前回は子どもの心に響く約束の伝え方や守れるようになるための工夫を家庭教育アドバイザーのTERUさんに教えてもらいました。
しかしそれでも守ってくれないときはどうすればいいのでしょうか。
引き続き、子どもに約束を守る意識を持ってもらうために大切な親としての6つの関わり方をTERUさんに教えてもらいました。
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子どもが親の話を聞いてないという場合、そもそも親のほうがふだん子どもの話をきちんと聞いていないことが原因であるときも。
まずはふだん子どもとコミュニケーションをとる中で、親である自分自身が、子どもが伝えたいことを最後まで聞いてあげているかを振り返ってみましょう。
親が子どもの話をきちんと聞くことで信頼関係が生まれ、子どもも約束も聞いて守れるようになるかもしれませんよ。
約束を理解していてもなかなか行動にならないことがあります
子どもの行動に対して「それはいいこと?悪いこと?」と親が聞くと、子どもは「悪いこと」とわかっているのに、やってしまっていることはありませんか?
約束やルール、道徳として伝えたいことは、守れなくてもすぐに叱るのではなく教える姿勢を大事にしましょう。
子どもは未熟ですから、1回教えてもらっただけではすぐにできるようにはなりません。知識として得たものを行動に落とし込んで習慣にするためには繰り返しが必要となります
何か行動習慣を身につけるなら、10回〜100回は繰り返し教えるぐらいのつもりでいても大げさなことではありません。
ただし、親としては何度も同じことを言っていると「さっきも言ったでしょ!」と叱ってしまうこともあるでしょう。
ですが、叱られると子どもは「今何をすべきか、なぜすべきか」というロジックを理解するよりも先に恐怖を覚え、間違ったメッセージが伝わってしまいます。
正しいメッセージを伝えて子どもの脳に積み重ねていくためには、「普通に教える」、そして「それを繰り返す」ことが大切なのです。
では、教えるときの伝え方のコツはあるのでしょうか
たとえば「人を叩いてはいけない」と伝えたいとき、「人を叩いてはいけないよ、枕は叩いてもいいよ」と何か一つしてもいい行動を一緒に伝えてあげるとよいでしょう。
人は禁止されるよりも許可されるほうが言葉を強く認識して行動に移しやすいものです。
「〇〇はしてもいい」という言葉が一つあると、それに引っ張られてやめてほしい行動も改善される可能性が高くなります。
これは幼児期に特に効果のある方法で、具体的に行動を置き換えなくても伝えたいことをそのまま許可の言葉で伝えるだけで効果があります。
たとえば走ってはいけない場所で走っている子に対して「走らない!」「走っちゃダメ!」と言うと、頭の中が「走る」という言葉でいっぱいになり言葉に引っ張られて走ってしまうことがあります。
これを「ここでは人の迷惑になるから歩こうね」と伝えると、「歩いていい」という許可の言葉を子どもはすんなり受け入れて行動に移すことができるのです。
約束を守らなかったとき親はどう対応すればいいのでしょうか
たとえば「食事中は椅子に座って食べる」と約束していたとします。にもかかわらず食事中に立ち上がって何かをこぼしてしまった場合、その後始末は自分でやらせましょう。
片付けを「イヤ!」と言うようであれば、少し時間を置いてみてください。
親が子どもの行動を待ってあげるとそのうち「片付ける」と言い出すかもしれません。
ゆっくり待っていられないのが親として正直なところだと思いますが、自分の行動の責任を自分で取る経験は、子どもの約束を守る意識を強くしてくれます。
これは約束に限らずあらゆる場面において、自立した責任感のある子に育てるために重要な関わり方なのです。
子どもがあまりにも約束を守らないと、罰が必要なこともあるかと思います
罰を与える場合は、なるべく子どもの約束と関係のある罰を与えるようにしてください。 たとえば「食事中に遊んではいけない」と約束していた子どもがフォークで遊び続けてしまい、何度教えても守れないときに与える罰は「フォークで食べるはずだったデザートを取り上げる」のが適切です。
このとき行動と因果関係のない「週末のお出かけを取りやめる」のような罰を与えても、子どもには複雑すぎて行動の改善に繋がりにくくなってしまいます。
また、罰に関して注意しておきたいのが体罰についてです。
2014年に33の家庭に対して行われた調査では、15の家族で子どもの悪い行動に対してなんらかの体罰が行われていました。しかしその10分後、ほとんどの子どもが同じ行動を繰り返していたのです。
対象が少ないため絶対とはいえませんが、体罰によるしつけの効果は薄いと考えることができます。
またアメリカで行われた調査では、3歳のときに月2回以上体罰を受けていた子どもはそうでない子どもに比べて5歳になったときの攻撃性が1.4倍も高かったそうです。
体罰を受けた子どもは人との関わりの中で暴力で自己表現をする傾向が強く、いじめの加害者や被害者になりやすいという結果も出ています。
さらに体罰は脳を萎縮させるという研究結果もあり、やはり罰を与えるならば体罰以外を選ぶ方が賢明といえるでしょう。
約束を何度伝えても子どもの心に響いてないようで…
何度伝えても子どもの心に響いてないと感じたときには、守ってほしいことに関係する絵本を読みきかせてあげるのもおすすめです。
たとえば「嘘をつかない」と約束したい場合に読みたいのが『こぎつねキッコ』という絵本。
こぎつねのキッコのついた嘘が心に重くのしかかってくるお話で、言葉だけで伝えるよりも約束の大切さが伝わりやすくなりますよ。幼児期の子どもには特に効果がある方法なので、絵本の力を借りてみてもいいかもしれませんね。
『こぎつねキッコ』 著:松野 正子 発行:童心社 定価:1,320円(税込)
生きていくために大切な行動習慣を身につけてもらうための約束。
約束を守ってもらうためにはやはり親が根気強く子どもと向き合って教える必要があるようです。
ただ毎日となると時間にも気持ちにも余裕がなくなってしまうのもまた事実。余裕のあるときに少しずつ意識していけるといいですね。
家庭教育アドバイザー TERU
幼児教育の講師。 1000人以上の子どもたちと関わってきた経験をもとに、0~12歳の保護者向けに知育、育脳、子どもとの接し方など家庭教育情報を発信している。登録者8万人超のYouTubeでは"子どもを成長させる"実践的な子育て動画を配信中。
YouTube:子育て勉強会 TERU channel
Twitter:@TERUkyoiku
Instagram:teru_kyoiku
ライター 西方 香澄
徳島で生まれ育ち、大学進学を機に神戸へ。養護教諭・児童発達支援など教育に従事したのち独学でライティングをはじめる。夫・1歳になった娘とクリエイティブな毎日をつくるため、現在デザインも勉強中。
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