2021年6月3日に改正育児・介護休業法が成立し、これまで1回しか取得できなかった育休がママパパともに分割できたり、男性が子どもの誕生後8週間以内に使える特例の育児休業(男性産休)も新設されることになりました。2022年4月1日より段階的に施行されていきます。
この法改正のためにアクションしたのが、子育て支援を行っている特定NPO法人フローレンス代表・駒崎弘樹さんや株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長・小室淑恵さんら、子育て世代の人たちです。
すでに子育て中である『おやこのくふう』の読者の中には「次の産休・育休の時に利用したい」と思う人もいる一方で、「もう少し早ければ…!」なんてちょっとモヤモヤしている人もいるのではないでしょうか。
今回のこの改正について、子育て世代の私たちはいったいどのように考え、またどのような行動をしていったらよいのか、ちょっとだけ悩むこともあるかもしれません。
そこで、同じ子育て世代でもある駒崎弘樹さんに、今回の改正法の意義と我々子育て中のママパパに向けたメッセージを伺いました。
ー少子化対策は、これまで女性をターゲットに想定した施策が主でしたが、今回の法改正ではかなり明確に男性にスポットを当てている点が新しいと感じました。(編集部)
女性だけを対象にした少子化対策は、問題を外在化させているだけだと私は考えています。男性の家庭進出がなければ、女性にとって、社会進出はこれまでの家事育児に仕事の負担が追加され、無理が生じます。
実際に、男性の家庭進出は少子化に影響するという調査データもあります。調査によれば、夫が1日6時間以上家事育児に関わる家庭では、夫がまったく家事育児をしない家庭に比べて、8倍以上も第二子の出生に影響があるんですね。
出典:仕事と生活の調和レポート2016(内閣府) 2010年にスタートした厚労省の「イクメンプロジェクト」では、このデータを根拠として男性の育休取得を促進。「イクメン」という言葉によって、2010年当時にはやや関連が薄かった「父親」と「家事・育児」を結びつけることに成功したといえるでしょう。
しかし一方で、「イクメン」という言葉は広まったものの、肝心の男性の育休取得率は上がらず、「男性の家庭進出」という直接的なアクションになかなかつながっていかなかったという現実がありました。
厚生労働省資料より編集部作成
そこで今回の法改正では、男性の育休取得率の増加という明確なアクションにつなげることを目的しています。経済界などの反対もあり、時間がかかりましたが、結果的にほぼ目指した形での法改正になりました。
ー今回の改正の目玉の一つは男性が子どもが生まれたあと8週間以内に4週間まで取得できる「男性産休」の新設です。しかし女性が産休を取得しているこの時期に、男性も休むことへの必要性を疑問視する声もあります。(編集部)
「男性産休」が必要とされる理由の一つは、産後うつの発症率の高さです。産後うつは10人に1人の母親が発症していて、決して珍しいものではありません。産後の女性の死因1位とも言われるくらい深刻な問題です。
産後うつ病疑い(EPDS9点以上)の発生率 出典:「健やか親子21」最終評価報告書
産後うつを防ぐために必要なのは、産後の急激なホルモンバランスの変化をケアすること、そして育児への強い不安に対するパートナーのサポートです。
私の妻も第一子出産後にメンタルが不安定になり、産後うつのような状態を経験しました。幸いに私が育休を取得していたので妻や子どものケアができましたが、当時の「これは母親一人では絶対ムリ!」という思いは、男性産休の必要性を腹落ちして訴える根拠になっています。
ー父親が休んでも何も役立たないのでは?という懸念の声もあるようです。(編集部)
もちろん、休んでいるのに家事育児にコミットしないなんていうのは父親としてナシです。でも、そういう父親が出てくる可能性はあるでしょうね…。
例えば、そうした男性に向けた対策の一つが「父親学級」の創設です。これまで男性が育児スキルを学ぶ場は、せいぜい夫婦で参加する「両親学級」くらいでした。しかし今後は、「母親学級」並みに充実させるよう厚労省に提言しています。「父親学級」は、オンライン化したり企業主導で受講させるなど、受講しやすい仕組みにできると良いと思います。
ー今回の改正で駒崎さんが特に重要だと考えているポイントを教えてください。(編集部)
