幼児期から大切にしたい。いま注目の「非認知能力」…ってどんな力?では、「非認知能力とは何か」をわかりやすく説明していただきました。
まずは親が意識を変えることが必要!とのことですが、具体的にどのように子どもに接したらよいのかを教育方法学の専門家であり、非認知能力についての著書を多く手がける中山芳一先生に、今回も伺っていきます。
新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言での自粛期間を経て、多くの親御さんたちから、「何もすることない」と子どもに言われて苦労したという声を本当に多く聞きました。
実はこれ、日本の親子にとって、危険信号だと思っています。
今の子どもたちは恵まれた環境によって、常に与えられる側にいます。そうなると、今あるもので我慢するような機会も、意欲や向上心をもって何かを変えようとする機会も失われてしまいます。
「何もすることない」という発言は、自分でやりたい!楽しい!を見つけられないということです。家の中に何もないことはありません。限られたものの中でも何かはできます。
ちょっとした物で工作やゲームを考えるなど、クリエイティビティは不足や制限の中から産まれるものです。 こういう悩んだり迷ったりしながら考えていけることが、非認知能力なのです。
と、説明している私ですが、じつは自粛期間中にうちの年長の息子も「何もすることがない」と言ったんです…。
これはまずい!と思いました。
親って、昔自分が欲しかったのに手に入らなかった経験があったりすると、つい自分の子どもに与えてしまったりするんですよね。
ちなみに、うちは仮面ライダーのベルトを買いました…(笑)
しかし、容易に与えられたものは、思い入れもないのですぐに飽きてしまうんですね。反対に、自分で生み出した遊びは執着するし、楽しいのです。
photo by fujika_photography
小6の娘は、宿題などを終えたら「小説を書くからパソコン貸して」と小説を書いていました。そうすると、タイピングをもっとうまくなりたいからと、「タイピングソフトが欲しい」と言ってきました。ソフトで練習してうまくなると、小説もまた進みます。
これはまさに、非認知能力が土台となって、認知能力(スキル)が伸びているいい例だなと思いました。
「何もすることがない」と言った息子も、その後、手持ちのおもちゃで見立て遊びなどを始めてホッとしたのですが(笑)。
この話は、自省の念も込めて積極的に発信しています。
親はどうしても、子どもを思う気持ちから「何か価値のあるものをさせなければ!」「何か考えてあげなきゃ」と思ってしまいがち。
子どもを思う親が、子どもの創造・想像の芽を摘まないようにしたいですね。
子どもも大人もそうですが、人が何かをするときには、自分の中から沸き起こった興味・関心から行動する「内発的意欲」と、外から与えられるご褒美目当てで動く「外発的意欲」というものがあります。
外発的意欲は、たとえばお金がもらえるからやる、おいしいものが食べられるから、これをしたら名誉が与えられるからやる…そういったことです。
この2つの意欲、どちらかが非認知能力を伸ばしていくか…もうわかりますよね。
はい、自ら沸き起こった意欲である「内発的意欲」です。
親は子どもの内発的意欲を阻害するような声がけはしてはいけません。
親がやってしまいがちな例として、「これとこれどっちにする?」と選択させることがあげられます。
これは、2つから選択させる「制限」を親がかけていると言えます。
「どっちがいい?」は親の意思が強く、なんなら最初から「あんたこっちにしなさい!」と親が決めてしまっていることも…。
さらにまずいのは「どっちでもいい」と子どもが答えることです。
考えることを放棄し、親に任せてしまっているんですね。
こういうことの積み重ねが、子どもから悩んだり考える経験を子どもから奪っている・親が妨げていると思ってください。
日本ではこういうことを親が言いがちであるという話を、昨年訪問したスウェーデンでしたところ、みなさん大きな衝撃をもって受け止められていました。
スウェーデンで同じようなことをした場合、虐待に当たるとみなさん言うんですよね。
子どもの権利条約の第12条「意見表明権」に抵触するのです。
また、過度な早期教育によって、何かができたときには受け容れられ、何かができなかったときには受け容れられないという経験も、子どもたちにはしてもらいたくありません。
問題に正解したら、褒められ、間違えたら叱責されるなど、あめとムチで能力を習得していくことは、罰やご褒美のために動くという「外発的意欲」となります。
こうした経験をした子どもたちは、外発的意欲が内発的意欲に勝ってしまい、何かをする動機が自分の中に持てなくなってしまうこともあります。
そして、次第に自分より「できる人」にはへつらい、「できない人」には上から目線で見下してしまうという態度をとるようになってしまうのです。
大人が作り出した環境は子どもに大きく影響を与えるので、特に注意してほしいですね。
思いあたる節がたくさんあって不安になってきました…
むずかしく思いましたか? いえいえ、大丈夫ですよ(笑)
堅苦しく考えず、少しずつこれから変えていければいいですよね。
photo by fujika_photography
そして、幼児期に大切にしたいのが、「大人に思いを受け入れてもらえたという経験」なのです。
子どもは生来、自己中心的なものです。まだ、人のことを気にして我慢することはできません。 特に子どもの発達において、3~4歳までは人のことが見えません。自分中心の世界です。
なので私は、「3~4歳までは何をしてもオールOK!」だと思っています。
極端に反社会的なことは除いて、すべて受けとめてあげましょう。
この自己中心的な子どもの意思を、大人が思い切り受け止め、受け入れてもらえる中で、「自分はここに存在していていいんだ」と思えるようになります。
いわゆる自己肯定感(自己受容感)です。
これがなによりも大切なのです。
幼児期の後半、5~6歳ごろからは、周囲にいる他者が見え始め、その他者と繋がるために徐々に折り合いを付けられるようになってきます。
そこからは、少しずつ自分で考えていけるので、すべて無条件でOKではなく、いけないことは注意もして、対話をしていけばよいのです。
非認知能力の中には、他者と協調・協動していく力や自分をコントロールできる力などがあります。
子どもたちは、これらを様々な体験を通じて身につけていきますが、自分で自分を肯定できる深い自己肯定感があれば、より身に着けやすくなります。
「受け入れてもらえた嬉しさや安心感」を知っているからこそ、今度は自分をコントロールし、他者を受け入れる側になれるのです。
つまり、深い自己肯定感は非認知能力の土台となるということですね。
「大人に思いを受け入れてもらえた経験」は、子どものわがままを助長すると考えられがちですが、そうではないのです。
***
大人は与えすぎないこと、そして幼児期に大切なのは、受け止めてあげることでの自己肯定感を育むことということが分かりました。
次は、わが子の非認知能力を高めるために暮らしの中で親が心がけたいこととして、深い自己肯定感を育むための具体的な子どもへの接し方をご紹介します。
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。
ライター 赤司 陽子
大学卒業後、製薬会社での勤務を経て、大手教育関連企業に転職。約10年間幼児教育・小学生教育事業に携わる。その後夫の海外赴任に随行し、アメリカで出産・育児を経験。多様な価値観に触れる。帰国後、フリーのプランナー・エディター・ライターとして活動中。現在、5歳女子・3歳男子の年子育児に奮闘中。
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