おやこのくふう『「非認知能力って?」どこよりもわかりやすく解説!』 などでもおなじみの教育方法学の専門家・中山芳一先生の新連載がスタートします。
今回の連載テーマは親としての「子育ての軸」。
「子どもを育てる上でぶれない信念をもっていますか?」と聞かれて「はい」と即答できる親は少ないのではないでしょうか。
明確にすることで子育てにもっと自信がもてるという「子育て軸」。先生といっしょに考えていきましょう!
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みなさんは性格診断をされたことはありますか?これまでも、動物や血液型をモチーフにした性格診断などがありましたよね。
それでは、「親」としての子育て診断みたいなものはどうでしょう?先ほどの性格診断と比べると、あまり身近なものではないような気がします。私たちの性格をタイプで分けるのが性格診断なら、私たちの子育てをタイプで分けるのが子育て診断になります。
連載初回は、私が作成した「子育て診断」をご紹介したいと思います。
世の中にはいろんな親がいます。もちろん、いろんな親がいてOKです。
わが子がどんなヤンチャをしていても、聖母様のようにあたたかく穏やかに見守る親もいるかもしれません。逆に、わが子がちょっとでも反抗的なことをしたらちゃぶ台ひっくり返して…といった一徹な親もいるかもしれません(いまとなっては児童虐待になってしまいますが…)。
この二人はさすがに極端すぎますが、このほかにも、いろんなタイプの親がいるでしょう。
さて、ここでちょっとやってみましょう!
みなさんなら、次のような3つの場面でわが子にどのようにかかわりますか?
最も近いと思われるものを選んでみてください。ちなみに、問いの下に"親が子どもに乗り越えてほしいと思う課題"を入れています。
課題:できれば、すぐに積み木をやめるのではなく続けられるようになってほしい
A:一度始めた遊びを続けさせたいと、積み木を続けることをうながす
B:積み木の面白さを伝えたいと、一緒に積み木をやろうと誘う
C:積み木をやめることはこの子の自由だけど、積み木の片付けはさせる
D:子どもが自分でやめると決めたのだから、そのままやめるのを見守る
課題:できれば、嫌いなトマトを少しでもいいから食べられるようになってほしい
A:好き嫌いをなくすためにも、トマトを少しでも食べるようにうながす
B:「トマト、美味しいよ」と言いながら、そのトマトを美味しそうに食べてみせる
C:トマトを食べなくてもよいけど、ほかのものは食べるようにうながす
D:いま、トマトを無理やり食べさせなくてもよいから「食べなくていいよ」と言う
課題:できれば、必要のないお菓子を買うことを我慢できるようになってほしい
A:そのお菓子を買う必要がないことを伝えて、聞き分けのよさをうながす
B:「ほかにもいいものがあるよ」と言って、夕ご飯関係の食べ物に注意を向ける
C:お菓子は買うけど、夕ご飯前にお菓子を食べないようにしっかり念を押す
D:お菓子を欲しいという気持ちを大切にしたいため、無条件で買ってあげる
いかがでしたか? もちろんほかの選択肢もあるかもしれませんが、ここはあえて四択でお願いします。
ちなみに、このA、B、C、Dの選択肢ですが、実はそれぞれ子育てのタイプになっているんです。この4つのタイプは、図のような二本の「子育て軸」によって分類したことからできたものです。
この「4つの子育てタイプ」について解説していきましょう。
子どもが課題を乗り越えられるようにしっかり指導しながら、子どもの成長につなげられるように意図してかかわるタイプ。
子どもが課題を乗り越えられるようなきっかけをつくりながら、子どもの成長につながることを期待してかかわるタイプ。
子どもの課題より子どもの意志を尊重するが、課題以外にも押さえておく必要のあることは押さえながらかかわるタイプ。
子どもの課題より子どもの意志を尊重して、できるだけ子どもの思いに寄り添いながら受容的にかかわるタイプ。
ちなみに私はすべて「B」を選びました。
子どもに乗り越えてほしい課題は優先するのですが、私から子どもをぐいぐい引っ張るのではなく、一緒にやりながらきっかけを提供するタイプの親なんでしょうね。よく自覚しています。
もちろん私のようにすべて同じ選択をされる方だけでなく、①はDで②はAで…という方もいらっしゃることでしょう。それもアリですね。 遊びの場面では子どもの意志を全面的に優先できるけど、食事の場面では子どもの課題を優先したいというように、場面や状況によって選択が違うこともあるでしょう。
また、A~Dのどのタイプが「よい」か「悪い」かというものでもありません。大切なのは親として自分はどういう判断(子どもの課題?子どもの意志?)をして、どういうかかわり方(タテ的?ヨコ的?)をしやすいのかをわかっておくことなのです。
たしかに、子育てに正解はありません。
しかし、先ほどの3つの場面のように、私たちは、いろんな場面で親としての判断やかかわりを求められます。そんなとき、自分自身の傾向がわかっていれば、どうしてその判断やかかわりをしたのか、理由付けをしやすくなることでしょう。
それができれば、これまで以上に自信を持って子育てすることも、判断やかかわりを修正することも可能になります。そして、ここで最大のポイントになるのは、先ほどの図にあった「子育て軸」なんです。この「子育て軸」とは一体何なのでしょう?
次回から、みなさんとさらに学びを深めていきましょう。
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。
改めて確認してみましょう。みなさんは、①~③の各問いにどれを選びましたか?