幼児期こそ考えたい。「食」べる力を「育」てる「食育」について親として知っておきたいこと

幼児期こそ考えたい。「食」べる力を「育」てる「食育」について親として知っておきたいこと
子育ての上でよく聞く言葉「食育」。食育基本法では「生きるうえでの基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるべきもの」と位置づけられています。食育を家庭で実践するにあたって親としての心構えとは?その方法は?また食育によって身につく力とは?などわが子の食育に関する疑問にお答えします。
目次

食べることは生きること。食べる力を育てることが生きる力を育てます

子どもを見ていると、毎日食べているものがその体の血となり、肉となっていると実感しますよね。いっぽうで、社会や世界がめまぐるしく変化し、人々が忙しい毎日を送るようになり、「食」の大切さを見失いがちになっているなか登場したのが、2005年に制定された「食育基本法」です。

この食育基本法が制定された背景には

  • 栄養の偏りや不規則な食事などによる肥満や、それが原因となっている生活習慣病の増加
  • 食の安全や信頼にかかわる事故の発生や、自給率の低さ
  • 日本の食文化への理解や実施の低さ
  • 食の安全、安心に対してのゆらぎ

などがありました。こうした課題を解決するために、2000年代初頭から注目が集まるようになったのが「食育」なのです。

知っておきたい「食育基本法」

食育基本法の目的は第1条に定められています。

第一条(略)食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現 在及び将来にわたる健康で文化的な国民の生活と豊かで活力ある社会の実現に寄与することを目的とする(出典:食育基本法)

つまり、食育によって①健康で文化的な国民の生活と、②豊かで活力ある社会という2つを実現させていこうというわけです。

そして、食育基本法には7つの基本理念があります。

1)国民の健康の心身の増進と豊かな人間形成
   L食に関する適切な判断力を獲得すること
   L生涯にわたり健全な食生活を送れるようになること
   L国民が心身が健康で豊かな人間形成が図れることになること

2)食に関する感謝の念と理解
3)食育推進運動の展開
4)子どもの食育における保護者、教育関係者の認識

5)食に関する体験活動と食育推進活動の実践
   L積極的に子どもに食に関する体験活動を推進させていくこと

6)伝統的な食文化、環境と調和した精算等への配慮および農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献
   L食糧需給について国民に広く理解してもらうこと
   L生産者と消費者の交流を活性化すること
   L農山漁村を活性化すること
   L食料自給率を向上させること

7)食品の安全性の確保等における食育の役割
   L食品の安産性などの情報を提供したり意見交換をすること
   L食に関する知識と理解の増進を図ること
   L適切な食生活を実践していくこと
   L国際的にも連携していくこと    

国民の健康の心身の増進と豊かな人間形成ためには「食に関する感謝の念と理解」が欠かせないこと、そして保護者や教育関係者の役割が重要であると、食育基本法は定めているのです。

毎食の「いただきます」から国全体の自給率まで、食育を通じて、日本人が食と向き合うことにより健康なからだを手に入れ、食に関する幅広く深い理解を身に着けていくことの大切さを説いている法律といえるでしょう。

楽しく食べる子どもに:食を通じた子どもの健全育成の目標とは

厚生労働省の「食を通じた子どもの健全育成(ーいわゆる「食育」の視点からーのあり方に関する検討会」報告書では、

現在をいきいきと域、かつ生涯にわたって健康で室の高い生活を送る基本としての食を営む力を育てるとともに、それを支援する環境づくりをすすめること

を食を通じた子どもの健全育成のねらいとしています。また

食を通じた子どもの健全育成は、子どもが広がりをもった「食」に関わりながら成長し、「楽しく食べる子ども」になっていくことをめざします。

と述べられています。

子どもの健やかな心と身体をはぐくためには、「なにを」「どれだけ」食べるかということとともに、重要になるのが「いつ」「どこで」「誰と」「どのように」食べるかということ。

そして、子どもは「楽しいから続く」「楽しいから食べる」「楽しいから興味をもつ」 ため、「楽しく食べる子ども」に育てることが子ども時代の食育の大きな方針となるのです。

