執筆者

こどもコンサルタント 原坂 一郎

1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。 Facebook:@IchiroHarasaka
http://harasaka.com/

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