まず、心に留めておきたいのは、「悔しい」という感情は、何かに真剣に取り組んだ人にしか訪れない、とても尊い気持ちだということです。 勝っても負けても「どうでもいい」と関心を示さないよりも、負けて本気で悔しがれること。
それは、その子がその瞬間の勝ち負けに、全身全霊で向き合っていた証拠です。 その情熱や集中力は、それ自体が素晴らしい才能の芽です。
親としては、まずその熱い心を「すてきなことだね」と、肯定的に受け止めてあげたいものです。
悔し涙を流している子どもに、いきなり「泣くのはやめなさい」「負けても大丈夫」と正論を伝えても、なかなか心には届きません。まずは、その子の燃え上がるような気持ちに、共感という名の水をそっとかけてあげましょう。
「そっか、負けて悔しかったんだね」「一生懸命やったもんね。勝ちたかったよね」 行動を評価するのではなく、ただ、その子の気持ちに寄り添う。
親に自分の気持ちを丸ごと受け止めてもらえた、と感じたとき、子どもは安心して感情を出し切ることができ、少しずつ落ち着きを取り戻していきます。
子どもの心が少し落ち着いてきたら、そこがチャンスです。 悔しさという強いエネルギーを、次への意欲という名のガソリンに変えていきましょう。
「悔しいね。じゃあ、次はどうしたら勝てるかな?」「もう一回だけ、練習してみる?」
ただ「残念だったね」で終わらせるのではなく「じゃあ、どうする?」と未来に視点を向ける質問を投げかけてみる。 そうすることで、子どもは、悔しさはただ泣いて終わる感情ではなく、次へのステップにつながる力強いエネルギーなのだと、体で学んでいきます。
子どもは親の言葉よりも、その行動から多くを学びます。 勝ち負けのある遊びをするときは、親自身がよき敗者、そしてよき勝者になる姿を見せる絶好の機会です。
もし親が負けたら「あー、悔しい!でも、おめでとう!」と、笑顔で相手を称える。 もし親が勝ったら、「やったー!でも、あの手はすごかったね」と、相手の健闘を讃える。
ゲームのあとに、勝っても負けても「楽しかったね!」と言い合える。 そんな親の姿が、勝ち負けの結果以上に、ゲームそのものを楽しむことや、相手を尊重する大切さを、何よりも雄弁に子どもに伝えます。
子どもの頃の「負けず嫌い」は、将来その子の人生を力強く切り拓いていくための、大切なエンジンになります。 悔しいから、もっと練習する。
できないから、もっと工夫する。 その情熱こそが、学問やスポーツ、芸術、そして仕事において、人を成長させる原動力です。
お子さんは、人よりも少しだけパワフルなエンジンを、心に持っているのかもしれません。 親の役割は、その素晴らしいエンジンを止めてしまうことではなく、上手に運転するためのハンドルさばきやブレーキのかけ方を、一緒に学んでいくことなのです。

わが子が、負けて大泣きする姿を見るのは、親として心が痛むものかもしれません。 でも、その涙は、決して恥ずかしいものでも、弱いものでもありません。
それは、その子の心が「もっと成長したい」と叫んでいる、向上心の結晶です。 まずはその悔しさを、温かく、丸ごと受け止めてあげる。
そして、その熱いエネルギーが「次の一歩」へと向かうように、そっと寄り添ってあげる。 その関わりが、子どもの中に、失敗を乗り越えるための本当の強さを育てていくはずです。
今はまだ小さなその向上心の芽が、いつか立派な大輪の花を咲かせる日を、楽しみにしたいですね。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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