「子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい」
そう言われたら、親としては少し戸惑いますよね。
でも続けて、
「親の心が明るくなれば、子どもの心は安定するから」
と言われたら、逆に「そうなんだ」とホッとしませんか?
教育者として第一線を走っており「百ます計算」を考案した隂山英男さんの著書『子どもの幸せを一番に考えるのはやめなさい』(SBクリエイティブ刊)には、タイトルはもちろん、本文内でも「こうであるべき」と思い込んでいたことをひっくり返されることがたくさん!
読み終えたあとに、もっと楽観的な子育てでいいんだ!と明るい気持ちになる一冊です。
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この本は
「今の日本、なぜか先行きが暗いように語られていますが、私はそれが不思議です」
という一文からはじまります。
出版されたのは、2021年6月。つまり、コロナ禍真っ最中。先が見えず不安や不満が募るなかでも、そう語る隂山さん。
この言葉には、今の時代は個人の可能性が広がりやすく、ネットをうまく使えば力も伸ばせるという意味が隠されています。
だから日本人にありがちな心配グセを止め、誰かに頼るのを止め、勉強し、挑戦し、この世に満ちるチャンスを自分のものにしよう、と語りかけているのです。
そして、親に迷いがなく心にときめきがあれば、子どもに常にポジティブなエネルギーを送ることができる。それこそが子どもへの最大の励ましであるとも伝えています。
「子どもの幸せを一番に考えるのはやめなさい」
というのは、
「子どもの幸せのために、まずは親が幸せになってね。それが子どもの幸せだから」
というメッセージでもあるのでした。
とはいえ、わが身を振り返っても自分のことより子どものことばかり。
平日も休日も関係なく子ども中心のタイムスケジュール。自分の「幸せ」とか「ときめき」とは遠い状況にいて、どうすれば…?
そんなママパパにこそ読んでほしい、「親が幸せに生きられるための13か条」がこの本には書かれています。
13か条のうち、一部をご紹介すると
などなど。
どれも力強く、固定観念を打ち破った考え方にあふれています。
それぞれの項目では子どもだけではなく親だって何歳になっても可能性を広げられることを、自らの人生経験を例に挙げて伝えています。
この隂山さんの人生がなかなかにバラエティに富んでいておもしろい!
とくに、学習面に関する考え方や習慣にすべきことのアドバイスは興味深いものばかりです。
たとえば、
「ゆっくり丁寧な指導では子どもは伸びない」。
一瞬、「えっ?」と思いましたが、読むと納得。
勉強とは集中する練習。
ゆっくり、丁寧に、時間をかけて定着させるというやり方では子どもの集中力は高まらず、学力を高められない。
短時間で一気に理解できるようにならないといけない…。そのために始めた学習法が「高速授業」。
実際にコロナ禍の休校措置期間に生み出されたこのやり方で、一人の取りこぼしもなく学力が伸びたそう。
また、教員時代の家庭訪問経験から生まれた「子どもの伸びる家づくり」のアイデアもユニークなものばかり。
リビング学習やお手伝いしやすいキッチンの設計、家の中の本棚の設置などについて、参考にしたい具体的なエピソードが詰まっていました。
40年間教育の現場に立ってきた隂山さんは、「親、とくに母親がどんどん大変な状況にある」ということを肌で感じてきているからこそ、「お母さんには幸せを感じて生きてほしい」と強く願っているのでしょう。
一方、その母親たちの心配グセが、子どもの自律や自信を奪っていることに少し危機感を抱いているのかもしれません。
「お母さんはもっと楽観的・楽天的に!」と訴えると同時に、そうすることで子どもの可能性がもっと広がると説得しています。
本書の結びに書かれている「私たち大人のやるべきことは、子どもが自分にふさわしい高い目標を描くように導いてあげること」という言葉。
親にとってはなかなか難しいものですが、できるかぎり意識して子育てをしていきたいですよね。
***
一冊を通して、親への子育て・生き方アドバイスに加え、基礎基本を徹底することの重要性を感じさせられました。
隂山さん自身が「百ます計算」など数々の隂山メソッドを世に出して子どもたちの学力向上に尽力してきたからこその説得力があります。
そして固定観念を打ち破るものの見方はとても斬新で痛快!読むと元気をもらえますよ♪
『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』
著:隂山 英男
発行:SBクリエイティブ
定価:新書991円(税込)/Kindle版(電子書籍)891円(税込)
【わたし的評価】
満足度 ★★★★☆
実践度 ★★★☆☆
読みやすさ ★★★★☆
わかりやすさ★★★★★
ライター 河瀬 みこと
大学卒業後16年間、教育関連企業で編集・マーケティング業務を担当。第一子妊娠時に退職。その後保育士資格を取得。二児の姉妹を育てながら、編集・ライター業に邁進中。
2023年春より、念願の「食堂+寺子屋 nuinu(ぬいぬ)」開業。