私たち大人にとって服を着ることはあたりまえの習慣です。 しかし自我が芽生え始めた子どもにとって、それは親の指示に従うか自分の意思を貫くかという“戦い”の場になることがあります。
子どもは自分の世界を自分で決めたい。 その健全な欲求が「この服は着たくない」という親への抵抗として現れるのです。
親が子どもの行動を力でコントロールしようとすればするほど、子どもは自分の「自分らしさ」を守るためにさらに頑なになってしまいます。
この戦いを一瞬で楽しい協力作業に変える魔法の言葉があります。 それが「どっちがいい?」という選択肢のプレゼントです。
親がその日の気候に合った服を2から3枚用意する。 そして子どもに尋ねるのです。
「今日はしましまのシャツと車のシャツどっちの気分?」
この問いかけは子どもの「自分で決めたい」という気持ちを全面的に尊重するメッセージになります。 指示される側から決定する側へと子どもの立場が逆転することで、自分から着替え始めることがよくあります。
この方法を試すとき親にはほんの少しの覚悟が必要です。 それは子どもの選ぶ組み合わせがたとえちぐはぐで大人のセンスとかけ離れていたとしても、それを認めてあげるという覚悟です。
もちろん気候に合わないなど健康に関わる場合は、親が優しく修正する必要があります。 でも、そうでないなら少しぐらい不思議なコーディネートでも大丈夫。
その服は子どもが「自分で決めた」という自信の証です。 その誇らしい気持ちはどんなにおしゃれな服よりも、子どもの一日を輝かせてくれるはずです。

朝の小さな成功体験は、その日の子どもの自己肯定感を支えます。 「朝、僕は自分で自分の服を決めたんだ」
その事実は園や学校で何かむずかしいことや不安なことに直面したとき「自分ならできる」と心を支える小さくて力強いお守りになります。 朝の時間はただ準備をするだけの時間ではありません。
その日を子どもがどんな気持ちで過ごすかを決める大切なスタートの時間なのです。
そしてこの方法は親自身の心にも平穏をもたらしてくれます。 毎朝繰り返されるお着替えを巡る不毛な戦い。
それは親のエネルギーを朝一番に大きく消耗させてしまいます。 子どもに選択を委ねることでその戦いはなくなります。
親はガミガミと叱る役割から解放され、子どもの選択を笑顔で応援するサポーターになることができます。 朝の空気が穏やかで温かいものに変わっていくのを感じられるでしょう。
子どもがなかなかお着替えをしない。 その姿は親を困らせるただの「わがまま」ではありません。
それは子どもの「自分」がすこやかに育っているよろこばしい証拠なのです。 その気持ちを頭ごなしに否定するのではなく尊重しかしこく導いてあげる。
その小さな工夫が、朝の慌ただしい時間をコミュニケーションの時間に変えてくれますよ。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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