1人1人の個性に合わせた教育や保育をしてくれた園生活。しかし小学校に入学すると、教室には入学当初こそ補助教師がいるものの、最大35人の6歳児に対して先生は1人。
決められた授業数も進めなくてはならないため、先生は、クラス全体の子どもに向ける「全体指導」と言われる方法で、連絡や指示をすることがほとんどになります。
翌日の持ち物や教室の移動先、連絡帳にメモしておくこと…など、先生のお話に意識が向けられないと、学習に遅れを取ったり学校生活につまずいてしまうことも。 では、入学までにどんなことを準備するとよいのでしょうか。
親はわが子のことを、意外と客観的に見てはいないもの。親との関わりでは会話も動作もしっかりしているように感じるし、生活面もある程度得自立しているなら、心配ないのでは?と思う親も多いでしょう。
子どもと親の関わりは信頼関係ができており、言葉にせずとも意外にきちんと伝わることも多いもの。そのため、親の手助けが気づかないうちに習慣化してしまっていることがあります。
まずは子どもの様子を客観的に観察したり、その年齢ならではの姿を観察したりするために、集団の中で過ごしているときのわが子をよく見てみましょう。
幼稚園や保育園へ通っているのなら、参観日や園行事の時に観察するチャンスがありますよね。わが子とほかの子どもの様子を見比べてみましょう。
このような様子が見られれば、心配はないと言えるでしょう。
保育園や幼稚園など保護者から離れて過ごす時以外にも、わが子を客観的に観察できることもあります。 図書館などの読み聞かせの時間に参加したときや、イベントで何かの体験会などに参加したときなど、大勢の人を集めて進行する時間も、全体的に声をかけられる時間があるでしょう。また習い事でも、わが子の様子を観察できるかもしれません。
親とともに過ごしているため、幼稚園や保育園で過ごしている時よりもさらに、全体指導の声を聞いていなかったり、親に頼りきりだったり、集中せず好きなように動き回ることがあるかもしれません。
こんな時も、ちょっと冷静になり客観的にわが子を意識的に観察しておくことが大切です。
もしも子どもが「全体指導」に対して意識が薄い、集中できていないと感じたとき、親にできることとはどんなことでしょう。もちろん、親だけでは難しいことも多いので、幼稚園や保育園の先生にも相談したり、協力してもらったりして、わが子に意識を持たせていきたいですね。
具体的にどのようにしたらよいのかを紹介します。
「先生なにか言ってるね、なんて言ってるのかな?」
「いま、次はどうするって言ってた? ママにも教えて♪」
など、子どもが聞いていないかも?と感じたときは、少しずつ全体の雰囲気へ意識を向けられるように促す言葉をかけてみるとよいでしょう。
もしかしたらじつは聞いていて、理解しているかもしれません。聞いていても聞いていないように見える、聞いているのに指導の通り行動しない、したくない、できないなど、子どもの心の動きはとても複雑です。
急に全体指導に従うようにはならないもの。焦らずゆっくり、けれど、促したり声をかけたりすることを続けていきましょう。そうすることで、全体指導の場面では、そちらへ視線を向けたり、聞き耳を立てたり、その指導に従おうとするように成長していくはずです。
全体指導だと意識を向けられずまったく聞いていないお子さんや、指導は聞こえているはずなのに、その場から立ち上がってうろうろしたり、おしゃべりをしたり、友達にちょっかいを出してしまう子どももいます。
動きたい盛りの2歳~3歳児であれば、仕方のないことかもしれません。ですが、年中・年長(4歳~6歳頃)であれば、小学校入学を視野に入れた行動をできるよう、促していきたいですね。
うろうろしているお子さんのあとを追いかけて、元の場所に戻る・聞くように促すということをしないでいると、子どもの意識も成長のきっかけを失ってしまいます。
みんなどうしてるかな? 先生なんて言ってる?と意識を向けてあげましょう。
園でも4~5歳ころになると、先生たちも小学校入学に向け、全体指導に慣れていけるよう意識的に子どもたちに関わっていきます。もし子どものことが心配なら、保育園や幼稚園の先生にも子どもの様子を聞いたり、相談したりしてみることをおすすめします。
心配なことを打ち明けるだけで、先生は意識的に関わってくれるようになるはずです。家庭での関わりだけでは難しいことも、集団生活の中で意識した関わりをしてもらえれば、子どもは大きく成長することでしょう。
子どもの意識の問題ではなく、もしかしたら成長発達に心配があるかも…そんな風に感じる時も、保育園や幼稚園の先生に様子を聞いてみるとよいでしょう。
集団生活の中で、
発達に心配がないようであれば、引き続き子どもの意識を高めるように声かけや促しをしていきましょう。発達の違いが見られるようであれば、専門的な働きかけや関わりが必要になります。
いずれにしても、違和感や不安がある場合は専門機関に相談することで、安心できますよ。
このように話すと、とっても心配になる親御さんは多いかもしれませんね。
もちろん、クラス全体や学年全体に向けた指導のとき、注意を向けて指示を取り込む意識はとても大切です。でも入学前になかなか意識が高まらず、全体指導に意識が向かなくても、小学校へ入学し、生活に慣れてくると徐々にできるようになる子どもがほとんどというのも事実です。
保育園や幼稚園で個性に合わせた関わりは理想的ですが、残念ながら現状の小学校では同じようにいかないのが現実。心配しすぎないように、けれど、子どもの自由な動きにあわせてしまいすぎないよう、入学を意識した関わりと生活をしていきたいですね。
炭本まみ
保育士として10年勤務し、今は高校生と中学生を育てるママ。未だに子育てに行き詰ることはありますが子育てのアドバイス記事を書きながら自分も振り返っています。趣味はキャンプと旅行とカメラ。アウトドア記事や旅行記事、保育士や保護者向けのコラムを執筆中。