ネットの口コミを見て「これぞ!」と選んだおもちゃ。
でも、うちの子にはピンとこないのか、おもちゃ箱の中で埋もれている…
「知育によさそう」と期待して買ったのに、思ったような遊び方をしてくれない…
せっかく買ったのに、とがっかりしてしまうこと、ありませんか。
「そんなときも実は子どもは子どもなりに、おもちゃと向き合っているのです」 そう語るのはおもちゃコンサルタントの岡田哲也さん。
おもちゃやその遊び方はもちろん、子どもの発達や心理面にも詳しい岡田さんに、おもちゃの選び方やおやこでのおもちゃの関わり方などを伺いました!
そもそも「おもちゃ」とは、子どもにとってどういう存在なのでしょう?
おもちゃとは、手や身体を使い、自ら考え、他者との関わりも促すために必要なもの。
子どもたちは遊びながら、自分を知り、社会を知っていきます。
そうした遊びの際に欠かせないおもちゃとは、単なる「ひまつぶし」のものではなく、子どもたちにとって大切な存在です。
だからこそ、その子なりの「おもちゃとの向き合い方」があります。
せっかく選んで与えたおもちゃにまったく見向きもしなかったり、本来とは異なる遊び方をしていたりすると、親は「あれ?失敗したかな」と思ってしまうことがありますよね。
ネットでいい口コミがあったり、高価なおもちゃだと、特に気になっちゃったり…
でも、「失敗」と決めるのは早いかもしれません。
子どもと大人とでは流れている時間が違います。
しばらくしまっておくと、突然引っ張り出して遊び始めることもあります。
だから、すぐに結論を出さずに少し待ってみましょう。
また、子どもと大人とでは興味も違います。
大人は、そのおもちゃに興味を持つきっかけを子どもに与えられるような存在でありたい。
遊び方を説明する前に、形や色からまず「何の動物かな?」「きれいだね」と興味を持つような声かけもよいでしょう。
遊び方に絶対的なマニュアルはありません。
本来の遊び方をしなくても、その子なりに感じて考えて、こういうふうに遊んでみようと手や頭を使って触れ合えば、しっかりと遊んでいる証拠です。
視界にただそのおもちゃがあるだけで安心しているなんてこともあるんですよ。
大人の先入観で「こうあるべき」と決めつけず、自分なりにおもちゃと向き合っている子どものペースや感覚を尊重し、見守りましょう。
続いて、上手なおもちゃの選び方を一緒に考えていきましょう。 発達段階に合ったもの、もしくは少し上の対象年齢のものを選ぶといい…とよく思いがちですよね。
ちょっと難しいものを買った方が、長く使えるかな、と思いますね!
難しすぎると集中できないし、逆に簡単すぎると物足りない。
ちょっとがんばったらうまくいく…くらいがちょうどよいかもしれません。
その意味では、発達段階に合ったものを選ぶことは大切だと言えます。
でも、それだけではありません。
発達段階はあくまでも目安。
おもちゃの対象年齢表示と自分の子どもの遊んでいる様子を見比べて、「あれ?うまく遊べていないような…」と、不安になることがありませんか?
しかも今は買う前のお試しがなかなかできない時代。
おもちゃ屋さんも減っていてネットで購入することがほとんどで、手に取って遊んでから、気に入ったので買おう!ということが難しかったりしますよね。
じゃあ、どうすればいいか?
「うちの子はこういうものが好きそうだから」という親ならではの感覚で、選んでみてもよいでしょう。
大切なのは、その子の「今」を見つめること、その子の「好きなこと」を見つけること。
そのためにもふだんから親子で遊んで、「うちの子は今どんなものが好きなのか」を、知っておいてほしいと思います。
「こういう力が身に付きそう」というねらいを持って親目線で選ぶのもいいですが、そのときもぜひ「うちの子が楽しめそうだな」という観点を忘れないでくださいね。
子どもが成長するにつれ、「このおもちゃがあれば、一人で遊んでくれそう」などと親は思いがちですが、まずは親子で一緒に遊んでみることが大切です。
子どもが一生懸命におもちゃで遊ぶために、それが何よりも一番いいことなのです。
親が一緒に遊んでくれる、しっかり自分を見てくれている…それが伝わることで、子どもに絶対的な安心感が生まれます。
それは家庭の中でこそ生まれるもの。
そんな環境で「やってみよう!」「おもしろいかも!?」と子どもは新しいこと・昨日まではできなかったことに一生懸命、挑戦していきます。
積み木を手でつまめるようになる。
色や形をそろえて並べられるようになる。
高く積み上げられるようになる。
想像力をふくらませて、家や車などに見立てて遊ぶようになる。
ごっこ遊びがどんどん広がっていく…。
遊びながら、その子の「できた!」がどんどん増えていきます。
それこそ、成長ですよね。
親は、かるく声をかけるだけでもいいんです。
「自分でやりたい」「パパやママじゃない人と遊びたい」という子どもの意思もありますしね。
たとえば、ブロックが上手に積み上げられたときの「がんばったね」「壊さないで、残しておこうね」といったひと言が、子どもにはとてもうれしいもの。
また、困っているときにヒントを伝えるのもいいでしょう。
「大きいブロックからくっつけてみたら、どうなるかな」といった声かけでも十分!
子どもは次のステップに進んでいけます。
子どもにおもちゃを与えて、それで遊んだら何か力が身につく、劇的に何かが変わる…というわけではありません。
子どもが力を発揮するのは、家庭の中での絶対的な安心感のある環境の中でこそ。
大人はぜひ、そのおもちゃの楽しさをもっと広げてあげてください。
それは、ママ、パパだからこそできることですからね。
岡田さんも講師を務める日本で唯一の総合的なおもちゃの認定資格「おもちゃコンサルタント」。赤ちゃんの成長・発達からお年寄りのリハビリ、ヒーリングまで、幅広い視点でおもちゃを捉え、優良なおもちゃや活用方法を学ぶことができます。
毎年おもちゃコンサルタントが選考委員となり、日本や世界の優れたおもちゃを選定する「グッド・トイ アワード」を開催しています。
認定NPO法人芸術と遊び創造協会
東京おもちゃ美術館ディレクター・おもちゃコンサルタント 岡田 哲也
東京おもちゃ美術館にてイベント等の企画、運営を担当。また「おもちゃインストラクター」「おもちゃコンサルタント」養成講座の講師として、全国でおもちゃを使った遊びの研究・実践・ワークショップを開催している。
NHK Eテレ『まいにちスクスク』など各種メディアにも出演。
駒沢女子短期大学・植草学園大学非常勤講師。
子どもと楽しむ「遊び名人」になろう! 岡田哲也のおもちゃの時間
ライター 河瀬 みこと
大学卒業後16年間、教育関連企業で編集・マーケティング業務を担当。第一子妊娠時に退職。その後保育士資格を取得。二児の姉妹を育てながら、編集・ライター業に邁進中。
2023年春より、念願の「食堂+寺子屋 nuinu(ぬいぬ)」開業。
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でも、「失敗」と決めるのは早いかもしれません