うれしい、楽しい、悲しい、腹が立つ…たくさんの経験を通して複雑な感情も持ち始めてくる幼児期。子どものさまざまな感情に、親としてはなんと声をかけてあげていいのかわからないというシーンもしばしば出てきますよね。そんなときは、子どもの目線に立った、子どもの気持ちに寄り添うような絵本を、読み聞かせしてあげませんか?
今回は「ペットの犬や猫、金魚やザリガニなど大切な命を失くしてしまった」子どもにむけての一冊です。
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夏祭りですくった金魚。
みんなで捕まえたザリガニ。
生まれた時からいつもそばにいた犬。
おばあちゃんちのかわいい猫。
昨日まであんなに元気だったのに、今朝起きたら死んじゃってたんだ。
それが運命だったんだよ、ってパパは言うけど。
なんだか心にぽっかり穴が空いたみたいなんだ・・・・
幼児期には、魚や虫など小さな命を育てるシーンが多いもの。またペットの犬や猫など動物との触れ合いもかけがえのないものですよね。でもその分、ある日突然別れはやってきます。
そんな大切な命との別離をうけとめてあげる、そんな絵本ありませんか?
大好きなぼくの犬、エルフィー。一緒に遊んで、一緒に夢を見て、一緒に大きくなった。だけど、エルフィーの方がずっと早く年を取って、寝ていることが多くなった。そしてある朝、目を覚ますとエルフィーはしんでいた。
家族みんなが泣いていた。ぼくだって、悲しくてたまらない。だけど、いくらか気持ちが楽だったんだ。だって、ぼくは毎晩エルフィーに気持ちを伝えていたから。
「ずーっと、だいすきだよ」
小さな子どもにも大人にも、平等にやってくるのが別離の悲しみ。それを瞬時に理解し、受け入れることなんて出来ないけれど、気持ちを和らげてくれる方法があるのだと、この絵本は教えてくれます。エルフィーのことがどんなに好きだったのか、どんな時間を過ごしてきたのか。思い返すことができるのも、ぼくの心を強く支えてくれているのかもしれません。
もし、同じような出来事に合った時。それが例えどんなに小さな命であったとしても、大切であることに変わりはありません。一緒にいてどんなに嬉しかったのか、どんなに好きだったのか。子ども達が発する言葉に、静かに耳を傾けてあげてくださいね。
『 ずーっとずっとだいすきだよ』(作・絵: ハンス・ウィルヘルム 訳: 久山 太市 評論社)
大好きなあの子のことがずっと忘れられない。だって、私にとっては、今でもあの子が一番で、あの子のかわりはいないんですもの。でも、今目の前にいるこの子は……。一緒にいるうちに、だんだんと男の子の心に変化が訪れて。もし、我が子が新しい一歩を踏み出そうとしていたら、そっと背中を後押ししてあげてくださいね。
『とびっきりのともだち』(文: エイミー・へスト 絵: エイミー・ベイツ 訳: 落合 恵子 BL出版)
命が終わると、空から飛んできた、その気持ち良さそうな船に乗り込み。ふわふわの雲の上で好きなことをして過ごし、楽しかった事やあなたのことを思い出しているのです。そして、やがてまた赤ちゃんになって旅立ちの時を迎え……。「死」と「再生」を描いたこの絵本、小さな子どもたちにだって、この壮大な物語の感動が伝わるのではないでしょうか。
『いのちのふね』(作: 鈴木 まもる 講談社)
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永遠の別れである「死」をなかなか受け止めることはむずかしいもの。
でも大好きだった想いや想い出は消えません。会いたいな、寂しいな、大好きだったよ・・・絵本を通じて、そんな気持ちを親子で通わせられるといいですね。
「絵本ナビ」編集長 磯崎園子
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアでも「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)