せっかくおもちゃを買うなら「子どもによい影響を」と考える親は多いもの。一方で「子どもが遊んでくれなかったら……」「子どもの好みを尊重したほうがいいのかな?」と悩んでしまうこともありますよね。
そこで今回は発達の道筋に沿ったおもちゃの選び方を解説した『保育とおもちゃ』の著者でもある、大阪府の城東よつばこども園園長の瀧薫先生に"よいおもちゃ"の選び方を伺いました。
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おもちゃの対象年齢は「安全性」を重視して決められているため、下限はありますが上限はありません。特に2歳以下のお子さんは誤飲の可能性があるので、ピンポン玉よりも小さいものは制限されています。
ただし、例えば親が目の前で一緒に遊ぶ場合や、上のお子さんのおもちゃを下のお子さんが遊びたがる場合などもありますよね。そういった場合は安全性を確かめたうえで、あまり対象年齢にとらわれずに遊ばせてよいと思います。
キャラクターもののおもちゃは子どもに大人気ですが、子どもの発達にはよくないのでしょうか…
私は子どもの発達を緩やかにサポートするような質の高いおもちゃ、つまり"よいおもちゃ"は子どものエネルギーとなる栄養素だと思っています。そういう意味では、キャラクターもののおもちゃはおやつやファストフードに例えられます。
楽しみのためにおやつやファストフードを食べることは悪いことではありませんが、そればかりだと身体がしんどくなるということを子どもは感覚的にわかっているように思います。
しかし、逆もまた同じです。親の教育的な意図や思いだけでおもちゃを選んでも遊びがなくて疲れてしまいますし、バランスを取って用意していればキャラクターもののおもちゃも、問題ないと思いますよ。
先生が考える「よいおもちゃ」を教えてください
"よいおもちゃ"と聞くと、知育玩具のようなものを思い浮かべる人も多いと思いますが、私は"よいおもちゃ"は子どもの発達を緩やかにサポートするものだと思っています。おもちゃを選ぶ時は「子どものどんな発達に適したもの」という視点で選ぶのがおすすめです。
例えば「ニックスロープ」というロングセラーの玉転がしのおもちゃがあります。これは、追視といって玉が転がっていくのを目で追うのが楽しく、8カ月ごろから楽しめるおもちゃです。
一見地味なようで、子どもが目がいきやすい4原色がボールだけに着色されているので追いやすく、子どもにとっては遊びやすいのが特徴です。よく似たおもちゃはたくさん売られていますが、土台がカラフルだったり、ボールの中に鈴が入っていたりしていて、一見多機能ですが追視を楽しむのには向きません。
子どものおもちゃは、このように発達に応じて段階的に見通しを立てて選んであげる必要があります。
やはり木製のおもちゃがよいのでしょうか?
おもちゃの素材は第一優先は安全なものです。木だから良い、プラスチックが悪いということではなく、子どもの発達に合っていて遊びが発展するものを選びたいですね。
例えば、積み木であれば布製のやわらかいものは一見よさそうですが、積んで遊ぶのには適していません。また塗装が滑りやすいものも、高く積み上げて遊びたい3歳以降には向いていません。子どもの発達や遊ぶ様子に合わせて、素材もていねいに選びたいですね。
またデザインも、おもちゃそのものの主張が強くないもののほうが子どもの創造性を伸ばしてくれます。
子どもの発達に合わせて選ぶのは初めての育児ではなかなか難しいですね…
"よいおもちゃ"を判断する1つの基準としてドイツの認証マーク「spiel gut(シュピールグート)があります。spiel gutは教育者や哲学者、医者などの有識者をはじめとする12人の委員によって子どもの年齢や発達段階、多様性などの観点をクリアしたおもちゃのみに与えられるマークです。こういったマークなどを参考に"よいおもちゃ"を選んでみるのもいいですね。
よかれと思って買ったおもちゃで子どもが遊んでくれない時はどのようにしたらいいでしょうか?
遊んでほしいおもちゃなら、まずは大人が楽しそうに遊ぶことが大切です。パパやママが楽しそうに遊んでいたら子どもが興味を示すこともあります。
ただし、そもそも遊びとは自発的な活動です。やらされてする遊びは、遊びとはいいません。子どもがそのおもちゃにまったく興味がないようであれば、潔くフリマアプリで売りましょう(笑)。
子どもといっしょに遊んでいると、どこまで大人が付き合うべきか悩むことがあります。
親御さんが子どもと一緒に遊ぶときは、はじめは向かい合って遊びながらだんだん2人がおもちゃと向き合うような配置になると子どもが遊びに没頭しやすくなります。
子どもが遊びに没頭し始めたら、大人はその場を離れてもいいでしょう。ただし、気配が感じられる距離にいるのが大切。
楽しいことやすごいことができて子どもが振り返った時に、大人がすぐに目線を合わせられる距離にいるという経験を繰り返すことで、子どもは安心して1人で遊べるようになりますよ。
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「子どもにとって身近な大人と一緒に楽しさを共有することは幸せな時間です。その時間の積み重ねは子どもを生涯支え続けるものになるでしょう」と語る瀧先生。
仕事や家事、育児などせわしない毎日ですが、おもちゃをきっかけに少しでも親子の幸せな時間が生まれると良いですね。
社会福祉法人子どものアトリエ理事長 城東よつばこども園 園長 大阪芸術大学短期大学部講師 瀧 薫
「保育と絵本」「保育とおもちゃ」などの著書があり、3児のお子さんのママでもあります。
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