
先生の話を聞かずに窓の外を見ている。これは一見すると集中力がないように見えます。 しかし彼らの脳内では全く別の情報処理が行われています。 空を流れる雲の形、窓ガラスに映る光の反射、床の木目。 みんなと同じ行動ができないのは「集中力がない」のではなく「別の対象への集中力が高すぎる」のです。
周りの声が聞こえなくなるほど何かに没頭できる能力。 これは研究者や芸術家、クリエイターにとって不可欠な資質です。 集団行動という枠には収まりきらないほどの探究心が、今はたまたま「ふらつき」として表れているだけなのです。
「みんながやっているから」という理由だけで納得して動ける子は育てやすい子です。 しかし集団行動が苦手な子は「なぜ今これをしなければならないの?」という疑問を無意識に抱いています。 自分の中に確固たる動機や納得感がないと動きたくない。 これは流されない強さを持っている証拠です。
歴史上の偉人や革新的な起業家の多くは、幼少期に集団行動が苦手だったというエピソードを持っています。 盲目的にルールに従うのではなく自分で納得解を探そうとする姿勢。 それは将来既存の常識を覆すリーダーシップや独創性へと化ける可能性を秘めています。
集団の中は騒がしく人との距離も近いです。 HSC(敏感な子)の傾向がある子にとって、その環境は刺激が強すぎて苦痛な場合があります。 大声や笛の音、肌が触れ合う感触。 列から離れて一人になりたがるのは、わがままではなく自分の心を守ろうとする避難行動かもしれません。
この鋭敏な感覚は豊かな感受性の裏返しです。 人の痛みに気づけたり美しい色彩や音を表現できたりすることもあります。 集団からはみ出すことで自分の感覚バランスを整えているのだとしたら、それは彼らにとって必要な防衛策なのです。
「今」集団行動ができなくても焦る必要はありません。 社会性や協調性は小学校、中学校、社会人と成長する過程で少しずつ身につけていくスキルです。 後からいくらでも学習可能です。 しかし幼児期特有の没入力や感性は、一度潰してしまうと二度と取り戻せない可能性があります。
今は社会性のトレーニングよりも、その子が本来持っている器を大きくする時期です。 無理に型にはめて小さくまとめるよりも、はみ出した枝葉を自由に伸ばしてあげる。 その方が大人になったときに太くたくましい大樹へと育ちます。まさに大器晩成です。

とはいえ集団生活でトラブルになるのは困ります。 なので、私たち保育士は無理やり連れ戻すことはしません。
「今は見ているだけでいいよ」「気が向いたらおいで」。
逃げ道を用意しつつ参加のハードルを下げて待ちます。
自分のタイミングで納得して参加したときの子どもは素晴らしい力を発揮します。 おやこでそのタイミングを信じて待つこと。 「うちの子はエンジンがかかるのが遅いだけ」と腹を括ってしまえば、周りと違う行動も個性として愛おしく見えてくるはずです。
集団行動が苦手な子は、誰にも似ていないオリジナルな人生を歩む子です。 みんなと同じことができないのは、みんなにはできないことができる可能性を秘めているから。 「あなたはあなたでいい」。 そのマイペースさを短所ではなく才能だと信じて、焦らずゆっくりと育んであげてください。
ライター / 監修:でん吉(保育士)
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