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のんたん先生教えて!子育ての気になる…どうすべき?

新学期、わが子が新たな環境になじめるか不安…そんなママ・パパたちに伝えておきたい、たった一つの大切なこと

新学期、わが子が新たな環境になじめるか不安…そんなママ・パパたちに伝えておきたい、たった一つの大切なこと
兵庫県西宮市の「森のようちえん さんぽみち」の園長・野澤俊索さんに、子育てで気になるテーマについて綴っていただく連載。今回のテーマは、「入園による子どもの旅立ち」「冒険教育」について。
目次

春。来たる4月から入園で新しい環境に踏み出す子も多いことでしょう。

初めて親元から離れて自分の世界へと一歩踏み出すわが子。
そんなわが子の門出をうれしく思う一方、「ひとり離れて園で過ごせるかな」「新しい環境になじめるかな」「お友だちできるかな」と心配している親御さんもいるかもしれませんね。

そんなとき親は子どもをどう見守ればいいのか…自然保育を実践する「森のようちえん さんぽみち」の園長"のんたん"こと野澤俊索さんに教えていただきました。

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どんな子にも「初めての登園の日」はやってきます。

ひとりで離れるのがさみしくて、涙が止まらなくなってしまうこともしばしば。泣き叫ぶわが子を園に預けて、うしろ髪をひかれながら帰っていく時に、罪悪感をもったり、子ども以上に寂しくなって涙をこぼしてしまったりする人も多いのではないでしょうか。

子どもからすると、生まれてからずっと一緒にいた人のそばから外の世界に一人で歩き出すという、社会への旅立ちの日です。それはこの世界へ一歩を踏み出す大冒険のはじまりなのです。

心の揺れが子どもを成長させる

冒険教育では、心の安全地帯を“コンフォートゾーン(Cゾーン)”とよびます。人はCゾーンにいるとき、安心してリラックスできます。自分のお家にいるとか、抱っこしてもらっているとか、そういう状態です。

Cゾーンの外側には“パニックゾーン(Pゾーン)”が広がります。不安や恐怖が強すぎてパニックになってしまうような状態です。見知らぬ土地で迷子になってしまうとか、高すぎる木の上で震えてしまうとか、そういう状態です。

そして、CゾーンとPゾーンの間に“ストレッチゾーン(Sゾーン)”という緩衝帯があります。ここでは安心もできないけれど、パニックになるほどではない、ドキドキする状態になります。

ドキドキは、時にはワクワクにも変わります。安心している時に比べて、不安や興奮、恐怖や興味、おもしろさやうれしさなどを感じて、心が強く揺れ動きます。

CゾーンからSゾーンに出ることを、心の冒険と呼びます。「一歩、踏み出してみよう!」というときに踏み出すのはここです。

子どもたちがSゾーンに出てはCゾーンに帰り、また出ていくということを繰り返すと、いつの間にかSゾーンに出てもドキドキしなくなります。これは「SゾーンだったところがCゾーンに入った」つまり「Cゾーンが広がった」と言います。私たちは、これを“成長”と呼びます。心の揺れは、子どもたちの成長をもたらすのです。

たとえば木登りをしていると、前は怖くて登れなかったところにも、登れるようになっていきます。そこまで登ることを繰り返しているうちに、いつの間にか登れるようになっていくのです。

同じように、おうちの人から離れて一人で登園することも、何度か繰り返すことでCゾーンに入ります。なかなか新しい環境になじめなかったり、新しいお友だちができなかったりするのは、まだこの冒険を繰り返している途中だからだと言えます。

成長をもたらすために大切なことは、Sゾーンに出ることと、Cゾーンに帰ることを繰り返すことです。

"がんばって帰ってきた"子どもたちをしっかり受け止めて

園に行ってがんばってきたとき、お家に帰ると反動で一時的に退行(赤ちゃん返り)が起きることもあります。泣き叫んだり、わがままになったり、興奮しすぎたりして不安定になります。

そのとき、しっかりと受け止めてあげることで、子どもたちはお家やおうちの人の側が自分にとって安心できるCゾーンであると確信できます。子どもたちは「安心して帰るところがある」というその確信を持つことで、また冒険の旅に出発することができるのです。

新しいお友だちに声をかけたり、自分の遊びを見つけたりはその次のこと。 園という場所が安心できるCゾーンになり、その子ども集団が安心できる自分の居場所になった時に、ようやくそこから次の一歩を踏み出すことができます。

「いつも新しい環境に身を置くこと」は人を成長させます。そのとき、成長の土台となるのは、いつでも帰ってこられて安心できる自分の居場所です。

それが、おうちであり、お母さんお父さんらの存在であるように、子どもたちをやさしく受け止めてあげてください。

お腹の中というCゾーンから、出産を経て外の世界に飛び出したとき、赤ちゃんは泣いていたはずです。それでも、お母さんもお父さんもその赤ちゃんを優しく抱きしめ、うれしく、いとおしく思ったはず。

いま、そのそばから子どもたちが離れていくとき、また泣いてしまう子どもの姿を見るかもしれません。それは、この世界への新しい旅立ちの姿であり、第二のお産のようなものです。

子どもたちが生まれたあの日のように、いまこの日を新たな成長の一歩を踏み出した日として前向きに受け止めてあげてほしいと思います。

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執筆者

森のようちえんさんぽみち園長 野澤 俊索

NPO法人ネイチャーマジック理事長、兵庫県自然保育連盟 理事長、森のようちえん全国ネットワーク連盟 理事
神戸大学理学部地球惑星科学科 卒業。
兵庫県西宮市甲山にて、建物を持たず森を園舎とする日常通園型の自然保育「森のようちえんさんぽみち」を運営して10年。今では2歳から6歳までの園児25名と一緒に、雨の日も風の日も毎日森へ出かけていく日々。愛称は"のんたん"。森のようちえん全国連盟では指導者の育成を担当している。
プライベートでは2歳の娘の子育ても楽しみにしている。

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第2・4木曜日 更新

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