子どもの安全や健康を守るため、また人とのトラブルを回避するためなど、子どもには守ってほしい約束やルールがたくさんありますよね。でも、わがままを言ったり長続きしなかったりと一筋縄ではいかないもの……。
子どもに約束を守ってもらうために親が知っておきたいポイントについて、家庭教育アドバイザーのTERUさんに教えてもらいました。
※この記事では、約束とルールを総じて「約束」と表記しています。約束とルールに共通する「決めたことを守れるようになる」ことを目的にした考え方や対応方法を紹介していきます。
子どもが約束を守れない理由の一つに、そもそも約束を理解できていない、または理解はできていても心に響いていないことが考えられます。
約束がうまく伝わっていないかも…と思ったときは、“伝え方”を変えてみましょう。約束を理解し実際に守ってもらうために、行動・理由・想いの3点セットで伝えるのがポイントです。
まず「行動」ですが、たとえば子どもと「ごはんをちゃんと食べたらお菓子を食べてもいい」という約束をしたとしましょう。 この「ごはんを“ちゃんと食べる”」はあいまいな表現で、なかには理解できない子もいます。 これを「残さず食べたら」と言い換えるだけで、基準が具体的になり子どもは約束を守りやすくなります。
約束の基準があいまいだと、子どもは守ったつもりでも親から見れば守れていないという状況が発生する可能性がありますから、行動を具体的にイメージできる表現で伝えるのがポイントです。 そのうえで、「ごはんを自分でよそう」、「食べられないと思ったら先に親に伝える」などの方法で自己責任を意識させてもいいですね。
次に「なぜその約束が大切なのか?」と、約束をする理由を伝えます。 たとえば先ほどのようなお菓子を許可する約束であれば、「お菓子には砂糖がたくさん入っていて虫歯になりやすいから」といった理由を、子どもにわかる表現で伝えてあげましょう。 理由がわかると約束の大切さも自然と理解でき、行動に移しやすくなります。
逆に約束の理由が理解できていないと「お母さんに怒られるから約束を守らなければいけない」と約束を罰と結びつけて考えてしまう危険性があります。 大切なのは「この約束は守らなくてはいけない、体に悪いからだ」と、約束を理由や道徳心と結びつけて考えられるようにすることです。
最後の「想い」は、なぜその約束を守ってほしいのかという「親の想い」です。 今回の例でいえば「添加物が多いから体に悪い」という理由にくわえて「お母さん、〇〇くんが病気になってしまうと悲しいの」「お母さん、〇〇ちゃんが大きく成長してくれるの本当に楽しみなんだ」と約束への親の想いを伝えましょう。
子どもは親を悲しませるのが嫌で、親が喜んでくれるのがうれしいものです。 親の想いが子どもの心を動かし、子どもが約束を守る力を強くしてくれます。
ぜひこれらの3つのポイントを押さえた上で伝えてみてくださいね。
約束は理解できているけど守れない場合はどうすればいいのでしょうか
子どもが年中以降の年齢なのであれば、親から約束を伝えるだけでなく子どもと一緒に約束を作ってみるのもおすすめです。
たとえば「テレビは1日1時間以内」と約束したいとしましょう。 この約束について、家族がそろっているときに「テレビの見過ぎは目が悪くなるんだって。だから家族みんなで1日に観る時間を決めたいんだけど、〇〇くんはどうやったらみんながこの約束を守れると思う?」といった感じで子どもに問いかけます。
単に約束を決めさせるのではなく、約束を守るために何をすべきかを考えてもらうのです。 こうして子どもが約束を作る側になることで主体性が生まれ、約束を守る意識が格段に強くなります。
子どもからはいい意見も実現性のない意見も出てくると思いますが、「それもいいね」と子どもが考えたことを受け入れて肯定してあげることも大切です。
大人も子どもも約束をつい忘れてしまうことがあります
約束を作ったら、紙に書くなどして家の中の見えるところに貼っておきましょう。 口約束だけでは忘れてしまいがちですが、少しでも目につく機会があれば守る意識が強くなります。
ただし小学生以降の口達者な子どもは何か注意をすると「約束に書いてないじゃん!」などと反論してくるかもしれません。
