数年前、私がよく通っていたイタリアンレストランで食事をしていたときの話です。 隣の席では、地方から観光に来られたと思われるご家族が楽しそうに食事をしていました。 その幸せそうな姿にこちらも温かい気持ちになり、ご家族が笑顔で退店するのを見送りました。
しかしその後、ふとご家族が座っていたテーブルを見てハッとしました。 椅子の上に大きな百貨店の紙袋が置き忘れられていたのです。 隙間から見えた中身は高級な和菓子…おそらく大切なお土産でしょう。 そういえば食事中に「新幹線の時間が迫っているから急がないと」と焦った様子で話していたのを思い出しました。
「まずい、今すぐ届けないと間に合わない!」と迷わず袋を掴んで立ち上がりました。 厨房にいたお店のマスターも手が離せなかったようで、事情を察すると「ごめん、届けてくれるか!?」と私に託してくれたのです。
そこからは駅まで、無我夢中の全力疾走です。 息を切らして改札付近へ駆け込み、必死にご家族の姿を探しました。 そして、発車ベルが鳴り響く直前の改札前でなんとか見つけ出し、荷物をお渡しすることができたのです。 お父さんは驚きながらも、私の必死な姿を見て事情を察し、「本当にありがとう!」と何度も頭を下げて新幹線に向かわれました。
それから数年後。 時は流れ、私が地方のある会社へ営業に伺ったときのことです。
応接室に通され、社長様と名刺交換をして自社の商品について一通り説明をしました。 すると、不思議なことに社長様は即座に「うん、分かった。今回の件、君に任せるよ」と契約を即決してくださったのです。
あまりに話が早すぎるため、まさか覚えていないだけで以前どこかでお会いしたのだろうかと思い「あの…失礼ですが、今日が初対面ですよね?」と尋ねてみました。 すると、社長様は笑いながらこう言ったのです。
「数年前、君は忘れ物を届けに来てくれただろう?全力疾走で!」
なんと、その社長様はあのとき駅で荷物を渡したご家族のお父さんだったのです。 私の顔を覚えていてくれたこと、そして過去の行動が仕事に繋がったこと。 誠意を持って行動すれば、必ず誰かが見てくれているんだと実感した出来事です。
(男性/50歳/会社員)
※こちらは実際に募集したエピソードをもとに記事化しています。
おやこのへや編集部
心も体も大きく成長する幼児期から小学生の子どもたち。一人ひとりの個性が出てきて、子育てに悩むことも多いこの時期を、おやこで楽しく過ごせるよう、ヒントになる情報を発信していきます。
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