幼児教育コンサルタントのTERUさん解説のもと、子どものやる気を引き出す方法について学ぶシリーズ第3弾。
前回までは子どものやる気を引き出すために親ができる心がけを紹介しました。最後となる今回は、子どものやる気を継続させるためにおやこで取り組みたい日々の工夫を解説します。
子どもでも大人でも、自分で決めたことにはやる気が起きやすく、人にやらされることにはやる気が出ないものです。 子どものやる気を引き出したいなら、自分で選んで自分で決めた感を演出してあげるといいですよ。
簡単なのは、本人が「やりたい!」と言ったことをやらせることです。勉強であれ習い事であれ、どれぐらい持続するかはわかりませんが最低限のやる気は発揮してくれるでしょう。
難しいのは親が何かをやらせたいときですよね。「これやりなさい」とか「これやろうね」と言うとやらされた感が出てしまいますので、選択肢を作り子ども自身に選ばせるように意識してみましょう。
たとえば
「今日の宿題は〇〇と△△があるけど、〇〇くんはどっちからやったら効率よくできると思う?」
「今からお出かけするけど、お片付けとお着替えのどっちを先にやったら早くできるかな?」
…といった感じで選択肢を作って選ばせると、子どもに主体性が生まれます。このとき子どもを頼るような聞き方をするのがポイントです。
子どもに相談しているような伝え方ができるとモチベーションにつながりやすく、ただやらされるよりも格段にやる気を見せてくれますよ。
これは勉強に集中して取り組んでほしい、ピアノの練習を頑張ってほしいなど、今目の前のことにやる気を出してほしいときの方法です。 こういったときには、子どもが過去に頑張れたとき・成功したときの理由を考えさせましょう。
たとえば勉強を始める前に「この前は1時間も集中して頑張れたよね!あのときはなんで頑張れたのかな?」のように子どもに質問してみてください。こういった投げかけは行動心理学の実験でも大きな効果が期待できるといわれています。 質問に対する子どもの答えはなんでもよく、成功した理由を子どもなりに考えさせることが大切なんです。
それから、できない理由を考えさせる言葉も減らしていきましょう。「なんでできないの?」「何度やったらできるようになるの!」といった質問は、子どもを問い詰めてしまうか子どもの頭の中でできない言い訳を生むだけです。 失敗にフォーカスするのではなく、「どうしてできたの?」と過去の成功にフォーカスする言葉を使っていきましょう。
近年の研究では、「前に進んでいる感」が人のやる気を大きく左右することがわかっています。自分が日々取り組んでいることに関して1日1日成長を感じたり、小さくても明確に成果が出ていると感じたり、目標に向かって一歩でも進んでいると感じたりすることがやる気に直結しているのです。
この前進している感覚を子どもに感じてもらうためには、子どもの【成長】【進捗・成果】【工夫】を見える化してあげるのがいいでしょう。これら3つには次のようなことが当てはまります。
このうち努力の見える化ともいえる【工夫】の見える化が重要なポイントです。 ほかの2つが結果にフォーカスしているのに対し、【工夫】は過程にフォーカスしています。 できたかできなかったか、成長したかしなかったかだけでなく、できるため・成長するために何をしたのかを見える化するのが大切なのです。 これにより前進している感覚を得ることができれば、子どものやる気はぐんぐん増していきますよ。
【成長】【進捗・成果】【工夫】の見える化には、カレンダーや手帳を活用するのがおすすめ。もちろん同じようにできれば他の方法でも構いません。 今回は一例として「勉強のやる気を出させたい」場合の見える化の方法を紹介するので参考にしてみてください。
まずは書くスペースが広いカレンダーか手帳を買いに行きましょう。カレンダーは壁に貼っておけるので視覚的に意識しやすく、手帳は持ち歩けてどこでも活用できるメリットがあります。それから、購入の際は必ず子どもに選ばせるようにしてください。自分で選んで買ったものは特別感が出るため継続しやすくなりますよ。
そしてさらに重要なのが、親も一緒にやることです。親も自分のカレンダーや手帳を買い、自分の目標に向かって活用しましょう。親も一緒に取り組んでくれると、子どもは「なんで自分だけやるの?」と思わずスッと受け入れて前向きに取り組むことができます。
