子どもに優しく接したいと思っているのに、作った食事を「えー食べたくない」「〇〇の方がよかった」と言われたら「じゃあ食べなくていい!」、遊びに出かけるときに、子どもがなかなか動かないと「じゃあもう行かなくていい!」などときつく言ってしまうことがあります。
パパに比べて圧倒的に自分が怒っていて、よく自己嫌悪に陥ってしまいます。
今回のテーマは、「すぐ子どもにイライラしてしまう、パパに比べて小言も多くなってしまう」というママに多いお悩み。
子どもと一緒にいる時間がどうしても長く、そのためしつけに対する責任感をより強くもちやすいママたちゆえの悩みともいえるかもしれません。
そこで今回はそんな悩みにどう向き合えばいいのか、原坂さんに教えていただきます。
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やさしいお母さんになろう…子どもが生まれたとき、母親は誰もがそう思います。
でも、子どもが大きくなるにつれ、そうは言っていられなくなりますよね。そんなときでも、気持ちは「やさしいお母さんでいたい」と思ったあのときと同じ…。
わかります。本当は怒りたくはないけど怒ってしまうのですよね。
今日はそんなお母さんたちのお悩みを解決したいと思います。
先日、4人のママさんとリモート座談会があり、普段の子育ての中でのお悩みを話し合いました。みなさんいろんな"困った"がありましたが、共通する悩みが1つありました。
それは「子どもをすぐに怒ってしまう」ということです。
それは私は、4人の悩みというより、日本のお母さん全員の悩みのように思います。
私は思います。
そもそも、母親は子どもを怒ってはいけないのでしょうか?
私の答えは「NO」です。
それどころか、「世界一わが子を怒ってもいい人」だと思っています。
確かにお母さんというのは子どもをよく怒るかもしれません。
平均的なお母さんで、回数にすればもしかしたら1日30回くらい怒っているかもしれませんね(笑)
なのにどうして怒っていいかと言うと、確かにお母さんは怒るけれども、子どもが喜ぶことを、じつは怒った回数の何倍もしているものだからです。
どういうことかと言うと、たとえば、「寝る時にそばについてくれる」「体を優しくトントンしてくれる」「絵本を読んでくれる」「手をつないで歩いてくれる」「公園で遊ぶのを見ていてくれる」「お店で風船を配っていたら並んでくれる」「電車に乗ると景色が見えるところに行ってくれる」「どこかが痛い時さすってくれる」「のどが渇いたと言えば飲み物をくれる」「なくしたものを一緒に探してくれる」…ああもう書ききれません。
そうです。毎日当たり前のようにしているその1つ1つが、子どもにはとてもうれしいことなのです。
多少怒られたとしても、それを帳消しにするほどうれしくなること、楽しくなることをしてくれる人、それがお母さんです。
今から40年前、保育士になって初めての誕生会で係になり、誕生児にインタビューをし、お母さんのことを聞きました。
何人目かの質問で、「お母さんは怒ったら怖いですか?」と聞くと、子どもは「うん。でも大好き!」と答えました。
「お母さんは怒ったらこわい。でも大好き!」。
それが子どもの気持ちです。40年前も、今も、いえ、おそらく100年前も100年後も。
子どもをよく怒ってしまうことを反省するお母さんは多いものです。
確かに中には1日30回どころか、ちょっとしたお小言も入れると50回以上怒っている人も、もしかしたらいるかもしれません。
それでも私は思います。
仮に50回怒ったとしても、怒った時間を合計すれば何分になりますか?一回につき平均20秒怒ったとしても、20秒×50で1000秒=約16分です。1日は1440分なので、怒った時間は1日の中のわずか90分の1。怒っていない時間は約1424分もあります。
子育てで大切なのはその1424分、つまり「怒っていない時間」の関わり方なのです。
子どもをよく怒ってしまうと悩むお母さんは、怒っているとき以外の関わり方を今一度振り返ってみるとよいのではないでしょうか。
お母さんだって人間です。ときには、イライラしてしまうこともあります。
そんなとき、気持ちに余裕がないとつい怒ってしまうものです。
そうなったときはどうすればいいのでしょうか?
次回は、ついイライラしてしまったとき、怒りたくなったときにどうすればいいか、お伝えしたいと思います。
こどもコンサルタント 原坂 一郎
1956年、神戸市生まれ。関西大学社会学部卒業。神戸市内で23年間6か所の保育所勤務を経て、2004年「こどもコンサルタント」に。笑いと笑顔をキーワードに、子どもおよび子育てに関するさまざまな研究・執筆・講演を全国で展開。『読むだけで子育てがうんと楽しくなる本』(春陽堂)、『男の子のしつけに悩んだら読む本』(すばる舎)ほか著書多数。
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