上の子に、つい「お兄ちゃんだから」と言ってしまう。その一言の重さを考えてみる。

上の子に、つい「お兄ちゃんだから」と言ってしまう。その一言の重さを考えてみる。
下の子が泣いていると、つい上の子に「あなたはお兄ちゃんなんだから、我慢しなさい」と言ってしまう。弟や妹におもちゃを貸してあげたとき「さすが、お姉ちゃんだね」と褒めてしまう。私たち親が、良かれと思って口にする、その言葉。でも、その「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから」という一言は、子どもの小さな肩に、私たちが思うよりも、ずっと重い荷物を背負わせてしまっているのかもしれません。
目次

1. 「お兄ちゃん」という、重たい鎧

「お兄ちゃんだから、しっかりしなさい」

「お姉ちゃんだから、泣かないの」

その言葉をかけられた瞬間から、子どもは「お兄ちゃん(お姉ちゃん)」という、立派な役割を演じなければならなくなります。それは、まるで重たい鎧のようです。

本当は自分だって泣きたい。自分だって、我慢したくない。自分だって、まだ甘えたい。 その素直な気持ちを、ぐっと鎧の中に閉じ込めて「しっかりした自分」を演じ続ける。

その健気な頑張りは、子どもの心を少しずつすり減らしていくかもしれません。

2. 彼らもまた「甘えたい一人の子ども」である

忘れてはいけないのは、上の子も、ほんの数年前まではパパとママの愛情を一身に受ける、一番小さな「赤ちゃん」だったという事実です。 弟や妹が生まれたことで、ただでさえ親の愛情を分け与えなければならない、という大きな試練に直面しています。

そんなときに「お兄ちゃんだから」という言葉で、さらに我慢を強いられてしまうと「弟(妹)が来たから、僕はもう甘えちゃいけないんだ」「パパとママはもう僕のことを見てくれないんだ」という、深い寂しさや疎外感を抱かせてしまうことにも繋がりかねません。

3. 「我慢」ではなく「優しさ」を、具体的に褒める

では、どのように声をかければいいのでしょうか。 そのヒントは、役割(お兄ちゃん)ではなく、その子の具体的な「行動」と「気持ち」に焦点を当てることです。

例えば、下の子におもちゃを貸してあげたとき。

「さすがお兄ちゃん!」ではなく、「今、弟くんに『どうぞ』ってしてあげたんだね。その優しい気持ちが、ママはとっても嬉しいな。ありがとう」と伝えてみましょう。

こうすることで、子どもは「お兄ちゃんだから我慢した」のではなく「自分の意思で、優しくできた」と、自分の行動を肯定的に捉えることができます。

その経験が、本当の意味での思いやりの心を育んでいくのです。

4. 上の子だけの「特別扱い」の時間を作る

上の子の「甘えたい」という気持ちを、たっぷりと満たしてあげるための「特別な時間」を意識的に作ることもとても大切です。

下の子が寝た後の15分間を「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だけタイム」にする。 その時間は下の子の話はせず、ただ上の子の話だけをじっくりと聞いてあげる。 絵本を読んだり、くすぐりあったり、ただぎゅーっと抱きしめてあげる。

「あなたも、ママとパパの大切なたった一人の宝物だよ」というメッセージを言葉と体で伝え続ける。 その時間が上の子の心を安定させ、下の子へ優しく接する余裕を生み出します。

5. 「お兄ちゃんだから」ではなく「あなただから」大好き

子どもは「お兄ちゃん(お姉ちゃん)だから」愛されているのではなく「〇〇くん(〇〇ちゃん)だから」愛されている、と感じる必要があります。

日々の会話の中で、その子の個性そのものをたくさん褒めてあげましょう。

「〇〇の描く絵は本当に面白いね」「〇〇の冗談を聞くと、いつも笑っちゃうよ」。

その子の役割や、きょうだい関係の中での立ち位置ではなく、その子自身の存在そのものを丸ごと肯定してあげること。

それが、子どもが自分らしく健やかに成長していくための何よりの土台になります。

まとめ

「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」。

その言葉には、上の子に強く、優しく、たくましく育ってほしいという親の深い愛情が込められています。 でも、その言葉が子どもの素直な心を縛る重たい鎖になってしまうこともある、ということをほんの少しだけ心に留めておきたいものです。

「お兄ちゃん」である前に、彼はあなたのかけがえのない一人の子どもです。 その子のありのままの気持ちを受け止め「あなただから大好きだよ」と伝え続けること。

その温かい眼差しこそが、上の子の心を本当の意味で強く、そして優しく育ててくれるのではないでしょうか。

ライター / 監修:でん吉(保育士)

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執筆者

保育士 でん吉

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