「早くお片付けしなさい」「今日は公園、行けないよ」「もう寝る時間だよ」 そんな大人の声かけに対して、返ってくるのが「なんで?」という一言。
ときにそれは、素直な疑問。 ときにそれは、抵抗や反発のサイン。
その「なんで?」に、ついイラッとしたことはありませんか? 「言い訳しないで早くやって」「なんでって…そういう決まりだから!」
でもじつは、この「なんで?」という言葉。 子どもなりの“心の声”が隠れているサインかもしれません。
保育現場でも、子どもたちはよく「なんで?」と言います。 その裏には、大きく分けて2つの種類があります。
たとえば、「なんで雨って降るの?」「なんでおにぎりって三角なの?」というような「知りたい!」という気持ちからの問い。 これはまさに、学びのはじまり。
子どもにとって“世界がどうなっているか”を探る、大切な感性の一部です。
「なんで寝なきゃいけないの?」「なんで今日は遊べないの?」といった問いには、気持ちの裏づけがあることが多いです。
たとえば「もっと遊びたかったのに」「やりたくないなぁ」「急に中断されて悲しい」 そんな感情が言葉にならないまま、なんで?という一言になって出てくるのです。
大人は、「なんで?」と聞かれると、つい「理由を説明しなきゃ」と思ってしまいがちです。 「早く寝ないと明日早いからでしょ」「今日は買い物で忙しいから、公園には行けないの」
もちろん、それも大事なことです。 でも子どもが本当に求めているのは「理由」よりも「気持ちをわかってほしい」ことなのかもしれません。
「もっと遊びたかったんだね」「行きたかった気持ち、残念だったね」「楽しいことが終わるの、イヤだったんだね」 まずはその気持ちに共感することが、心のドアを開くカギになるのです。
気持ちに共感してもらえた子どもは、結果的にスムーズに切り替えられることがあります。 それは「気持ちが認められた」という安心感が、心の中の引っかかりをほどいてくれるから。
「わかってもらえた」「気持ちに気づいてもらえた」 そんな経験を重ねることで、子どもは自分の気持ちを言葉で伝えてもいいんだと学びはじめます。
反対に、「どうして?」「なんで?」を毎回はねつけられてばかりだと、やがて子どもは「言ってもムダ」と感じ、気持ちを表現する力を縮こませてしまうことも。
子どもの言葉に耳を傾けるとき、保育の現場でもよく使う言葉があります。 それは「聞く」ではなく「聴く」という姿勢。
「聞く」は一方的に音として受け取ること。 「聴く」は、その奥にある想いや意味をくみ取ろうとすること。
「なんで?」という子どもの声も、「また言い返してる…」と受け取るか「どんな気持ちがあるんだろう?」と感じるかで、関わり方が大きく変わっていきます。
もちろん、すべての「なんで?」に答えるのは難しい日もあります。 忙しくて余裕がないとき、何度も言われてついイライラするとき「もう無理!」と思うこともあるでしょう。
でも、たったひと言の“気持ちへの共感”だけでも、子どもにはちゃんと届きます。 「今はできないけど…こうしたかったんだよね」「そう思うのも、わかるよ。でも今はこうしよう」
それだけで、子どもの心の中には「わかってもらえた」という種が残ります。

子どもの「なんで?」には、その子なりの気持ちや考えがたくさん詰まっています。 ときにそれは、親を試しているようにも聞こえるかもしれません。
でもじつは「わかってもらえるかな?」という、小さな心のノックでもあるのです。 そのノックに気づいて、ほんの少し立ち止まって“聴く”ことができたら、子どもとのコミュニケーションは、ぐっとあたたかくなります。
大人の答えが完璧じゃなくてもいい。 まずは、その言葉の奥にある“心の声”を受けとめようとすること。
それが、子どもにとっての信頼の積み重ねになっていきます。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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