「サンタさんは、いるよ!」「実はね…」。 そう、すぐに答えを出す前にまずはお子さんの話を聞く、探偵の助手になってみましょう。
「どうしてそう思ったの?何か気づいたことがある?」 そう問いを返すことで、子どもは自分が立てた仮説を得意げに話し始めてくれるはずです。
「だって、〇〇くんがいないって言ってた」「プレゼントを置くとき、パパのような気がしたんだもん」。
子どもの話に耳を傾けることで、その子がどのくらい真実に近づいているのか、そして、心のどこかでまだ信じていたいのか、といった気持ちの温度感が伝わってきます。
その子の心の現在地を知ることが、最適な答えへの一番の近道になります。

お子さんの心の準備の度合いによって、答えの選択肢はいくつか考えられます。 どれが正解、というわけではありません。子どもに一番しっくりくる答えを選んでみてください。
まだ心のどこかで強く信じていたい、と感じられるお子さんには「サンタさんは、信じている子のところにだけやってくるんだって。あなたはどう思う?」と、ボールをそっと返してあげる。
信じるか信じないかを、子ども自身の心に委ねる優しい方法です。
多くの子どもにとって、これは最も心躍る真実かもしれません。
「よくぞ気づいたね。大きくなった証拠だね。実は、サンタさんというのは世界中の子どもたちを思う、優しい気持ちそのものなんだ。そして、その気持ちを受け継いだパパやママが、サンタさんのお手伝いをしているんだよ。これからは、あなたも誰かを喜ばせるサンタさんの仲間だね」。
これは夢を終わらせるのではなく、与えられる側から、与える側へとお子さんを誇らしく昇格させてあげる方法です。

どの答えを選ぶにしても、大切にしたいのは「じゃあ、今までのことは、全部嘘だったの?」と、お子さんを悲しませないことです。
「サンタさんという、たった一人の人が配っているわけではない。でも、クリスマスの夜に世界中の子どもたちの幸せを願う温かい気持ちは本当に存在するんだよ」。
サンタクロースは特定の個人ではなく、愛情や、優しさや、与える喜びといった「精神」の象徴、というちょっと難しくて新しい物語をプレゼントしてあげるのです。
それは嘘ではなく、もっと大きな意味での真実です。
真実を知ったとき、お子さんは誇らしい気持ちになるかもしれません。 でも同時に、ちょっぴりがっかりした気持ちになることもあります。 大好きだった物語が終わってしまったような寂しさです。
その気持ちも親はちゃんと受け止めてあげましょう。 「そっか。本当はずっと、いてほしかったよね。ちょっと寂しいね」
その小さな喪失感に寄り添ってあげることで、子どもは気持ちを整理し、次のステップへと穏やかに進んでいくことができます。
「サンタさんは、本当にいるの?」という問いは、お子さんがファンタジーの世界から少しだけ現実の世界へと足を踏み出した成長の証です。 それは親にとって少し寂しいけれど、喜ばしい瞬間でもあります。
大切なのは、その問いに慌てて答えを出すことではありません。 お子さんの成長を喜び、その知性を尊重し、そして新しい物語を一緒に紡いでいくことです。 サンタさんを卒業したお子さんは、次の年からきっと誰かのための最高のサンタクロースになるはずです。
その温かい連鎖こそが、サンタクロースが本当にいる、何よりの証拠なのかもしれませんね。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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