わかりにくい「非認知能力」をどこよりもわかりやすく解説したい!と岡山大学の中山芳一先生にご執筆いただいてきた、こちらの連載も今回で最終回。
正解がないからこそ、親は迷い、悩み続ける子育て。
そんな子育てに奮闘するママパパたちへ中山先生からメッセージをお届けします。
この連載もいよいよ今回で最終回となってしまいました。
ここに到るまで、私はみなさんにそんな大したことはお伝えしていません(怒らないでくださいね)。
でも、わが子の非認知能力を伸ばすことなんて、そんな大したことではないんです。
あまり耳慣れない新しい言葉だから、ついつい身構えてしまいがちですが、私が子どものころから小学校の通信簿にも似たような言葉はいくつも書いてありました。
しかし、そんなみなさんに、いかにも非認知能力を特別な力のように見せて、さらには非認知能力だけを切り離して、子どもに身に付けさせるための特別なプログラムを有料で提供しようとするところも増えてきました。
あえて誤解を恐れずに申し上げるなら、非認知能力だけを切り離して身に付けさせるような特別なプログラムは必要ないと私は考えています。
むしろ、テストで点数化できるような認知能力、いわゆる知識や技能なども含めて、これらを身に付けていく過程の中で非認知能力も伸びていくのです。
さらに言えば、日常生活の中でさえ、本人の意識次第で非認知能力を伸ばしていくことはできるでしょう。
これまで紹介してきた心のレンズによる見取りやフィードバックのように、私たち親が、わが子が見せてくれる様々な姿を「当たり前」と思わず「有難い(めったにない)」と思うようにしていけば、親子で価値を共有することなんていくらでもあるはずです。
それを特別なプログラムとしてわざわざ外注する必要はないでしょう。
そして、親たちが「有難い」と思いながらわが子を見取っているうちに、わが子もまた日常における自らの様々な行動を有難いと思えるようになります。こうなったとき、より一層非認知能力を自分で伸ばそうとするようになれるわけです。
いま、ネットワークの進歩に伴って子育てや教育に関する情報は、より身近で、よりたくさん得られるようになりました。だからこそ、意識の高い親ほど何が正解で、何が特別なのかを考えるようになってしまいました。
しかし、子育てや教育は正解がなく、特別でなくてもよいのではないでしょうか。
そのような中で、幼保から小中高、大学に到るまで教育の実践研究をしている者として以下の5つをお願いして、この連載を終えたいと思います。
一つ目は、3・4歳までは無条件で呼びかけに応じてあげてください。
わが子が、何かできたときには応じるどころかかわいがって、できなかったときには応じないどころか無視してというのではいけません。何かができてもできなくても、条件を付けずに、呼びかけられたときには応じてあげてください。
二つ目は、5・6歳以降に何かやってしまったとき、相手に共感することで反省を促してあげてください。
叱り飛ばしてビビらせて反省させてもそのときだけです。相手に共感しようとしない子どもは、大人になってからもヤバいです。
そこで、わが子が"やっちまった"ときには、その相手がどんな気持ちなのかを、絵本の登場人物の気持ちを話すように伝えてあげてください。
三つ目は、小学生になっても、親が勉強させることに縛られてわが子の意欲を削がないようにしてください。
子どもにとって「勉強=しなければならないこと」になってしまえば、私たちの知的活動は「しなければならないこと」になってしまうのです。それは人生の損失です!
そこで…小学生になっても遊びは大事!そして、親がわが子に勉強(特に宿題)をさせようとし過ぎずに、たまには「しなくてもよい」という選択もしてみましょう!
四つ目は、子どもが自立することに価値を持ってください。
自分のことは自分でする、自分で考えて行動する…親は子どもがそうなっていくことに喜びを感じてきたはずなのに、近年はわが子が社会人になっても子離れできていない親さえいます。私とわが子は別人格!子どもの自立はとても価値あることですし、自立できるように育ててきた親は最高に素敵です!
五つ目は、中学生以降になってさらに自立していく中で、親はわが子の環境にだけは注意を向け続けてあげてください。
細かいことは気にしなくても、わが子がどのような環境に身を置いているかは最大の注意事項にしてください。「朱に交われば赤くなる」人は環境の産物ですから、ぜひ足を引っ張り合う連中と共に過ごす環境ではなく、手を引っ張り合える仲間たちと共に過ごす環境へと誘ってあげましょう。
***
ここまでお読みいただきありがとうございました。 2021年1月より中山先生の新しい連載をスタートする予定ですので、お楽しみに!
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。
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