「ほかの子と比べてしまう」親の心に、まずはじめに必要な重要なこと

1. 比べたくなくても、比べてしまうのが「親心」

「お友だちはもうオムツが外れたのに…」 「同じクラスのあの子、あんなに落ち着いてるのに…」 「うちの子は、まだ人見知りが激しくて…」

子育てをしていると、どうしてもよその子と自分の子を比べてしまうことがありますよね。 頭では「この子はこの子のペースがある」と分かっていても、心がザワザワしてしまう。

そんなとき、まず知ってほしいのは「比べてしまうのは、ダメなことではない」ということです。

人は誰しも「わが子には幸せになってほしい」と願うもの。 だからこそ、つい“うまくいっているように見える他の子”と比較して、自分の子どもを心配してしまうのです。

つまり「比べてしまう気持ち」は、愛情の裏返しでもあるのです。

2. 比較の“苦しさ”が生まれるのは、自分を責めているから

よその子と比べたとき、ただ「うらやましいな」と思うだけでなく、

「うちの子はできていない」 「ちゃんと育てられていないのかもしれない」 「私の関わり方がいけなかったのでは」

と、気づかぬうちに自分を責める気持ちへとつながっていませんか？

でも、子どもが「今どんな姿でいるか」は、決して親の“手腕”だけで決まるものではありません。

性格も、気質も、環境も、一人ひとり違うのが当たり前。 成長のタイミングにも個人差があり、先にできることもあれば、あとでグンと伸びることもあります。

「今のこの子」の姿は、あなたの“せい”ではなく、“この子の今”でしかないのです。

3. “違い”に目を向けることで見えてくること

保育の現場でも、子どもたちを見ていて感じるのは「みんなちがって、みんなすばらしい」ということです。

ある子は言葉が早いけれど、運動が苦手。 ある子は集団行動が得意だけど、感情のコントロールが難しい。 ある子は慎重だけど、深く物事を考える力を持っている。

ひとりとして、まったく同じ子はいません。

そして、どの子にも“その子らしい良さ”が必ずあります。

親の目には見えづらくても、子どもの内側には「その子らしさの芽」がちゃんと息づいていて、あるときふっと表に出てくるのです。

比べることで見落としてしまいがちな「この子だけの輝き」。 それを見つけることこそ、親にできる大切なサポートなのです。

4. “今のこの子”を、そのまま見つめる練習を

他の子と比べて不安になったとき、試してほしいことがあります。

それは「わが子を、わが子として見つめなおすこと」です。

・今日、どんな顔をしていた？

・どんなことを話してくれた？

・何に夢中になっていた？

・どんなことで笑った？泣いた？

「今この子がどんなふうに生きているか」を丁寧に思い返すと、 ほかの誰かと比べなくても、この子の姿そのものに価値があると気づけることがあります。

比較の目を外側に向けるのではなく、内側＝おやこの関係に戻してみる。 それだけでも、心は少しラクになるはずです。

5. 子育ては“ゴール”ではなく“旅”である

「比べることをやめたい」と思っても、人の心は簡単には変わりません。

だからこそ、まず持っていてほしいのが「子育てにおいて大切なのは“今できているか”ではなく、“これからどんなふうに育っていくか”を見守る視点」です。

子どもは、たった1年でも驚くほど変わります。

“できないこと”が“できること”に変わる日が、ちゃんとやってくる。 それは比べるのをやめた瞬間、静かに始まることもあります。

比べてしまう気持ちは否定せずに、「じゃあ、私はこの子とどんな旅をしていこうかな」と考えてみてください。 焦らず、ゆっくり、寄り添いながら。

まとめ：違いを受け止めることは、「愛すること」と同じ意味

他の子と比べてしまうのは、それだけわが子のことを大切に思っているから。 でも、比べることで苦しくなってしまったら、それは親にとっても子どもにとってもつらいことです。

子どもは「比較」の中で育つのではなく「信頼」の中で育ちます。

「この子は、この子のままでいい」

そう思える瞬間が、子どもの心に“安心”という土台をつくってくれます。

ママ・パパのまなざしが、この子の自己肯定感の“はじまり”になる。 だから今日も、ありのままのわが子と、ありのままの自分を、少しだけ優しく見つめてみてください。

ライター / 監修：でん吉（保育士）