「非認知能力」とは、思いやり、我慢強さ、やる気などを初めとする点数化できない力の総称。
そして前回の記事では、非認知能力は、子どもが自分で「○○○の力を伸ばしたい」という意志を働かせない限り、たとえ親がどんなにがんばっても伸ばせないということがわかりました。
子どもが意志を働かせるようになるきっかけ作りのために親ができること…それは「ほめる」がポイントとなりそうです。
「子どもはほめて伸ばしましょう」
よく耳にする言葉です。
一方、過去には「子どもは(甘やかさずに)厳しく叱って育てるものだ」という考えもありました。
また、「あなたはほめられて伸びる方ですか?それとも、叱られて伸びる方ですか?」といった自己分析もありますよね。
この自己分析で多くの人たちは「ほめられて伸びる方」を選びがちです。
つまり、ほめられることで意欲が高まり、"ほめられたこと"をもっとできるようにしようという意志も働きやすくなるということです。
そして、このほめられたことが、その子の非認知能力に関することであれば、子どもはそれをもっと自分で伸ばそう(伸ばしたい)と思うようになるわけです。
しかし、この「ほめて伸ばす」というのは、気をつけなければ子どもに届くことなく、ほめ言葉がむなしく飛び交っただけになる場合があり得るんです!
とくに「子どもはほめて伸ばせばいいんだよね」と「ほめて伸ばす=単なるマニュアル」になってしまっている方は要注意です。
そこで、改めて気をつけたいポイントを紹介しておきますね。
「ほめてあげる大人⇔ほめてもらう子ども」という関係では、してあげる側としてもらう側とに分かれてしまいます。
その結果、ほめる側がつい上から目線になってしまうことも…。
大切なのは、「ほめたいこと=ステキなこと&感謝したいこと(つまり、価値あること)」を大人と子どもがシェア(共有)することです。
言い換えるなら、子どもがそのシェアを受け取ってくれなければ、どんなにたくさんのほめ言葉を発しても素通りしてしまいます。
子どもに価値あることを教えてあげようとするのではなく、むしろ大人自身が「ステキ」「ありがとう」と思ったことなどをそのまま率直に表現する方が、よっぽど子どもには伝わりやすく、シェアしやすくなるでしょう。
先ほどのポイントを踏まえると、子どもと価値をシェアする際にあまりゴチャゴチャした説明は必要ありません。
例えば、「あなたは〇〇なところ(非認知能力)が、とてもよかったから、これからもその〇〇なところを伸ばしていきましょうね!」と丁寧に説明するよりも、「いまのすっごいステキ!」「それそれ、ほんとうれしい!ありがとね!」などと、できるだけ子どもがやってのけたそのときに、わかりやすく声かけをした方がグッとくるはずです。
もちろん言葉と一緒に表情もつけてあげてください。きっと表情は、言葉以上に私たちの思いを伝えてくれることでしょう。
このように改めて考えてみると、早速わが子に実践してみたくなりますよね。
そこで、最後のポイントです!
その子の何をシェアする(シェアしたい)のかを具体的にキャッチしましょう!
具体的にキャッチしないで、あいまいに…それでいてなんとかほめようとして…ついつい「がんばったね」と口から出てしまうことがあります。
子どもからすれば、いつの、何について「がんばった」のかわからないまま、大人はほめた気になってしまっている…なんてことになりかねません。
この状態は、到底シェアできているとはいえませんよね。
つまり、子どもとステキな「非認知能力ポイント」をシェアするためには、シェアしたい子どものステキな姿を大人がしっかりキャッチしておく必要があるわけです。
ちなみに、学校の先生や保育士の方々の間では、このことを「見取る」と呼んでいます。
そこで、次回は子どもの姿を「見取る」ための「レンズ」をみなさんが持てるようにお話を進めていくことにしましょう。
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。