3人の子どもを子育て中の現役ママFP・北村由紀です。
いよいよ2021年も残りわずか。イベント続きの年末年始は子どもたちの笑顔であふれ、特に、お正月にお年玉をもらってはしゃぐ子どもの姿を見ると、こちらまでうれしくなりますよね。
そんなお年玉は大きいお金だからこそ、お金の大切さを知る学びが満載です。
しかし「ふだんよりずっと大きな金額を子どもにどう説明したらいいの?」「預かって全額貯金するのは間違ってる?」などという親御さんからの悩みをよく聞きます。
もちろん、子どもが自分でできるようになるまで、お金の管理は親の担当ですが、ほんの一部でも自分で使うという体験をすることで、少しずつ自分で管理していくための準備になるでしょう。
今回は、幼児にお年玉を通してお金の大切さを伝える方法をご紹介します。
おしゃべりし始めたばかりの幼児が、お年玉をもらって、たどたどしい言葉で「ありがと」と言いながらペコリとお辞儀する姿は、とても愛らしく微笑ましいものですよね。恥ずかしさや照れが出てくる前の幼児期に、誰にでも自然に「ありがとう」と言える習慣を身につけたいものです。
この感謝の気持ちは、日頃から「お金の大切さ」を感じていれば、さらに心のこもったものになります。
前回までの記事で紹介した、生活の中でお金の大切さを学ぶ方法が参考になればうれしいです。
いただいたお年玉を「ママが預かっておくね」などと伝え、子どもに見せないまま貯金していませんか?もちろん小さい子どもなので、なくす前に預かることは必要ですし、将来のために貯金しておくのは子を思っての親心です。
しかし、その習慣を小学生になってからも続けると、子どもの不信感につながることもあるようです。以前に親子マネー講座を開催した際、5年生の男の子が「お年玉を親に奪われる。友達も返ってきたことがないって言ってるし、奪い返したい!!」と半ば本気で言っていて驚きました。
子どもの成長や性格に合わせて、少しずつ任せていくことが親子の信頼関係においても大切ですね。
そこで、お金に関心を持ち始めたら、お正月中のおやこのコミュニケーションの1つとして、“お年玉会議”をすることをおすすめします。
会議といっても難しく考えることはありません。親として、子どものお金の練習を見守り、必要に応じてサポートしていく体制を"わが家の新年恒例行事"にするのです。
幼児の頃からの習慣になっていれば、将来、お年玉の使い方や管理方法について自然に家族で話すことができ、強い信頼関係につながるでしょう。
筆者の子どもたちは3歳から始めてみました。兄妹でもお金への興味や理解度で内容に違いはありましたが、以下のように進めていきました。
まずはお年玉に込められた思いへの感謝を話しながら一緒に封を開けて、お金の種類について教えましょう。
「お年玉は、くださった人が一生懸命働いて誰かを幸せにして、その感謝のしるしとしていただいたもの。その大切なお金を、今年も1年、〇〇ちゃんが元気で幸せに暮らせますようにと願いを込めてくださったものなんだよ」
「日本は恵まれている国だけど、世界にはクリスマスプレゼントもお年玉ももらえない子どもたちがいるんだよ。〇〇ちゃんはもらえて幸せね」
などと、ぜひおやこで話してくださいね。
住信SBIネット銀行による「お年玉に関する意識調査2021」によると、小学生未満のお年玉の相場は1,000円以下がボリュームゾーン。
ポチ袋を開けると、きっと1,000円札もあれば500円玉や100円玉もあるでしょう。1,000円札は100円玉が10枚と一緒、その100円玉は10円玉が10枚と一緒…というように、子どもと一緒に数えることで、数の概念の学びだけでなく、日常ではさわることのない大きなお金との出会いになりますね。
この頃になると、「お年玉は自分がもらった自分のお金」という気持ちが芽生えてきます。
そこで、お年玉の一部を自由に使えるようにして、「何を買いたいか」そして「お年玉のような大きなお金は、これから必要なものができたときに使えるよう、銀行に"貯金"することが大事」だと教えていきました。
ここで、まだ分からないだろうと、単に"ママが預かる"としないことがポイントです。
具体的におすすめなのは、以下のように3つに分ける管理方法です。
もし"おこづかい"を始めていたとしても、その何倍もの大きな金額だからこそ、おこづかいでは伝えられない貯金の本質を教えることができます。