そうならないように普段から「守ってほしいことはたくさんあるけれど、特に大事なことをここに貼っておくね」といった声かけをして、貼ってあるものがすべてではないと認識できるようにしておきましょう。
一度守れた約束を継続して守れるようにしたいですよね
子どもが約束を破ると叱るのに守れたときは何も言わない、もしくは反応が薄いといった対応では、子どもの約束に対するモチベーションは上がりません。
約束をしたら、親は約束を守れたタイミングを見逃さないように意識して声かけをしていきましょう。
幼児期の子どもには「すごいね!」と大げさに反応してあげて、小学生以降は「さすがだね」「素晴らしい」のように声のトーンは上げすぎず、言葉に感情を乗せて伝えると子どもに響きやすくておすすめです♪
約束が増えすぎておやことも疲れてしまうなんてこともあります
そもそも約束が多ければいいわけではありません。 親は無意識的に「子どもにこう行動してほしい」という思いがあり、あれもこれもと約束を作りたくなります。
しかし、過度に子どもの行動をコントロールしようとすることは子どものためにはなりません。 本当に必要なことだけ約束して、理想の行動でなくても人に迷惑をかけていないなら許容してあげるのも大切です。
また、ある行動に対して注意されるときとされないときがあると子どもは混乱します。 親が言動に一貫性を持つためにも約束は少なめにして、家族みんなでその約束を徹底して意識していくことが大切です。
やっぱり約束を守れるのは子どもにとって大切なことなんでしょうか
約束を守ってもらうためのポイントをお話してきましたが、なんとしてでも約束を守らせないと!!…と考える必要はありません。
ドイツで行われたある実験で、「2歳から5歳の聞きわけのない子ども100人」を青年になるまで追跡調査したところ、その84%が意志が強く自分で判断ができる大人になっていたという結果があるそうです。つまり、約束を守れずわがままな子は、自分の考えを持っていて主張する力がある子だともいえるわけです。
子どもには生まれ持った気質があります。元々すんなり親の言うことを聞ける子もいればそうでない子もいます。 気質的に自己主張が強いのに、その気質をねじ曲げてまで聞き分けをよくする必要はないと思います。
もう一つ、約束をして我慢させすぎるとその子の頑張る力を失ってしまうという研究もあります。
幼児期から小学校低学年ぐらいの時期は、好きなことにどんどんパワーを使い、そこで得たポジティブな経験が子ども自身を大きく成長させます。 この時期に子どもを約束で縛って我慢させすぎると、我慢するために頑張る力を使い切ってしまいます。
パワーあふれる子どもを育てるのが大変なのは事実ですが、自己主張ができるのも長所、自制心があるのも長所と考えて、そのままでいることのよさにも目を向けてあげるといいかもしれませんね。
■TERUさん本人が解説!『1~12歳 子どもが我慢・約束が守れる17のポイント』
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生活するうえである程度の決まりごとは必要ですが、それが子どもにとって我慢になりすぎるのはよくないとわかりました。
約束を守れない理由は子どもによって違うので、対応もその子に応じていろいろ試しながら考えていくのがよさそうですね。
家庭教育アドバイザー TERU
幼児教育の講師。 1000人以上の子どもたちと関わってきた経験をもとに、0~12歳の保護者向けに知育、育脳、子どもとの接し方など家庭教育情報を発信している。登録者8万人超のYouTubeでは"子どもを成長させる"実践的な子育て動画を配信中。
YouTube:子育て勉強会 TERU channel
Twitter:@TERUkyoiku
Instagram:teru_kyoiku
ライター 西方 香澄
徳島で生まれ育ち、大学進学を機に神戸へ。養護教諭・児童発達支援など教育に従事したのち独学でライティングをはじめる。夫・1歳になった娘とクリエイティブな毎日をつくるため、現在デザインも勉強中。
そもそも約束が子どもにきちんと伝わっていないかも?と思うことがあります