子どもがお手伝いをしたときに少額のおこづかいを渡していたら、「○○したらいくらくれる?」と聞いてきてドキッとしました。
働いてお金をかせぐ喜びや、お金を貯めて欲しいものを買う楽しみを伝えられるかなと考えたのですが、間違っているのでしょうか。
3人の子どもを子育て中の現役ママFP・北村由紀です。
親は誰しも、可愛いわが子に将来お金の苦労はさせたくない!と願うもの。
前回までの記事では、遊びの中で学びをグングン吸収していく幼少期に、"お金とは何か?その大切さをどう伝えていくか"について、お伝えしてきました。
今回のお悩みは、「幼少期から楽しく前向きにお金とのお付き合いをスタートさせてあげたい」という親心あってこそで、子育て中の"あるある事件"とも言えますね。
このお悩みのケースを含め、親がついやってしまう言動だけど、じつは子どもへの金銭教育上よくないということをお伝えしたいと思います。
お金に対する感情や感覚は、幼少期からの親の影響がとても大きいと聞きます。
子どもは大人の言動を本当によく見ていて、良くも悪くも、親をそっくりまねして驚かされますよね。食事マナーや片付けなどの生活習慣も、長年親がしていることを見て覚えていくため、大人になってからの修正はなかなか難しかったりします。これ、じつはお金についても同じです。
親が口では「お金は大切にしなさい」と話しても、実際はお財布を机の上に置いたままにしていたり、おつりをポケットに無造作に突っ込んだりする様子を見て育てば、お金を大切に扱える大人になれるのか疑問です。
そして、さらに困ったことに、子どもは机の上に放置されたお財布で、おもちゃと同じように遊ぶようになり、いつの間にか悪気なくポケットにお金を入れ、持ち出すことにつながりかねません。
また、次々と衝動的に物を買う親の姿を見れば「お金は無限にあり、欲しい物はすぐ買えばいいんだ」とも覚えるでしょう。
まずは、親自身が自分たちのお金の使い方や、子どもによくない影響を与えるNG言動がないかを振り返り、もし子どもにまねしてほしくないことをしているのであれば修正する必要があります。
こちらが冒頭のお悩みへの答えとなります。
前回の記事で、”おこづかいは『お金とは何か』『お金の大切さ』『お金の流れ』などの金銭感覚を養うのに最適”とご紹介しましたが、その方法を間違うと、せっかくついたお手伝い習慣を台無しにしかねません。
いちばん大切なのは、単にお手伝いをしたからもらえるのではなく、家族の役に立った"ありがとう"のしるしだということを毎回伝えることです。それが少しずつ貯まることで、感謝の数だけお金の重みも感じられるでしょう。
わが家でも"お駄賃がなければお手伝いしない"という姿勢が見えたことがありました。そこで、「家事は家族のためのお仕事だから、みんなでやるべきだよね。それならママもお金をもらえるわけではないからごはん作るのやーめた!」と言ったところ大慌て。
「本当だったらお駄賃はないけれど、お金は働いたことに感謝されてもらえるものだと知ってほしいから渡すんだよ。大人になる練習だね」と伝えると、大人と一緒といううれしさもあり、理解してくれたようで、"お手伝いはお駄賃次第"という時期をうまく抜けることができました。
ところで子どもが行くところには、必ずといってもいいほど"ガチャガチャ"がありますよね。しかも、よりによって大人が買い物をしていて待っていてほしい場所や、外食で順番待ちをしている場所などに。
そのようなぐずりがちな状況のとき、つい「300円で丸くおさまるなら、まぁいいか」とお財布の口を開けてしまってはいませんか?
