うれしい、楽しい、悲しい、腹が立つ…たくさんの経験を通して複雑な感情も持ち始めてくる幼児期。子どものさまざまな感情に、親としてはなんと声をかけてあげていいのかわからないというシーンもしばしば出てきますよね。
そんなときは、子どもの目線に経った、子どもの気持ちに寄り添うような絵本を、読み聞かせしてあげませんか?
今回は「大好きなのにけんかしちゃった」と落ち込んでいる子どもにむけての一冊です。
***
保育園で大好きなお友だちと遊んでいたら、けんかになっちゃった。
お気に入りのおもちゃの取り合い。
あの子がかいた絵を「ちょっとへーん」ってからかった。
鬼ごっこで、あの子のときだけみんなで隠れたから、怒らせた。
自分のせいでとわかっているけど、なかなか素直に謝れなかった。
謝ったら許してくれるかな。またいっしょに遊べるかな。
成長するとお友だちとの関わりも多くなり、楽しい反面もちろんトラブルも出てきます。記憶力もでてくるため、今日のケンカを明日も引きずってしまうようになるのも幼児期の特徴ですよね。
安易に「謝れば許してくれるよ」とも言えず、落ち込んでいるのに「どうしてそんな意地悪したの!!」と叱ることもできない。
そんなときわが子の気持ちに寄り添う絵本ってありますか?
仲良しのオオカミとキツネ。今日も一緒に遊んでいるけれど、なんだか様子がちょっと変。けん玉をしても、トランプをしても、大負けをしているオオカミ。くやしくて、とうとうこらえきれなくなって、怒鳴ってしまうのです。
「これは、インチキだ!」
怒ったキツネは、家に帰ってしまいます。ところが、すっかりしょげこんでしまったのは、オオカミの方。そうだよね、オオカミだってわかっているのです。彼がそんなことをするがないってことを。すぐに伝えるべきなのは、あの言葉。すぐにでも仲直りするための、あの一言。それなのに、謝ろうとすればするほど、どうしたらいいかわからなくなってしまい……。
仲良くなればなるほど、一緒にいる時間が長くなっていくほど、気持ちがぶつかることなんて、あって当たり前。本当に大変なのは、その後なんだということが、素直な二人によって、丁寧に描き出されます。
だけど、経験を重ねた大人なら知っているんですよね。「仲直りのきっかけ」なんて、案外些細なところに落ちているものです。もし見つからないような時は、親子で一緒に考えてみることだって、ひとつの解決方法かもしれませんね。
『ごめんねともだち』(作:内田 麟太郎 絵:降矢 なな 偕成社)
お友だちが何人も集まって、みんながそれぞれ遊び始めたら、ハプニングはつきものですよね。ほげちゃんたちも、同じです。だけど、本気でぶつかり合いながら、思いっきり遊んでいるうちに、みんなの顔がとても楽しそうになってきて……。
『ほげちゃんとおともだち』(作:やぎ たみこ 偕成社)
遊ぶ約束をしていたのに、待ち合わせが上手くいかなくて出会えなかったリリちゃんと私。ささいなすれ違いをきっかけに、二人は言葉で傷つけあってしまうのですが……。泣いて、笑って、仲直りして。経験をしながら知っていくことも沢山あるのです。
『むねがちくちく』(作・長谷川 集平 童心社)
***
けんかは、どっちにしてもお互いの気持ちをちくちく傷つけてしまうもの。でも、気持ちをぶつけあったからこそ新しい関係が生まれることもあるはずです。
悲しい気持ちのあとにはきっと笑顔がやってくる。
だから、「ごめんね。大好きだよ」って気持ちをまずは大切にしてあげたいですね。
「絵本ナビ」編集長 磯崎園子
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアでも「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)