連載
【保育士が教える】園とのコミュニケーションのコツ

園の先生から聞かれてドキッ「おうちではどうですか?」に隠された理由。わが家とわが子に問題アリ?

園の先生から聞かれてドキッ「おうちではどうですか?」に隠された理由。わが家とわが子に問題アリ?
園の先生から聞かれる「おうちではどうですか?」という言葉。その裏にはどんな思いや意図があるのでしょうか?元・保育士の炭本まみさんが解説します。
目次

保育園生活、子どもは楽しんでいるのかな? と、子どもにどんなことをして遊んだか聞いてみると「お散歩に行ったよ」「〇〇ちゃんとおままごとしたの」など、少しずつ話してくれるようになると安心しますよね。

けれどある日、担任の先生から「〇〇ちゃんはおうちでの様子はどんな感じですか?」と聞かれることがあるかもしれません。

「え?うちの子、何かしたの?」「何か問題があるのかな?」「そもそもおうちでの様子って言われてもなんて答えたらいいの??」と戸惑うママ・パパもいるでしょう。
じつは先生がおうちでのお子さんの様子を聞きたいのには、理由があるのです。 その理由や、先生との信頼関係を築きながら子どもの話しを深められる方法を、保育士の炭本まみが解説します。

「おうちではどうですか?」は、伝えたいことがあるから

先生が家庭でのお子さんの様子を教えてほしそうに「おうちではどうですか?」と聞いてくるのには、理由があります。

それは、園生活の中でお子さんの行動に「疑問」や「直してほしいこと」があり、それを伝えながら家庭での様子も聞いてみたいからなのです。

例えば「友達や保育士とのコミュニケーションの仕方」「食事の仕方」「お昼寝をしない」「生活時間の節目や切り替えの行動で遅れを取る」などがあげられるでしょう。

特に食事や着替え、排泄やお昼寝、片付け、一斉指導の声かけに対する注意の向け方など、子ども自身の発達に関することや年齢なりに到達しておきたい自立面・生活面などについては、早いうちに援助し、自立に向けた働きかけをすることが大切です。

家庭で、保護者が時間がないあまりに手伝いすぎていないか、先取りしてはいないか、食べたがるものだけ食べさせてはいないか。トイレは促されなくても自分で行けるか、声を掛けられたり指示を受けた時に、注意を向けられるか、注意を向けられていないとき、保護者が聞くように促しているかなど、細かな点を聞きたいと考えています。

それは決して家庭や保護者、パパやママの対応を責めているのではなく、様子を聞いてプロの保育士が子どもにより良き対応を家庭と一緒に見出すために

「おうちではどうですか?」

と聞くことが多いです。
ちょっと驚いたり、心配になってしまうのですが大丈夫。きっと「何かありましたか?」と聞けば「実は…」とお話ししてくれますよ!

保育士と信頼関係を深める会話とは?

先生が感じているお子さんの課題によって、パパやママの返答も変わってくることでしょう。 じつは先生の中では「こうしてほしい」「子どもにこういった援助をしてほしい」「できれば保育園と一緒の働きかけを家庭でもしてほしい」という答えが出ていることが多いものです。
先生が「おうちではどうですか?」と声をかけることも多い課題をいくつか例をあげてみましょう。

「お友だちとのケンカやトラブルが多いんです」

友だちとすぐケンカになってしまう、言葉よりも先に手が出てしまう、何もしていない友だちに急に叩く・押すなどの行動をして泣かせてしまう……。そんな様子を聞くとパパやママもどうしていいのかわからなくなりますよね。

こういったケースの場合、コミュニケーションの取り方が未熟であり、一見乱暴に見えますが、じつは子ども自身が友だちとの関わりをどうして良いのかわからずにいることが多々あります。

保育園ではその都度子ども同士の仲立ちに入り、「痛かったね」「何かわけがあったの?教えて」と両方の言い分を聞きながら、両方の気持ちを代弁します。

そして、ちょっと乱暴な関わりをしてしまった子どもには、
「叩くと痛いから、遊びたい気持ちの時はどんな方法がいいか一緒に考えよう」
「お友達を叩かないいで、名前を呼んであげたらいいよ」
「どうしていいかわからない時は先生を呼んでね」
など、子どもが実は困っている気持ちを汲んで言葉で代弁してあげます。

すぐに変化はありませんが、ケンカせず気持ちよく遊んだ方が楽しいということが理解できてくるので、トラブルは減ってくるでしょう。
そこで怒ったり叱り飛ばしてしまったり「なぜそんなことをするの?」と責めると、一向に改善しません。

子どもはまだ自分の気持ち、相手の気持ち、人との関わり方、遊びたい気持ちの表現方法が未熟です。その成長は、個人差があるので1歳・3歳・5歳であってもまだまだ援助が必要な子どももいるのです。

家庭でも、先生からこのようなトラブルについての報告や連絡があった際は、子どもを怒ってしまうことなく、子どもの気持ちに寄り添ったり気持ちを代弁したり、良い方法を一緒に考えるなど、穏やかに成長を助けてあげたいものですね。

