最近、子育て中のみなさんにもかなり知られるようになってきた「非認知能力」という言葉。
こんな漢字ばっかりで、しかも「非(あらず)」が先頭に付くもんだから、あまり良い印象を持ちにくい言葉ですが…。改めてこの力とはどんなものかを、いたってシンプルにご説明しましょう。
ズバリ!「認知(点数や数値化)できない力」の総称です。
もちろん、マニアックな話をすれば、もっといろんな説明が必要ですが、まずはこのように理解しておいてください。
ところで、誰かから「あなたの思いやりは60点よ!だからもっとやさしくなりなさい!」と言われたら驚きますよね。
「お子さんのガマン強さは75点です」とか「〇〇ちゃんのやる気は40点ぐらいですよ。もっとやる気出してもらわないと…」と言われても、これまた困りますよね。
これらを点数にしてしまった時点で、「なんで?どうやって点数にしたの?」という疑問ばかり浮かんできてしまいます。
「思いやり」や「ガマン強さ」や「やる気」は点数にできない…つまり、このような力のことを「非認知能力」と呼んでいるのです。
先ほど例に挙げた非認知能力のように、自分の感情のコントロールや相手との関係性に必要な力は「社会情動的スキル」と呼ばれることもあります。
みなさんの中には、どこかで見聞きした方もいらっしゃるかもしれませんね。
そのため、みなさんにとって何よりも気になることは非認知能力がどうのこうの…というより、どうやってわが子の非認知能力を伸ばしていけばよいのか…の方ではないでしょうか?
そこで、今回からみなさんに「わが子の非認知能力をどうやって伸ばしていけばよいのか」についてお話を進めていくことにします。
あっ、でも誤解しないでくださいね。こうすればバッチリ非認知能力を伸ばせます、といったハウツーみたいな伸ばし方は紹介できません(そもそもそんなハウツーなんてないんです)。
さらに言えば、私たちがどんなにがんばっても、わが子の非認知能力を外側から身に付けさせることはできないんです。
だって、自分の内側にある感情のコントロールなんて、私たちが無理やり何らかの訓練をさせるわけにはいきませんよね。
だから、子どもが自分で「〇〇〇〇な力(非認知能力)を伸ばしてみたい!」という意志を働かせてくれない限りは、非認知能力は伸びないんです。
つまり、わが子に体操や英語を身に付けさせたいと習い事をさせたりしますが、そのようにいわゆる「〇〇教室」に通わせてできることとそうでないこととがあるわけです。
特にこの非認知能力は、子どもが自分で伸ばそうとしなければ伸ばせない力であることを忘れないでください(大人も同じです!)。
だから、わが子が「その気になるかどうか」が問われています。
0~3歳頃までは、はっきりとした意志を持って自分の内側にある力を自分で伸ばしていこうとするより、もともと持ち合わせている性格が大きな影響を与えています。
それでも、親などの大好きな大人が喜んでくれれば「もっとやろう」とするし、悲しそうにしていれば「もうやめよう」とするようになります。
そして、3歳以降になるとその"人の反応を見て自分の行動を変える"傾向はますます強くなって、単なる性格だけではなく、自分自身の意志を働かせるようになり始めるのです。
だからこそ、3歳以降はわが子をその気にさせてみてはいかがでしょう?
つまり、親のほうからわが子が自分で非認知能力を伸ばそう(伸ばしたい)という意志を持てるきっかけを提供するんです!
それでは、そのために私たち大人は具体的にどんなことができるのでしょう?
次回以降で詳しくご説明していきますので、お楽しみに!
岡山大学准教授 中山 芳一
1976年岡山県生まれ。岡山大学 全学教育・学生支援機構准教授。専門は教育方法学。大学生のためのキャリア教育に取り組むとともに、幼児から小中高学生の各世代の子どもたちが非認知的能力やメタ認知能力を向上できるように尽力している。9年間没頭した学童保育現場での実践経験から、「実践ありき」の研究をモットーにしている。『家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(ともに東京書籍)ほか著書多数。最新刊は監修をつとめた『非認知能力を伸ばすおうちモンテッソーリ77のメニュー』(東京書籍)。