子どもが自分で遊んだおもちゃをちっとも片付けません。
「ちょっと待って」「まだ遊んでる」などとなかなか取り掛かれなかったり、適当にパパっとやって、また遊び始めたり…
片付けないで新しいおもちゃを出すので、どんどん散らかってしまいます。何度言っても片付けないので、結局親が片付けることに。
どうしたら自分で片付けるようになるのでしょうか。
「さあ、お片付けよ」と言って、「はーい」と素直に片付け始める子どもは"まれ"です。
たいていは、「いや~」「まだ遊ぶ」などの言葉が返ってきて、中にはその声がまったく届いていないような子どもも!
どうやらお片付けというのは、子どもにとって、面倒この上なく、ただ遊びを中断されるだけの、イヤ~な作業なのです。
片付けというものが面倒なのは、大人も同じですよね。どうして大人は、イヤでも片付けるのかと言うと、その理由はおそらく次の3つではないでしょうか。
でも子どもは、そのどれも感じません。
散らかったままでも何も困らないし、そのままで食事をしたり、その横で寝たりすることも平気。
「片付けるのは当たり前」なんて思うのも大人だけ、子どもは全く思わないのです。
でも、片付けることはマナーとしても大切ですよね。ではどうすれば身につくのでしょうか?
まずは「片付け」に対するイメージをよくしていくことから始めましょう。
片付けをする際、子どもはとかく否定言葉を聞くことになりやすいものです。
「片付けないならもう買わないよ」「捨てようかな」など脅しのような言葉から、やっと片づけたのに「言われなくても片付けなさい」などと、片付けても叱られることがあります。
これでは「片付け」というものにマイナスイメージが募るだけで、ますます片付けが嫌いになってしまいます。
逆に、片付けるときに何らかの「快」の気持ちがやってくると、片付けに対してよいイメージがつき、「ヤル気」が起こってきます。
片付ける際に、子どもに「快」の気持ちがやってくる方法をいくつかご紹介しましょう。
大人でも子どもでも、ほめられるとうれしく、がんばろうとする気が出てきます。
ひとつでも片付けた、叱られたけどちゃんと片付けたなど、とにかく片付けたときは、その都度ほめるようにしましょう。
ほめると言っても、「はい、ちゃんと片付けられたね」の一言でいいのです。
「片付けるとちゃんと認めてもらえる」ということがわかれば、その意欲も変わってきます。
「やって当たり前」のことでも、その行動を定着させたいときは、「できたときにほめる」ようにすることがポイントです。
苦手なお片付けも、ゲームのようにすると子どもはがぜん張り切って片付け始めます。
いきなりでもいいので、「お母さんは10個、〇〇ちゃんは5個。どっちが早いかな?お片付け競争、よ~いドン!」と言って、「1個2個」と片付け始めると、子どもも競うように片付け始めるから不思議です。
わざと負け、いかにも悔しそうな顔をするのがポイントです。
私の経験では、数えるのが楽しくて、最後まで片付けた子もいますよ。
1つでも片付け始めたとき、もしくはまだ残っているときに効果があるのが、探し物クイズ。
ママやパパは、両手を望遠鏡のようにしてのぞき込み、「あっ!ピアノのそばに、○○を発見」「あっ、あそこにクマさんのお人形が落ちています」などと言い、その言葉をヒントにして子どもが探す、というルールに。見つけたときのうれしさでどんどん片付けていきます。「あっ、あそこにまだ○○があります」などと、実況中継風に言うと楽しさが増しますよ。
片付けの号令は、園でも家庭でも、大人の都合やタイミングで出すことが多いものです。
子どもは、いつも遊びのいいところで、突然「お片付け」の号令が下りてきます。
大人でも、たとえばカラオケで皆で歌っている時に突然戸が開いて「時間です」と言われたなら、子どものように「え~!」となってしまいますよね。
そうならないよう、お店側は少し前に、「あと〇分です」と告げるようにしています。すると客も心の準備ができ、スムーズにエンディングにかかれる、というわけです。
子どもの片付けも、片付ける少し前に「もうすぐお片付けよ」などと予告しておいてから、号令を出すと、片付ける心づもりができ、突然言ったときとは違う反応が返ってきますよ。
以上のことは、子どもが2~3歳の頃から効果のある方法です。
0~1歳のうちは、「な~いない」と言って、子どもの目の前におもちゃ箱を差し出し、その中へ入れたらOK、くらいの気持ちで。
この時期は「片付けとは元にあったところへ戻すこと」ということを伝えることが大切で、そういう連続が次につながっていきます。
子どもは親の片付ける様子を見て、片付け方を学んでいきます。
子どもが小学校に行くまでは、お片付けは、親子一緒に行なうことをおすすめします。
例えば本なら、片手で本棚の本を押さえてすき間を作ってそこに入れる、とか、おもちゃは放って箱に入れるのではなくそうっと優しく入れる、など、子どもは見ていないようで見ているので、その通りのことをとします。
他のしつけと同じく、片付けも、普段の親の在り方というものもが大きく影響するのです。
50年前の育児雑誌の中のQ&Aコーナーの中に、「子どもがおもちゃを片付けず困っています」というお母さんの悩みが載っていました。
子どものお片付けは、お母さんにとっては永遠のテーマなのかもしれませんね。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
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