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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

「きちんと"あいさつ"できないわが子が気になる…」という悩みに答えます。"できるいい子"を大人が押し付けていませんか?

「きちんと"あいさつ"できないわが子が気になる…」という悩みに答えます。"できるいい子"を大人が押し付けていませんか?
園舎を持たず森での自然保育を実践する兵庫県西宮市の「森のようちえん さんぽみち」の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに、子育てで気になるテーマについて綴っていただく連載。今回のテーマは子どもの「あいさつ」について。
目次

わが子が登園時や人に会ったときにあいさつできないと、親としては気になってしまいますよね。

あいさつされているのに返せなかったり、恥ずかしがって大人の後ろに隠れてしまったり、声が小さすぎたり…つい「"こんにちは"は?」「ごあいさつしなさい!」「それじゃ聞こえないよ」なんていう言葉が出てしまうことも。

でも、そんな「あいさつがきちんとできる子になってほしい!」という親の気持ちには、注意が必要だという「森のようちえん さんぽみち」園長の野澤俊索さん。くわしく教えていただきましょう。

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「森のようちえん さんぽみち」には園舎がありません。その代わり、子どもたちは毎日森に通ってきます。朝、子どもたちに「おはよう!」と声をかけると、あいさつが返ってくる子もいれば、うつむいて無言の子や、違う話を始める子もいます。

あいさつが返ってこなくても、きっと心のなかで唱えているのだろうと思って、私は気にしません。いきなり違う話が始まったときは、きっとそのことで頭がいっぱいなのだろうと思うし、うつむいている子どもの気持ちはまだ森に向いていなくて、お母さんとかお家に後ろ髪ひかれているのかもしれないなと思います。

"表面的なあいさつ"にこだわりすぎる必要はない

「あいさつをすると気持ちがいい」と思うのは大人です。「すすんであいさつしたい」などと思っている子どもは少ないでしょう。

今の気持ちにぴったり合った時に、「おはよう」という言葉が出てくるかもしれないし、出てこないかもしれないし、あいさつは子どもにとってその程度のものです。

子どもたちのコミュニケーションはあいさつから始まりません。気持ちが合うかどうか、という感覚が一番大切なことのように思います。

子どもたちはお互いにすっと横にきて話が始まるし、遊びも始まります。子どもの世界は、感覚と感情の溶け合う世界であり、そこに言葉はあまり意味を持ちません。

だから言葉にならなくても「おはよう。ここにきたよ。今日もきたよ。いろいろ思うことあるけど、今日もひとりでようちえんにいくよ。よろしくね」というようなさまざまな気持ちが心の中にあれば、それでいいと思えるのです。

人の気持ちを考えて、あいさつを自発的にできるようになるのは思春期以降のことと言われています。もし幼児期にしっかりしたあいさつができたとしても、それは表面的なことのように思います。

"あいさつできるいい子"を押し付けるべきではない

もう一つ大切なことがあります。

幼児期の子どもたちの持つ重要な長所として、「すぐに忘れる」ということがあります。忘れることで何度も同じ失敗を繰り返します。そうすると脳の同じ神経回路を何度も使うことになり、その回路の発達と定着を促します。これが"学習する"という重要な機能なのです。

一度聞いたことを忘れずにきちんと行うということは、発達上ありえないことであり、何度も同じ失敗を繰り返すことは幼児期の子どもにとって、いたって健康なことです。

「きちんとあいさつしなさい」と毎回言わないとあいさつができない、ということは発達上とても健康なことなのです。

私たち大人は、子どもが大きくなってから身につければよいことを、小さいうちにできていると「すばらしい」と思い、「いい子」だと感じます。

でも、子どもには子ども時代にしかできないことや、子どもらしい在り方というものがあるのです。それを曲げてまで「いい子」のかたちに整えるようなことは、不健康な成長をもたらす可能性があるので注意が必要だと私は思うのです。

"あいさつが大切なことだ"という気持ちはよくわかります。あいさつをするとお互いに気持ちがいい、という気持ちはだんだんと芽生えてくるものです。今すぐにできなくても、今はそれほど気にしなくてよいのではないでしょうか。

大人が気持ちよくあいさつする姿を見せよう

子どもたちとお散歩をしていると、いろんな人に出会います。お散歩をしているおじいちゃんや、犬を連れている人。そういう人たちに「こんにちは」とあいさつをしていると、いつの間にか子どもたちがまねをして「こんにちは!」というようになります。

いずれ、こんにちは!の大合唱になるので、そんなに言われたら迷惑になっちゃうよと止めることもあります。

大人のまねをしたいという気持ちも、子どもらしい大切な気持ちです。

まずは、大人が気持ちよくあいさつをしている姿を見せることから始めてみてはいかがでしょうか。その時に「なんだか気持ちがいいね」と共感できたら、それがあいさつの本当の意味なのかもしれませんね。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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