そして先生には保育園でどのような対応をしてくださっているのか、家庭でも同じようにしていきたいので教えてほしいと、聞いてみましょう。気持ちよく教えてくれるはずです。

「行動が遅くて、促さないとできないんです」

お散歩に出かけるときに、3歳児クラスくらいになると、自分で身支度をし散歩に行く準備をします。こうした活動の節目では、さまざまな行動が必要になります。例えば、お散歩に行く前には、

  • 帽子をかぶる
  • 上着を着る
  • マスクが必要であればマスクをする
  • 外靴を持って玄関に行く
  • 靴を履き外へ出てお友達と手をつなぐ

といった行動が想像できますよね。

ところが、ロッカーに行って上着を着ようとしたときに廊下の掲示物に気を取られ見入ってしまい行動が遅くなる、外靴を持とうとしたらみんなの上靴が気になってしまうなど、何かに気を取られたり、周囲の動きを見て察し、行動をすることが苦手な子もいます。

保育園では、みんなと一緒に行動ができるよう保育士が促したり、声をかけて遅れを取らないように気を付けていますが、家庭だとわが子のペースに合わせて行動することが多いため、切り替えの遅さに気づかないことがほとんどです。

遅れを取ってしまうお子さんの姿は、様々な要因が考えられます。
例えば、忙しさや時間のなさに追われ家庭ではほとんどパパやママが支度をしてあげている場合、子どもの意思をこちらが先取りしてしまっている場合、発達の遅れがある場合などです。

保育園の先生が子どもの行動の遅れに関して、どのように捉えているのか、またどのように関わると子どもに効果があったかなどを聞き、家庭でも実践してみましょう。

小学校へ入学するまでに、自主的に周囲の動きを見て動けるようになっていると、子ども自身の小学校生活が各段にラクに、楽しくなるはず。その日を一つの目安に、保育園と一緒に取り組んでみましょう。

「好き嫌いが多い・量を食べられない・食事のすすみが遅い」

食事に関して先生からの「おうちではどうですか?」これもよくある話しかけですね。 給食は配膳されて運ばれてくる園と、先生が配膳する園があるかもしれません。

園では食欲の有無に関わらず同じ量が配られることが多いでしょう。
苦手な食材や調理方法のメニューがあったり、食べた経験のないメニューがあったりと、給食に慣れるまで時間のかかるお子さんもいます。

保育園での対応としては、子どもに食べられそうな量を聞き、お箸をつける前に減らしたり、どうしても食べられないメニューは一口だけ経験のために食べさせて終わりにしたりします。
食事の進みが遅い子どもには、先生がそばにつき、声を掛けながら一緒に食べます。

みんなで食事を食べるということに、慣れていない子もいて、緊張感から食べられなかったり、食欲が沸かなかったりすることもあるでしょう。

「おうちで気を付けることはありますか?何か良い方法があったら教えてください」と、先生にぜひ聞いてみて下さい。

例えば、

  • 食事に集中できるようテレビは消す
  • 子どもの好きなもののばかりのメニューにしない
  • 苦手な食材も少しずつ取り入れたり調理方法を変えてみる
  • 食べられたら大いにほめる
  • 食事の時間をあらかじめ決め、時計に印をつけてそれまでに食べられるようにしようなど、可視化して目指す
  • おやつやジュースをたくさん与えていないか、朝ごはんの時間が遅くないか食生活の見直し
少し抽象的かもしれませんし、一人ひとりの状況によっては当てはまらないこともあります。仕事が終わって疲れた体で子どもの相手をしながら夕食を作るのは、大変なことでしょう。筆者も経験があるので、本当によくわかります。

時間や体力、気持ちに余裕がある時だけで良いので、少しだけ意識するとちょっとずつ子どもの様子も変わるかもしれません。

***

先生からの「おうちではどうですか?」この質問の意味について、解説しました。
ちょっとドキッとする質問で、子どもの様子が頭の中をぐるぐると巡るかもしれません。

でも保育士はパパやママを責めるために聞いているのではなく、保育園だけの姿なのか、おうちでも困っていることは無いか、そしてできれば同じ対応をしながら一緒に子育てをしていこう、子どもの自立を目指そうという「思い」が込められているんです。

先生から「おうちではどうですか?」という言葉は、先生とお子さんのことについて話すチャンスと考え、普段どうしたらよいか迷っていることや、悩んでいることもはなしてみてはいかがでしょうか。きっと先生も喜んで聞いてくれるはずです。

わたしだったら、お子さんのことを教えてもらえるのはとてもうれしく、信頼していただいているのかな?と感じ、さらにそのお子さんをよく観察し、たくさん関わろうと考えます。

ぜひ遠慮なく先生とたくさんお話ししてみて下さいね!

line
執筆者

炭本まみ

保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。

炭本まみさんの記事一覧をみる
連載
不定期 更新

【保育士が教える】園とのコミュニケーションのコツ

おすすめ記事

「子育てのヒント」人気ランキング

うちの子の年齢別情報

おやこの毎日に
役立つ情報をお届けします

facebook instagram