これまで1歳半検診や3歳児検診では特に問題を指摘されず保育園・幼稚園に入園したのに、担任の先生から「発達相談へ行ってみませんか?」と声をかけられた…。ママやパパにとって目の前のわが子は何も問題ないのになぜ?と驚かれるかもしれません。
または、少し育てにくい、ほかの子と違うかも、と何となく感じていたけれど、発達の遅れまでは考えもしなかったという人もいるかもしれません。
発達相談機関へすすめられるのはなぜなの?すすめられたときはどうしたらいいの?どんな心構えでいればいいの?不安な気持ちでいっぱいになることでしょう。
子どもの発達の遅れについて、園からお話があったときどうすればいいのか、保育士ライターの炭本まみがアドバイスします。
突然、園から発達相談を…と言われると、保護者としては驚いてしまいますよね。
発達の遅れなんてあるのかな? 名前を呼べば返事をし、会話も成立する、騒いだり乱暴もしないし家庭では生活面は自立している、なのになぜ発達相談をすすめられるのかと感じるかもしれません。
園が発達相談を保護者にすすめるまでには、子どもの姿をよく観察し、これまでの経験を通した視点から発達の遅れを感じ、さらに園内で話し合い確認し合った末のお話のはず。
普段から園と家庭での様子を情報交換しているとは思います。ただし保護者が何とも思わないわが子の姿であっても、園の集団生活の中で捉える子どもの姿に発達に対して何か課題を感じているはずです。
発達に課題があると感じる子どもの姿としては、以下のようなことがあげられます。
このほかにも発達診断を進める理由は色々ありますが、年齢が小さいと本人や家族は特に困ってはいないけれど、集団生活を過ごす中で先生や友だちが違和感を覚えたり、本人もスムーズに園生活が送れていないことが多くあります。
この、本人は(まだ)困っていないけれど、集団生活の中で先生が対応に手を焼いたり、小学校生活に向けて本人が困っていく可能性がある「困り感」が感じられると、「発達相談」をすすめられる事が多いかもしれません。
すすめられるときは、必ず先生からその子のどのような姿に対して、そう感じるのか理由をお話があるはず。相談先で、園からどのような説明があったのか聞かれることもあるので、メモを取りながら話を聞くといいでしょう。
うちの子に障害があるかもしれないなんて…保護者にとってはショックで受け入れがたいことでしょう。
特に目立っておかしな様子もないし、保育園生活も楽しんでいる、好きな遊びや友だちもいる、先生のことも大好き。なのに、なぜ…。
実は筆者の長男は発達障害と自閉症です。診断がついたのは5歳のときでした。
それは幼稚園の先生からのお話がきっかけでした。
長男は目に入ってくる刺激に気を取られ、周囲の状況を判断し行動することが難しかったのです。その様子を見た先生がいち早く気づき、発達相談をすすめてくれました。
実は声をかけていただく前から、あまり友だち同士で遊ばない、偏食が多い、言葉が遅い、会話がかみ合わない、名前を後ろから呼んでも振り向かないなど、親としても何となく違和感を覚えてはいました。
それでも、先生にはっきりと発達相談をすすめられるとかなりショックで受け入れられない気持ちでいっぱい…。すぐに相談機関へかかることはとてもできませんでした。
なぜうちの子が?この先、未来、大人になったらどうなるの?と不安ばかりが押し寄せてきて、今すべきことを見失っていました。
けれど、先生から繰り返しいろいろな事例や、同じく発達相談へかかったほかのお子さんの話を伺い、一日も早く相談に行った方がいいと思えるようになっていったのです。
筆者と同じように、どんな保護者であっても受け入れるまでには心の葛藤があることでしょう。けれど先生も勇気を出して声をかけてくれています。
実は発達障害の診断ができる医療機関や相談機関は、どこもすぐに診てくれるわけではなく、ほとんどのケースで予約が必要で、先まで予約が埋まっていることが多いのです。
発達に遅れがあるかもしれない、そんなときは少しでも早く診断ができる医療機関や児童相談所、発達相談機関へまずは連絡をしたほうが良いでしょう。
筆者の長男の時も相談の予約日まで9ヶ月もの日にちがかかりました。
まずは電話で様子を伝え、相談できる日にちを聞いておくことをおすすめします。
発達の遅れがもし本当にあった場合は、年齢が小さければ小さいほど、一日でも早くその遅れを取り戻すための「療育」や「補助的な治療」をスタートすることが大切です。
小学校では、交流クラス(通常の授業体勢のクラス)と支援クラス(障害のある子どもに支援や配慮のあるクラス)など、障害の程度やできること、困り感などで所属するクラスが変わってきます。
もしも発達に遅れがある、発達障害である、自閉症などの傾向があると相談機関で分かった場合、少しでも早く対処をすることが大切になります。
障害や遅れは生まれ持った脳機能の働きであり、子育てが良くなかったからではありません。
そのため、病気のように「完治」することはありませんが、発達の遅れを「目立たなく」することは可能です。
就学までに一日も早い対処ができれば子ども自身が戸惑いや困りごとが少なくなるでしょう。
子ども本人が「困り感」や「疎外感」、「苦手意識」や「自信喪失」を感じる前に、打っておく手立てがあるととらえたいですね。
それでも、小学校へ入学するとさまざまなことに悩むかもしれません。その悩みを今できることで、少しでも減らすことができるのなら、一日でも早く発達相談を受ける価値はあるのではないでしょうか。
筆者の長男も発達相談を受けてからもう12年経過し、今は高校生となりました。
園生活でできなかった、場面の切り替えや、視覚優位(興味のあるものやテレビなど刺激のある者に集中し身動きが取れなくなること)の困り感など、さまざまな発達の遅れがありました。
それでも、今は自分で起き、自転車に乗って登下校し、友だちとも楽しく過ごしています。
周囲にフォローしていただきながら、楽しそうに時には悩み、苦しみ、そしてまた自分の力で壁を乗り越えることができるようになってきました。
今となっては、発達相談を早い段階で進めてくれた園の先生には感謝の気持ちでいっぱいです。発達に遅れがあっても必ずその子なりに成長はしていきます。もしかしたら、ほかのお子さんの成長よりも親として何倍も喜ぶことができ、幸せかもしれません。
発達の遅れや障害に対して、保護者の方も様々な考え方、捉え方があることでしょう。
何より大切なのは、どんな遅れや障害があっても本人が幸せで元気で日々を過ごすことではないでしょうか。
炭本まみ
保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。
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