カレンダーか手帳の準備ができたら、次のステップで勉強に取り組んでみましょう。
子どもが勉強を始める前に、おやこで「作戦会議」の時間を設けましょう。作戦会議では次のことを話します。
① 今日は何を終わらせることを目標にするか(【進捗・成果】の見える化)
今日取り組むべきことを整理し、取り組む順番を決めてその順番通りにカレンダーや手帳に書き出します。
② 効率よく進めるための作戦(【工夫】の見える化)
どうやったら効率よく進められるか、どうやったら多く暗記できるかなど、取り組む内容に応じて作戦を考えます。たくさん考えなくても、一つでも構いません。また前日うまくいった工夫を継続してもOKです。考えた作戦をカレンダー・手帳に書き出しましょう。
【例:漢字】最初に5回読んでから書き始める、指でのなぞり書きで反復練習を増やす、歩きながら覚えてみる
勉強を始め、子どもは終わった項目にチェックをしていきます。全ての項目が終わった、もしくはタイムアップになったら終了です。
勉強のあとにもう一度作戦会議をします。このとき、書いた項目を全て終えられていなくても決して叱ってはいけません。親が見て感じた子どもの頑張りや成長をフィードバックしてあげましょう。
「集中していた」「書くスピードが早くなってきた」「工夫を一生懸命実行しようとしていた」など感じたことを伝え、それをカレンダーや手帳に一言でいいので書いてあげてください。(【成長】の見える化)
工夫の成果が出たかどうか、どう感じたかなどを子どもに聞き、子どもなりの回答が返ってくればOKです。
このようにやるべきことを管理して工夫していくことはとても大切ですが、小学生ぐらいの子どもにとっては少々ハードな取り組みです。そのため、継続のために多少のごほうびはあってもいいと考えます。本来は「ほめてもらえる」といった精神的なごほうびが依存しづらいのですが、少しインパクトが弱いので、物理的なごほうびでも程よく与えるのであれば構いません。お金以外のものでランダム性があるとごほうびのモチベーション効果が継続しやすくなりますよ。
これを踏まえて私がおすすめするごほうびは「くじ引き」です。くじ引きの中身はお菓子や簡易なおもちゃ、好きな本を一冊買ってもらえる券、5枚集めれば好きなものを買える券、夕食をリクエストできる券、お父さんの一発ギャグ券など。物だけでなく無形のものや精神的なものを混ぜればランダム性が増して依存しにくくなるので、たくさん考えてくじに入れてあげてください。
くじを引く頻度は、2日連続で全ての取り組むべきことを終えられたら1回引けるぐらいがいいでしょう。心理学の研究から短いスパンで達成を味わえることがやる気の持続につながるとされているので、1週間や1ヶ月に1回といった長いスパンはおすすめしません。もちろん手帳やカレンダーだけでモチベーション高く取り組める場合はあえてごほうびを取り入れる必要はありませんから、継続できなくなったときの必殺技と思っておいてください。
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子どものやる気を引き出し継続させるためには、子ども自身が主体性を持って取り組むことが大切です。そして日々の頑張りで少しでも前進していると感じられたら、やる気はもっと継続します。
シリーズを通してさまざまな方法を紹介しましたが、親も子も「これが絶対」と苦しむことがあってはいけません。できることから少しずつ試して自分に合った方法を見つけ、コツコツと取り組んでいければ、いずれその努力が習慣になるのではないかと思います。
家庭教育アドバイザー TERU
幼児教育の講師。 1000人以上の子どもたちと関わってきた経験をもとに、0~12歳の保護者向けに知育、育脳、子どもとの接し方など家庭教育情報を発信している。登録者8万人超のYouTubeでは"子どもを成長させる"実践的な子育て動画を配信中。
YouTube:子育て勉強会 TERU channel
Twitter:@TERUkyoiku
Instagram:teru_kyoiku
ライター 西方 香澄
徳島で生まれ育ち、大学進学を機に神戸へ。養護教諭・児童発達支援など教育に従事したのち独学でライティングをはじめる。夫・1歳になった娘とクリエイティブな毎日をつくるため、現在デザインも勉強中。
子どもが自分からやる気を出すためにはどんな工夫が必要でしょうか?