そのためには心がけたいことは以下のこととなります。

1.食事のリズムがもてるようになること
空腹感や食欲がキーワード。また生活習慣との関わりが大きいため、起床・就寝時間や食事時間などの環境を整える必要があります。

2.食事を味わって食べるようになること
自分で食べようとする意欲を大切にするために、触ってみたり、目で見たり、においを感じたりと五感を使っておいしさの発見を繰り返す経験が大切になります。

3.いっしょに食べたい人がいること
家族や仲間などとの楽しい食事を経験することで、安心感や信頼感も深めていきます。

4.食事づくりや準備に関わるようになること
家族や仲間のために食事を作ったり、準備することで、満足感や達成感を得る経験も必要となります。

5.食生活や健康に主体的に関わるようになること
遊びや絵本などを通じて食べ物や体のことを話題にする経験をたくさん増やすことが大切です

幼児期に育てたい「食べる力」とは

授乳期・離乳食を経た幼児期(2歳~5歳)は、一生を通じての食事リズムの基礎を作る大切な時期となります。また、活動範囲も広がり、好奇心も強くなるため、食への興味や関心がもてるようにたくさんの食の体験を広げていくとよいでしょう。

そうした発育・発達段過程に応じて育てたい幼児期の「食べる力」とは以下の通りです。

幼児期の「食べる力」

  • おなかがすくリズムがもてる
  • 食べたもの、好きなものが増える
  • 家族や仲間と一緒に食べる楽しさを味わう
  • 栽培・収穫・調理を通して、食べ物に触れはじめる
  • 食べ物や身体のことを話題にする

いかがですか?このくらい具体的な項目になると、だんだんわが子にどんなことを伝えていけばいいのか、見えてくるのではないでしょうか?

幼児期の食育:「食べる力」を育てるために親として大切にしたいこと

自ら「食べたい」という意欲が強くなっていくのが、幼児期の大きな特長です。また、たくさんの体験を通じて、「好き」や「きらい」、「楽しい」「うれしい」といった感情も大きく育ちます。特に、3歳以降はお友だちとの関わりも増え、「いっしょに食べるとおいしい」という社会食べという経験も。

そんな時期だからこそ、たくさんの「たのしい」「おいしい」「うれしい」体験をさせてあげたいですよね。

適量、バランス、栄養素…。幼児食のきほんを学ぼう

食べることがダイレクトに関わる身体の発達。成長著しいこの時期は、量や栄養などバランスの取れた食生活をきちんと送りたいものですよね。

3歳〜5歳の子どもが1日に必要なカロリーは、女児で1,250kcal、男児1,300kcal。1日の食事量の中で必要な栄養素のバランスは、大人と子どももそれほど大きな変わりはありません。そのため、大人のおよそ半分強というイメージで適量を考えていくとよいでしょう。

また、この時期は3回の食事量で必要のカロリーを摂取するのはなかなかむずかしいため、おやつを補食ととらえ、4回の食事でバランスをとっていく必要があります。

一日3~4食で朝・昼・夜のごはんは主食+主菜(メインおかず)+副菜(サブおかず)+汁物を基本に、下記の食品群を摂取できるように心がけたいものです。

幼児期の一日にとりたい食事量と食品群一覧

とはいえ、なかなか理論どおりにいかないのが子育てでもあります。これらはあくまでも目安として捉え、昼は野菜が少なかったから夜は野菜を多めにしよう、昨日はお肉だったから、今日はおさかなにしよう、最近海藻をたべてないからわかめのみそ汁にしようなど1日単位そして2~3日単位でで考えてみると、気持ちが楽になるでしょう。

管理栄養士が教える・幼児食と食育のきほん

連載:管理栄養士が教える・幼児食と食育のきほん

2020.10.26~

一番の悩み「好き嫌い」を克服!好きな食材、食べられる食材を増やすには?

