朝「園に行きたくない」とぐずることが多く困ります。
朝忙しいときに言うので、なかなかじっくり話を聞く時間はないのですが、親としてはどのような対応をすればよいでしょうか?
無理に連れて行っていいのでしょうか。
子どもが登園を嫌がるときは、子どもなりに必ず"理由"があるもの。
子どもがそうなったときは、まずは、その理由を探り、その気持ちに寄り添ってあげることが大切です。
その"原因"ですが、次の3つのどれかがであることが多いようです。
もしも1が理由なら、母親冥利に尽きますよね。
根っからの"お母さんっ子"に多いのですが、お母さんが大好き!離れるなんてイヤ!というわけです。
普段から子どもを甘やかすと言うより、子どもの甘えをたっぷりと受け止めてきた優しいお母さんに起こることが多いケースです。
このタイプのお子さんは、園に行ってしまえば何ごともなかったように帰ってくることが多いので、何も心配ないことが多いものです。
毎朝「行かない」と言ったとしても、ただ甘えているだけのことが多いので、園バスや園で別れる際、"ハグをする"、"握手をする"、"帰ってきたら遊ぼうねと約束をする"などを行なうようにすると、甘えたい気持ちが満たされ、安心して行ってくれることが多くなります。
2の、"集団生活が苦手"という子も登園を嫌がることがあります。
気が弱く、内気でおとなしい子に多く、"みんなと一緒"が苦手な子どもです。そういうお子さんは、クラスの中に一人でいいので、仲良しの友達ができると解決しやすくなります。
「園に行ったらその子どもとしか遊ばない」状態になってもかまいません。それだけでも園生活はうんと楽しくなり、「園に行かない」が減ってきます。
そもそも友達の輪というのは、大人でもまずは二人の輪から始まるもの。そこから3人4人と増えていけばいいのです。
わが子と似たタイプ、「電車が好き」など趣味が似ている、その子どもとなら少しでも話ができる、など"わが子と合う友達"は、必ずクラスに一人はいるものです。
親も協力しながら、できるだけ早く見つけるようにしましょう。
登園を嫌がる理由が1と2の場合は、園でわが子が大変な目に遭っているというわけでもないので、ある意味、"嫌がるのを無理に…"となったとしても大丈夫な場合が多いもの。
問題は、登園を嫌がる理由が3の場合です。
これは、それまで毎日機嫌よく行っていたのに、急に行きたくないと言い出した、という場合に多いようです。
園に行くと「とても嫌なことが起こる」子どもは登園拒否を起こしやすくなります。
その「嫌なこと」で多いのは、まず"自分をいじめる"または"イヤなことをする"友達がいるという場合。具体的には、「嫌なことを言う」「暴力をふるう」「横取りをしたりする」といった子どもがいる場合です。
幼児の世界は、それを集団で行う場合は少ないので、厳密に言うと「いじめ」ではない場合も多いのですが、被害に遭う子どもにとってはイヤなものです。
まずは園でそんなことが起こっていないかを確認しましょう。
子ども間のそれは、担任も気づいていない場合もあるので、その有無は子どもの口から聞くのが一番です。
ですが、子どもは、例えば自分が先に叩いても、叩き返されただけで「叩かれた」としか言わないことがあるので、客観的な事実を探る必要はあります。
もしもわが子をいじめる子がいたとわかった場合、私のおすすめはその子どもへの"直談判"です。
その子に会ったとき、「うちの子と仲良く遊んでやってね」「叩いたりしないでね」などと、さりげなく、優しく、"お願い"をしておくのです。
子どもは親以外の大人からの注意には弱く、また自分に優しく話しかけてくれる人には親しみを覚え、言うことを聞くようになる傾向が強いので、この方法は案外効果があります。
もしも集団でいじめられているとわかった場合は、担任ではなく、直接園長先生に相談してもいいと思います。担任に相談しても、他の職員や園長にまでその声が届かないことがあり、園の共通認識にしてくれないことがあるからです。
もう一つ、「園で起こる嫌なこと」で案外多いのが、「練習がイヤ」「先生が怖い」というものです。
例えば鼓笛隊、漢字や英語、難しい楽器や高い跳び箱、などに取り組んでいる園は多いのですが、必ずしも"子どもが楽しく取り組んでいる"とは言えない園もあります。
ときには、それが子どもの負担となっていたり、中には指導する際はいつも厳しく叱り(ときには怒鳴り)ながら、という先生もいます。
それができる子どもや、それで平気な子どもはいいのですが、そうではない子どもにはかなりのストレスとなります。
園でそのようなことがないかを確かめ、もしも確認された場合は、同じような子どもは必ず複数でいるので、親同士一緒に園に相談に行っていいと思います。
その場合、あくまで"相談"で、決して"苦情""陳情"にはならないようにするのがポイントです。
以上、子どもが登園を嫌がる原因とその対処法をお伝えしましたが、子どもはその日の気分で「行きたくない」と言うことがあります。
月に一度や二度の「登園拒否」なら、あまり神経質にならないようにしましょう。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
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