「お片付けしなさい!」と叱らなくても大丈夫。自分ですすんでお片付けできるようになる上手な接し方・声かけを整理収納アドバイザーの副島千尋さんに教えていただきます。
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子どもが自分でお片付けできるように環境を整えて、「これでお片付けができるはず!」と思っても、実際はなかなか子どもはお片付けをしません。
自分からお片付けをしてくれるようになるには、片付けられるしくみ作りの他にも、工夫が必要です。
子どもは自分でやりたい気持ちとやれる力を持っています。今回はその力を引き出すポイントをご紹介します。
子どもがまだ言葉を発しなくても、親は子どもに話しかけますよね。それと同じで0歳の時から「元の場所に戻そうね」と声をかけながら元に戻す動作を子どもに見せることがお片付けへのアプローチのはじまりです。
2歳くらいからは元に戻すこともできますが、脳が未発達で遊びの欲求を抑えて片付けをするというのはまだ難しいもの。
無理に子どもに片付けさせようとせず、親がやり方を見せる時期、一緒にやり始める時期と考えるとよいですね。
3~4歳になると、保育園や幼稚園など集団生活の中で片付けが習慣づいていきます。
しかし園ではできるけどお家ではやらない、ということも多いようです。園では必死に社会性を身につけようとがんばっているので、その分、家では好き勝手にやりたいという気持ちも。また、できるけれどやりたくないと葛藤する時期でもあります。
そんな時はお片付けという行為自体を遊びにしてみたり、声かけを工夫しながら楽しい雰囲気にするとできることが多いです。
お片付けは何歳からと決まってはいませんが、物をもって歩けるようになる頃からできるとは思います。しかし発達によって差がありますし、気分によってもムラがあるでしょう。今日できても明日はできない、なんてこともたびたびあるでしょう。
焦らず、一緒に楽しみながら少しずつ身につけていってください
散らかった部屋を前についつい「片付けなさい!」と大声を出してしまうこともありますよね…。でも、その言葉は正しくお子さんに伝わっていますか?
そもそも「片付ける」ということがどうすることがわからなければ、できるはずありませんよね。
「片付ける」とは「元の場所に戻すこと」です。
それがわかるように具体的に、たとえば「ブロックを箱に入れようね」などと伝えます。正しく子どもに伝わるように、始めは元に戻す動作を見せながら「片付けようね」と見本を見せるとよいですね。
「〇〇ちゃんの大事なものを元に戻そう」と言葉としぐさで、"モノを大切にするとはどのように扱うことなのか"も伝えていってください。
また、親が「片付けなきゃ!」といいながら押し入れの中にモノを詰め込んでいれば、子どもは片付けるとは「詰め込むこと」と誤った認識をしてしまいます。
子どもは大人の姿をよく見ていますから、気をつけたいものです。
片付けやすい環境が整っているのに、ちっとも片付けない…それは、子どもには片付けなければならない理由がないからです。
大人はある程度片付けることの必要性がわかりますが、子どもは片付けの必要性を誰かに教えてもらわなければわかりません。つまり「やらなくても困らない」と他人事なのです。
ですから、まず大事なのは、お片付けを子どもにとって「自分ごと」にすること。そのコツは2つあります。
まず1つ目は、お片付けのしくみづくりを子どもと一緒にやり意見を聞くこと。
「どこに置いたら元に戻しやすい?」とおもちゃの置き場所や配置を一緒に決めます。実際に片付ける場所を一緒に決めることで自分の場所に責任を持つようになりますし、何より自分の場所をもらうとうれしいものですよね。
決めた場所に親は口出しせず、尊重してあげることも大切です。
2つ目はお片付けのメリット・デメリットを理解すること。
「お片付けをすると気持ちがいい」「おもちゃがなくならない」「たくさんのスペースで遊べる」など、お片付けは自分の次の行動のためにするということをお片付けしながら伝えてください。
子どもが未来のことを考えるのは難しいですが、「次に遊ぶとき、おもちゃがないと悲しいね」と具体例を挙げたり、上手にできたら「片付けると広いスペースで遊べるね!」とさりげなく、少しずつ状況を伝えてください。
また、子どもはみんな「親を助けたい、頼りにされたい」と思っているもの。「あなたがやってくれると私が助かる!ありがとう」と感謝の気持ちを伝えられ、頼りにされていると思うと一生懸命やってくれます。
やってくれたときは大女優になりきって大げさに目いっぱいほめてください。ほめられたら誰だってうれしいですよね。
ちなみに私の息子は、私が「これどこに戻すんだっけ。忘れちゃったから教えて」というと、誇らしげに「ここだよ!片付けるよ!」とやってくれていました。
頼られるとうれしい子、勝負が好きで競争で片付ける子、音楽をかけると楽しみながら片付けられる子…いろいろな接し方があると思うので、子どもをよく観察してその子に合った方法を探してみてください。
また、片付けは急には"自分ごと"になりません。最初はお片付けまでが遊びととらえ、じょじょに習慣化させていってみてください。
習慣化させるには「○時には片付ける」「お風呂の前には片付ける」などわが家のルールを決めるとよいのですが、大変にならないように最初はゆるいルールにして続けられるようにしてくださいね。
なぜ、わが子にお片付けできるようになってほしいのでしょうか。
自分でやってくれれば親が楽ということもありますが、自分のことはきちんと自分でやってほしい、自立してほしいとの思いではないでしょうか。
私はふだんから色々な家庭のお子さんのお片付けに携わっていますが、お片付けは本当に色々な力に通ずるものがあるなと思っています。
自立心の他にも、モノに対する思いや大切にする気持ち、何が必要かを判断する力、どのように収めようか考える計画力、兄弟同士で相手を思いやる気持ち…。
お子さんとのお片付けの現場で様々な「生きる力」を身に付けていく瞬間に立ち会わせていただきました。
お片付けは単なるお片付けではなく、「生きる力」を身に付けることができることだと実感しています。知育や習い事もよいですが、片付けを子どもに教えていると、毎日の生活をちょっと意識するだけで子どもが成長する機会が本当にたくさんあるなと感じます。
子どもに合ったしくみと、楽しみながらお片付けができるようにする声かけ、子どもへの接し方を少しずつでもいいので続けているとお片付けは自然と身に付いていきます。
すぐにできるようにはならず、もどかしいこともあると思いますが、ネガティブな言葉はポジティブな言葉に置き換えてやる気を引き出してあげてください。
笑顔いっぱいのお片付けから親子の素敵なコミュニケーションが生まれ、子どもの成長へとつながっていきます。
整理収納アドバイザー 副島 千尋
大学卒業後、金融機関に勤務。退職後、整理収納アドバイザーの資格を取得し、「ととのYELL」を設立。個人宅の整理収納サービス、コラム執筆、各種セミナー講師として活動中。快適で無理のない「ちょうどいい暮らし」を提案している。おもちゃコンサルタントでもあり、子どもとの関わり方、お片付けにも力を入れている。
「ととのYELL」