自我が芽生え、好みがはっきりとしてくると出てくるのが食べ物の「好き嫌い」です。中でも、咀嚼力が弱く味覚が発達途中にあるため、この時期「野菜」が苦手な子は多いもの。

嫌いなものでも、食卓に出し、親がおいしそうに食べていれば、いつの間にか食べられるようになることも。好き嫌いは、無理強いせず、おやも慌てることなくのんびりおおらかに構えておけばよいでしょう。

それでも、栄養もあるし食べてほしいなというときには、子どもたちがその食材を嫌いな理由をさぐり、それを解決した形で食卓に出してみてはどうでしょう。たいていは「見た目がいや」(特に緑色)、「噛み切れない、のみこめない」という理由が多いのです。

そのため、こまかく刻んで隠してみたり、くたくたに煮てやわらかくしたり、揚げたり油と和えたりして飲み込みやすくしたり。ちょっとした工夫で「食べられた!」となることも多いのです。

連載:管理栄養士おすすめ!野菜がもっと好きになるレシピ集

管理栄養士おすすめ!野菜がもっと好きになるレシピ集

2020.09.02~

食への興味・関心を育てるには”おやこで料理”が一番の近道

おいしいものが好きな子どもは、おいしい料理を作っている大人の姿に興味津々!そんな風に「やってみたい!」という子どもの好奇心が芽生え始めたら、さっそくおやこクッキングをスタートしましょう!

ふだんの食事は、子どもはおなかがすいていたり、親はどうしてもバタバタと忙しいので、おやこともにあまりいいタイミングではありません。それよりも、おやこともに心の余裕のある休日のおやつから始めてみるのがオススメです。

握力が弱かったり、指先や手首の動きがまだ器用でなかったりと、この時期ならではの注意点があるので、すべて子どもに任せようとせず、プロセスの中でメインを張れるような作業をお願いすると、子どもも任されてうれしく、できて達成感を味わうことができるでしょう。

幼児期におすすめの調理ポイント

  • 混ぜる
  • つぶす
  •  
  • 型を抜く
  •  
  • 皮をむく
  •  
  • 丸める

これらの作業ができるレシピは案外たくさんあります。むずかしいものでなくても、おやこでつくったお料理は最高においしくかけがえのない想い出になりますよ。

連載:3歳からはじめる★おてつだいキッチン

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2020.08.29~

育ててみると、その食材が好きになる!

食材への興味・関心を引き出すには、その食材の生産地を訪れてみたり、自身で育ててみたり、収穫してみるのもおすすめです。好奇心の強くなる幼児期は、いつも食べているものの育つ姿をみるだけでも、好奇心が大いに刺激され、食への意欲が高まることでしょう。

ベランダやおうちのなかで、何か野菜を育ててみたり、牧場などを訪れてみたり。特に食の生産現場と離れて暮らす現代の子どもたちにとって、社会や自然のしくみをまなぶいい体験といえるのです。

【簡単食育体験レポ】たった1週間で飽きずに楽しめる!世界で人気のスプラウト栽培に子どももワクワク♪

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2020.10.12

由来を知ったり、旬を知ったり。季節行事といっしょに、食べ物も楽しもう

もう一つ、幼児期に忘れてはいけないのが「歳時記を楽しむこと」。クリスマスやハロウィンなどが外国由来のイベントがさかんですが、お正月やお月見など日本古来の伝統行事は、日本文化を理解し、また季節を楽しむきっかけにもなります。

そうした季節行事はかならずといっていいほど、その行事ならではの食べ物があります。その記事の旬のものだったり、願いが込められていたりとさまざまな由来も。そんな由来をわかりやすく話せば、日本文化や旬の理解も深まるでしょう。

おやこで楽しむ暮らしの歳時記

連載:おやこで楽しむ暮らしの歳時記

2020.09.30



食育といっても難しいことではありません。食べ物への感謝の気持ちを込めて、毎日「いただきます」「ごちそうさま」と言うだけでも、大きな一歩。ぜひおやこみんなで、食べる力をつけていきたいですね。

<参考文献>
・食育基本法(農林水産省)
・食育の推進(農林水産省)
・「食を通じた子どもの健全育成(ーいわゆる「食育」の視点からー)のあり方に関する検討会」報告書(厚生労働省)

子育てに役立つ名言を集めた、おやこのくふうインスタグラムは @oyako_kufu

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