改正法では男性産休も含めて育休を最大4回に分けて取得できたり、男性産休は申請期限を1カ月から2週間前に短くしたり、男性が育児休業を取得しやすいようスモールステップをたくさん設けました。
その中で特に育休取得率に効いてくると考えているのは、2つです。
1.男性の産休中の就労が可能になったこと
私自身、長女・長男ともに育児休業をそれぞれ2カ月取得しましたが、ちょっとメールを返す、何かあったら電話ができる、ということができなければつらかったです。休んでいる間も少しは働けるということが、取得のハードルを下げると考えています。
2.これまで労働者側からの申し出だった育児休業について、企業側から意向を確認することを義務付けたこと
現行法では、育休は労働者側から言い出して初めて取得できます。しかしこれでは「取りたいけど、言い出せない」という人が多くいました。 労働者→企業だった育休取得のきっかけを企業→労働者とベクトルの向きを変えて、さらにそれを義務化したことは、大きく育休取得率を上げるのではと期待しています。
ー改正法は2022年度から段階的に施行されますが、すでに子育て中の『おやこのくふう』の読者の中には「私は制度がなくても乗り切った」という気持ちが沸いてしまう人もいるかもしれません。これから産み育てる人たちをどうサポートすべきでしょうか。
単純にこれから産む人たちが子育てしやすい社会というのは、我が子が子育てしやすい未来になること。
これから産み育てる人たちには、「よかったね」と拍手を送ればいいと思います。味わう必要のない苦労は、自分たちの世代で終わりにしましょう。
ー感情面はさておき、データで見れば、育休制度の充実は合理的なことですもんね。(編集部)
そうですね。でも実は子育てを取り巻く社会を変えるためには、人々の感情面を動かすことも非常に重要です。なぜなら、子育てはまったく合理的ではないですからね。
例えばイクメンプロジェクトを立ち上げた2010年当時は、「男性が家事育児なんて」という雰囲気でしたが、今や「家事育児ができる男性っていいね!」という価値観に変わってきていませんか?
実はこの「家事育児できる=かっこいい」といった感情のムーブメントがないと、社会を変えたり政治を動かすのは難しいんです。
そういう面で今回の法改正で重要な意味を持つのは、大企業が育休の取得状況の公開を義務付けられたことです。これから人手不足がさらに拡大する社会の中で、育休が取れないような会社は淘汰されていくでしょう。
つまりこれまで「すみません、休みます」と言って取っていた育休が、経営戦略にとってもプラスになるように変わっていくのです。 今後はビジネスの合理的な判断としても、人々の感情面でも育休を夫婦ともに柔軟に取れる世の中が「いいね」と言われる社会になっていくはずですよ。
***
少子化対策は重要政策の一つとして年々改訂されていますが、それと前後して社会の意識が変化しているのをこの2~3年だけでも、強く感じますよね。
母親だけが出産、育児を抱え込むのではなく、パートナー、地域そしてその先は社会全体が子どもがすくすくと成長していけるようになるために、子育て世代もどんどんと価値観をアップデートしてく必要がありそうです。
そして、駒崎さんのいうとおり、「育てやすい社会、生きやすい社会」を作ることは、ダイレクトにわが子を含めこれからの子どもたちの未来を作ることでもあります。 子育て経験者の私たちだからこそ、わかること、できることはきっとたくさん。ぜひ、産休・育休をとろうとしている男性がいたら「がんばって!」と声をかけてあげたいですね。
認定NPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹
2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」病児保育サービスを開始し、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする。その後、子ども子育て新制度における小規模保育所のモデルとなった「おうち保育園」の立ち上げや障害児保育事業や赤ちゃん縁組事業など子育て支援に広く関わっている。 現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員を務める。一男一女の父であり、子ども誕生時にそれぞれ2ヶ月育児休暇を取得。 駒崎弘樹さんnote
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