だんだんと親と過ごす時間が減っていったり、自立していく幼児期。ふとした隙に子どもが犯罪に巻き込まれてしまうことも…。残念ながら、子どもを狙った事件は後を絶ちません。
いざ、わが子が不審者に声をかけられたり、実際に被害に遭ってしまったとき、どのように対処すればいいのでしょうか?子ども・親それぞれの対応方法をNPO法人日本こどもの安全教育総合研究所理事長の宮田美恵子さんに伺いました。
子どもの事件事故を防ぐ心構えや、子どもに教えておきたいサバイバル術とともにぜひおやこで話し合ってみてくださいね。
子どもが誰かに声をかけられたとき、幼児では善意と悪意の判断はつきません。 不審者はよくポスターなどで見る黒いサングラスに帽子をかぶって…ではなく普通の格好をして、やさしい声かけをして近づきます。「犬は好き?おじさん犬飼っているから見に来る?」と言われても、怖いことを言われているわけではないですから、相手が悪い人間だとわからないのです。
それでも子どもに「誰かに声をかけられたらすぐ逃げなさい」「無視しなさい」と教えるのも正しいとは言えません。人にやさしく接し、やさしくすると周囲からもやさしくされるという人間性を育んでいくことも大事なことだからです。
ここで予防となるのが、親との約束です。
「ここから移動するのはだめ。公園の中で遊ぼうね」「知っている人だとしても車に乗るのは絶対だめだよ」と遊ぶ前に約束をしましょう。そして誰かにどこかに行こうと声をかけられても「いやだ」と言えるように練習しましょう。
いきなり言われても約束を守るのは難しいこと。普段の生活の中でも社会ルールや交通ルールなどを守る習慣を身につけるようにしたいものです。
近年は男女ともに性犯罪やトラブルに巻き込まれる幼児のニュースを目にすることもあります
性犯罪や性教育はお子さんにどのように説明するのかを迷う親御さんも多いかもしれません。
とくに3~4歳くらいの低年齢の子どもは、性的なことがわかりませんし、5~6歳でも理解は難しいので、子どもに教育していない家庭も多いでしょう。
しかしそんな子どもの無知を悪用する人間がいるのも事実です。
人気のない場所に呼び出されて「おうちの人に言っちゃだめだよ」「内緒にしててね」と言われて、親にその出来事を話すことができない子が多いのです。
性的なことを理解していない幼児に自己防衛することを教える場合は、「距離感」を物差しにしてください。
人と人とはそれぞれの関係性において、ちょうどいい距離があります。
「ぴったり距離」(0~45cm)…家族など親密な人と、手をつなぐくらいの距離。
「ゆったり距離」(45~75㎝)…お友達や親しい人と、相手に手が届くくらいの距離。
「きっちり距離」(1m20cmくらい)…初対面の人と話すとき、相手に手が届かないくらいの距離。
たとえば、初対面の人や親しくない人と「ゆったり距離」まで近づくことはしないでしょう。それにもかかわらず近づいてくる人には「おかしいな」と違和感を感じます。
この物差しを「家族みたいにくっつくことは、他の人とはしないよ」「仲良しじゃない人とハグするのはおかしいよね?」と子どもに教えて、普段の生活から意識させておくことが大切です。
そしてもう一つ重要なのが「水着で隠れる部分は人には見せない、触らせない」ということ。 女の子でも男の子でも、水着で隠れる部分は大事なところです。 「あなたしか触ってはいけないよ」「そこを触ったり見ようとするのはいけないよ」「そういう人がいたらすぐ逃げて」と教えましょう。
子どもに教えるときはシンプルに、守ってほしい場所で具体的に伝えます。 「触られたらやめてって言っていいよ」「やめてと言ってやめてくれないのはおかしいよ」と教えてあげてください。
どれほど対策をして、親も子どもも気をつけていても、事件や事故は実際に起こってしまっているのが現状です。それらが起こってしまった場合、親は子どもに対してどのように接すればいいでしょうか
子どもが事件や事故に巻き込まれたとき、大切なのは「怒ったりがっかりしないこと」。
子どもは親のそんな反応を見たとき、「親を悲しませてしまった」と自分を責めてしまいます。事故は子ども側に原因がある場合もありますが、事件では悪意のある人間に100%非があります。
そんなとき子どもには「あなたは約束を守ったよね」「よく話をしてくれたね」とできたところは認めてあげてください。そうでないと、「もう公園に行きたくない」などその場所を避けるようになってしまいますから。その後は「パパもママもあなたのことをもっと考えるからね」と愛情を伝えたうえで、また新たに約束をし直してみるといいでしょう。
***
本来は幼児期は子ども一人で行動することがないようにしたいという宮田さん。ただ、ほんのちょっとの隙をついて、事件や事故は起きてしまうもの。いざというとき、子ども自身が身を守る「サバイバル術」や約束事を身につけておきたいですね。
『うちの子、安全だいじょうぶ? 新しい防犯教育』(新読書社)
発行:新読書社
定価:単行本(ソフトカバー)1,650円(税込)
NPO法人日本こどもの安全教育総合研究所理事長 宮田美恵子
安全教育学などを専門とし、大学での講義のほか児童・生徒のための安全体験学習プログラムの推進などの生涯学習活動支援にも尽力する。近著に『うちの子、安全だいじょうぶ? 新しい防犯教育』(新読書社)。新聞やテレビ・ラジオ等でも安全教育などについて解説。
ライター 松永あつこ
目が合うと即座に変顔をしてくれる5歳と、ごはんは口に運んでもらう主義の3歳の女の子のママ。主に育児・教育系メディアの編集&ライターをしています。趣味はファミキャン!将来の夢は家族でオーロラを見に行くことです。
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事故に巻き込まれることと同様に親が常に警戒することは、子どもが不審者に何かされないかということです