"自分で貯金するお金"では、今すぐ買えない高いものもお金を貯めていくことで手に入れられることを学びます。"おうちの人に預けるお金"は、将来の大きなお金がかかる時期のために備えておくのだと子どもに伝えて、子ども名義の口座で親が管理します。
出産祝いや子ども手当と一緒に管理し、必要に応じて見せるようにすれば、自分の将来のことを思ってこんなに貯めてくれていると感謝と信頼の気持ちで安心するでしょう。
中長期の目的別で分ける貯金方法を身に付けることで、将来そのまま家計管理に応用できますね。
幼いうちは、お金の大切さがわからないため手荒く扱い、無くしてしまわないか心配という声も聞きます。
まだ早いかなと思いがちですが、お金の大切さがわかるには、実際のお金にふれさせることがいちばんの近道です。
手数料や利便性からWEB口座での管理も多くなってきていますが、お年玉の管理では子どもが手にしていつでも見られる通帳をおすすめします。記帳した欄の端に、相手とその内容を記入しておけば、将来への大切な記録にもなります。
日頃、親がATMの機械を扱っているところを見ていたとしても、自分の大切なお金であればさらに興味津々、真剣そのものです。筆者の長男が初めて自分で操作し、お年玉がATMに吸い込まれたときの慌てた泣き顔は今でも笑い話です。
入金し通帳に記帳され、必要な時にその分だけ引き出せるという流れを経験することは、すべて理解できなくても貯金の仕組みに触れる良い機会になります。
「ATMは魔法のカードでいくらでもお金の出てくる機械だと思い込んでいる」という話は、現代の子どもにはよくある話かもしれませんが、そうではないことに気付く十分な経験ができますね。
お年玉では「自分のお金で自分が欲しいものを買うこと」の幸福感を体験してほしいと思います。
親は口出しせず、自由に選び買い物するわが子に付き添い見守ることで、子どもは次のことを学びます。
欲しいものを買い与えられるのではなく、持っているお金の範囲内で欲しいものを選び、あといくら残っているかを考えながら選ぶ…子どもなりに優先順位をつけ、最大限満足できるものを買おうと努力するでしょう。
自分のお金で自分が決めたものだからこそ“買った後の気持ち”は強く印象に残ります。
「やっぱりあっちを買ったらよかったかも……」と後悔すれば、次はより慎重に買い物をするように。いつもより多いお金での経験は、「あんなにあったお金も使うとあっという間になくなる」という実感になります。お年玉だからこその学びですね。
無駄遣いでも大丈夫。子どもが扱う程度の金額のうちに、好きなものを買って失敗から学んだらいいのです。
また、まだお金の計算ができないうちは、「〇個選ぼう」と決められる100円ショップがおススメです。お菓子やおもちゃ、文房具まで揃うバリエーションにわが子の目はキラキラ輝きますよ。
年末年始はついお財布の紐も緩みますが、新年のスタートをより豊かに迎えるために新調したものなどがあれば、「良い買い物をしたね!おかげで気持ちのいい1年になりそうだね!」と親のお金の使い方や価値観を自然に伝えるチャンスです。
子どものお金の習慣は家庭の会話の中で学んでいきます。新年恒例の"お年玉会議"を、家族でより豊かなお金の使い方を振り返る機会にしていただけたらうれしいです。
お金の学びにお年玉を最大限活用していってくださいね。
キッズ・マネー・ステーション
「見えないお金」が増えている現代社会の子どもたちに、物やお金の大切さを知り「自立する力」を持ってもらいたい、という想いで設立。 全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2020年までに1500件以上の講座実績を持つ。http://www.1kinsenkyouiku.com/
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー 北村 由紀
小5・小3・年中の現役ママFPとして和歌山市で親子の学びを応援する教室を開催。「家族の未来にワクワクを」をモットーに、ママ向け、親子向けに家庭で楽しく生きるチカラを育む方法をお伝えしている。他に、行政講座講師、小学生新聞・WEBコラム執筆で活動中。
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