わが家では、なりゆきでガチャガチャは絶対にさせないと決めています。グズれば楽しいガチャガチャがまたできると覚えてしまっては、おもちゃを大切にする心は育ちませんし、「高いおもちゃはダメ」という親がガチャガチャ程度の小さなおもちゃならいつでも買ってくれると覚えれば、金銭感覚も価値観も間違った方向に向くと考えているからです。
わが家では、特別な日や場所で、そのおもちゃが大切にできる欲しいものである場合に限ってさせてあげるようにしています。そのうれしさから、"思い出エピソードつきのおもちゃ"になり、ずっと大切にすることができています。
せっかく買ったおもちゃなのに、大切にせず乱暴に扱ったり、片づけないで放りっぱなしにしていたり…。
そんなときつい「そんなことしていたら捨てちゃうからね」などと脅してはいませんか?
特によくないのは、本当は捨てるつもりなんてないのに"捨てるフリ"をすること。「捨てる」と言いながら隠しているだけで、自分の反応を試しているとすぐに気づくのが子ども。そうなると、ますます大切にしないという悪循環に陥りますよね。
そのような時は、おもちゃの気持ちになって、「ほったらかしにされて、痛いよ寒いよって泣いているね」などと話してみましょう。
また、すぐに飽きて放り出してしまうのは、子どもの目的が「欲しいものを手にすること」ではなく、「買ってもらうこと」になってしまっているからかもしれません。
周りを見れば欲しいものだらけですが、すべてが手に入るわけではないと我慢を覚えさせることが大切。何でも手に入る高揚感を覚えると、大人になっても我慢ができず、クレジットカードで無計画に買い物するということになりかねません。
おもちゃはイベントのときだけ買うなど、親子でルールを決め、親として強い意志を貫くことが大切です。
ついつい手っ取り早く口をついて出てしまう「お金がないからダメ」という言葉ですが、「お金がない」といいながらも実際は普通に買い物している親の姿を見て、子どもは混乱し、「ママはウソつきだ」と不信感につながることも。
また、「おもちゃをたくさん持っているお友だちはお金持ちの家で、うちは買ってもらえないから貧乏の家なんだ」と解釈して、引け目を感じてしまっても困ります。
お金には限りがあることを教えたい気持ちあってこそですが、子どもだからこそ丁寧に"なぜダメなのか"を伝えることが大切です。
例えば、「おもちゃはお誕生日とクリスマスのときだけ。それは家族旅行のためにお金を貯めているからよ。次はどこに行きたい?ディズニーランドかな?」と、楽しい未来をイメージしてふくらませてあげると、ワクワクした気持ちで、誤魔化さずに我慢することを伝えられますね。
日本には「子どもの前でお金の話をするものではない」という昔からの考え方があります。
しかし、子どもとの会話でお金の話を逸らしたり隠したりすると、"お金の話は悪いこと、恥ずかしいこと"というネガティブな印象を与えることにも。そうならないよう、お金は感謝のしるしで、生活をより良くし、夢を叶える道具だと伝えたいものです。
本来、生活するにはお金の話は切っても切れないものです。
「今日はお給料日。いつも家族のために働いてくれてありがとう」「今日はセールで○○ちゃんのかわいいお洋服をお得に買えたよ」など、まずは家計へのお金の入口と出口を自然と会話にできるといいですね。
そうすれば、子どもは自然とお金に興味を持っていきます。成長に合わせて、"お金は労働の対価で手に入る"という考えにプラスして、いずれ、"お金がお金を生む"投資の話などにもスムーズに発展していくでしょう。
キッズ・マネー・ステーション
「見えないお金」が増えている現代社会の子どもたちに、物やお金の大切さを知り「自立する力」を持ってもらいたい、という想いで設立。 全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2020年までに1500件以上の講座実績を持つ。http://www.1kinsenkyouiku.com/
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー 北村 由紀
小5・小3・年中の現役ママFPとして和歌山市で親子の学びを応援する教室を開催。「家族の未来にワクワクを」をモットーに、ママ向け、親子向けに家庭で楽しく生きるチカラを育む方法をお伝えしている。他に、行政講座講師、小学生新聞・WEBコラム執筆で活動中。