4歳の女の子です。お友だちや、家族以外の大人になかなか「ありがとう」「ごめんなさい」の言葉が言えません。 親が一緒にいるときは「お礼は?」「ごめんなさいは?」と促すと言うこともありますが、なかなか自分からは言えません。どうしたらきちんと言えるようになるのでしょうか。
人から何かをもらったり、してもらったりしても「ありがとう」を言わなかったり、お友だちを叩いたのに「ごめんね」が言えなかったりすると、親は気まずい思いをしますよね。
どうしてすぐに言えないのか、どうすれば言えるようになるか…などをお伝えしたいと思います。
子どもも3歳にもなれば、「ありがとう」という言葉は知っています。
でも、3歳から6歳くらいまでの子どもは、何かをしてもらっても、それが心からうれしいと思えたときにしか言えないのです。
子どもは1日のほとんどを大人に何かをしてもらいながら生活をしています。
もしも、何かをしてもらうたびに礼を言わないといけないなら、朝、布団をたたんでもらう、服の用意をしてもらう、ごはんを食べさせてもらう、絵本を読んでもらう、など、すべてに対して「ありがとう」と言わないといけないはずです。
でも親は、それを子どもに期待しているわけではないですよね。
もしもそれと同じことを親ではない別の人からしてもらったらどうでしょう?子どもにお礼を言わせたくなるはずです。
お礼の言葉と言うのは、人間関係に大きく関わっています。
たとえば私たちも、駅前でティッシュをもらっても、ほとんどの人は無言で受け取ります。子どもが見たら「もらったのに、どうしてお礼を言わないんだろう」と不思議に思うはずです。
でも、もしもそのティッシュを配っている人がよく知っている人なら、「ありがとう」と言うはずです。
親が子どもにお礼の言葉を言わせたくなるのは、「してもらった人」との人間関係を親が意識しているときが多いものです。
毎日、大人にいろんなことをしてもらっている子どもは、その中でどれが"お礼を言うべきこと"で、どれが"言わなくていいこと"か、大人のようにはわかっていないのです。
とにかく何かをもらったときに、お礼を言うことを厳しく教えると、見知らぬ人や不審な人からチラシ1枚をもらっても「ありがとう」と言うようになってしまいます。
人間関係というものを気にしないで生きている子どもは、人から何かをしてもらったときに、とっさにお礼の言葉は出ない、と思っている方がよいかもしれません。
でも、「何かをしてもらったらお礼を言う」のは人としてのマナーですよね。そういうマナーをわが子に身につけてほしいと思うのは親として当然です。
どうすれば言えるようになるかと言うと…。
絆創膏を貼ってもらった程度で、「なんていうの?」と言って、子どもに「ありがとう」と言わせようとする人がいますが、これはある種強制とも言え、おすすめできません。そう言われてとっさに「ごめんなさい」と言った子どももいます。
確かに有難いことではあっても、子どもには「絆創膏を貼ってもらう」というのは、ごく日常レベルのことなのです。
そんな子どもも、お菓子やおもちゃなどをもらったときなど、それをうれしいと思ったときは、促されると「ありがとう」の言葉が出やすいものです。
私は絵が得意で、よくキャラクターの絵を描いて子どもに渡しますが、そのとき親に促されたときはもちろん、促されなくても「ありがとう」と言う子が多くいます。
そのように、子どもがうれしいと思う何かをしてもらったときに、「よかったね、ありがとうと言おうね」「ありがとうって言えるかな」などとやさしくリードすると、だんだん言えるようになっていきます。
そのときのうれしい気持ちとその言葉が関連づき、"お礼の言葉を言うのはどんなときか"というのが分かってくるのです。
そうやって促されて言えたときや、たとえ声は小さくても「ありがとう」と言えたときに、「ちゃんと言えたね」とほめると自信がつき、次は自分から言えるようになったり、もっと大きな声で言えるようになったりします。
促されてやっと言えたのに、「ママに言われなくても言いなさいよ」「もっと大きな声で!」なんて叱られると、委縮してますます言えなくなってしまうので気をつけてくださいね。
「ありがとう」よりもやっかいなのが「ごめんなさい」です。
友だちを叩いてしまったり、友だちの積み木を崩してしまったりしたとき、親は「ごめんなさい」と言ってほしいものですよね。
そんなとき、2歳、3歳の子どもでも、ガンとして言わないことがあります。「いや~」と言って大泣きする子もいます。
子どもは自分が悪いことをしたとは思わないときに、無理やり謝らされるのはイヤなのです。でもそれは、私たち大人もそうかもしれませんね。
子どもがよくないことをしてしまったときは、無理に謝らせるのではなく、まずは「それはよくないこと」「いけないこと」を教えることから始めましょう。
友だちを叩いてしまったら、「叩かれたら痛いね」「〇〇ちゃんも叩かれたらいやだね」「△△ちゃんは〇〇ちゃんに叩かれて痛いんだって」と、わかりやすく説明するように言うのです。落ち着いた言い方をするほど効果があります。そういうことを繰り返すうちに、謝るときはどんなときかということがわかってきます。
中には親が子どもよりも興奮して謝らせようとする人もいますが、逆効果となり、子どもも興奮するだけなので注意してください。
もしもそれで謝ることができたなら、「ありがとう」と言えたときと同じく、たくさんほめてください。ほめられることで、謝ることがプラスイメージとなって次につながります。
謝ることが恥ずかしいことでもなんでもないということもわかり、自己肯定感も高まっていきます。
あるアンケートによると、「ありがとう」と「ごめんなさい」を一番言わない人、言ってほしい人は、夫は「妻」、妻は「夫」、だと思っているそうです。
子どもよりも強情なのは、もしかしたら私たち大人かもしれませんね。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
Facebook:@IchiroHarasaka
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