なぜ?なに?どうして?
子どもからの疑問にはできるだけ答えて、いろいろなことを教えてあげたい!と思うのが親心ですよね。でも、ときには、大人もすぐに答えられないことを聞かれることも。
わが子の知りたい気持ちに親はどう寄り添うべきか、「森のようちえん さんぽみち」(兵庫県西宮市)の園長・野澤さんに教えていただきます。
***
3歳を過ぎる頃からはじまる「なんでなんで?」の時期。そして4~5歳になる頃には、外の世界のいろいろなことに、より具体的な疑問を抱くようになります。この時期は"知りたい"という気持ちと共に、自分で考えて解釈したり理解したりができるようになってくる時期でもあります。
「森のようちえん さんぽみち」の子どもたちと森で遊んでいたときのこと。
子どもたちがカブトムシを捕まえて私のところに見せにきました。
「ねえ、カブトムシってなにたべるの?」
子どもたちは目をキラキラさせながら聞いてきます。
「なんだろうね。どこにいたの?」と聞き返すと、
「あっちのきのしたの、はっぱのなか!」とのこと。
「よく見つけたねえ。じゃあ、行って見ようか!」
子どもたちは手を引いて「こっち、こっち!」とうれしそうでもあり、得意そうでもあります。
こうやって、子どもたちの問いかけを事の始まりとして、子どもたちに付き合い始めてみましょう。
しばらく、どこにいたのかとか、他にはいないのかとか、話しながら付き合っていると、今度は土の中に別の生き物を見つけました。それからそばの木には樹液が出ていてカナブンがたくさんついていることもわかりました。
「これをたべるんじゃない?」という子もいるし、もう別の虫に夢中になっている子もいます。
「そうだねえ。そうかなあ」と言いながら付き合っているうちに、ゆっくりと時は流れていきました。
子どもたちが外の世界に目を向け始め、いろんなことに疑問を抱くのは、知の探求の始まりです。子どもたちは知識そのものを手に入れることよりも、"探求することそのもの"をおもしろいと感じています。
ひとつの疑問に答えても、なんで?なんで?が尽きないのは、答えを知るよりも、もっと探求していきたいという気持ちの表れでしょう。そこで私たち大人は、子どもたちの探求そのものに付き合ってあげると良いと思います。
なんで?どうして?という問いかけには、なんでだろうね、どうしてだろうね、と一緒に考えることをしてみてはいかがでしょうか。それが、子どもたちの知りたい気持ちに寄り添うことになると思います。
そんな探求の結果、もし間違った知識にたどりついても、それを正す必要はありません。子どもたちにとって知の探求そのものがおもしろい、楽しいと感じることができたのならそれでいいと思います。
知識の間違いを指摘することは、こうした探求そのものを否定してしまいかねません。「よく考えたね」と声をかけたらそれでよし。そして、また次の探求が始まることでしょう。
知りたい気持ちを満たしていくときは、図書館などに行って一緒に調べたり、考えたりすることもとても良いと思います。
新しい知の探究をすることがどんなに楽しいかを知る子どもたちは、学ぶことの喜びを知るようになります。それは結果のための勉強ではなく、知ることそのものの喜びです。
そして何より子どもたちは、大人が一緒に考えてくれたことへの喜びを感じていることでしょう。
先日、子どもたちと動物園に行ったときのことです。
フラミンゴを見ていると、羽根の色が違うものがいることに気が付いた子どもたち。ピンク色のフラミンゴの中に、白と茶のまだら模様のものがいたのです。子どもたちは「あれだけちがう!」と言って「なんで?」が始まりました。
「べつのしゅるいかな?」
「あれはこどもなんだよ」
「よごれてるんじゃない?」
「けがをしたのかも」
「ふるいんじゃない?」
そして「ねえ、なんで?」と聞く子どもたちに、
「さて、どうなんだろうね」
と言って考えながら、みんなで次の動物を見にいくのでした。
正しいかどうかよりも、これだけ想像力を働かせてあれこれと考える姿がとても素敵なことだなと思います。
大人だからと言ってなんでも知っているわけではないし、子どもよりも優秀である必要もありません。分からないことだらけのこの世の中ですから、子どもたちと一緒に「なんで?なんで?」と考えることを楽しんでみるといいと思います。
そうして、考えたり調べたりする楽しさを大人と一緒に味わった経験は、子どもたちのこれからの学びの源になるのですから。
森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索
NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。
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