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話題の育児書を読んでみた!子育てブックレビュー

子育てに熱心な「高学歴親」が陥る子育ての病とは!?脳科学者が子どもの失敗を許せない親たちに送る話題の1冊

子育てに熱心な「高学歴親」が陥る子育ての病とは!?脳科学者が子どもの失敗を許せない親たちに送る話題の1冊
高学歴・学歴偏重主義の親たちが陥りやすい、狭い視野の子育てー”子どものため”と思っていることが実は子どもの気持ち・脳とは相反するものになっている!?小児脳科学者がそんな子育てに警鐘を鳴らす『高学歴親という病』(成田奈緒子著・講談社刊)。そこには、厳しくも温かい、親たちへのエールが詰まっていました!
目次

こんにちは、子育て中のライター・河瀬みことです。

わが家の長女は春から年長。あと1年で小学生になるのかという感慨深さと同時に、「そろそろおべんきょうの準備も」「遅れを取らないように」と親はそわそわ。

そんなときに大きな話題になり気になった本が『高学歴親という病』(成田奈緒子著・講談社刊)。筆者自身は高学歴の持ち主ではないものの、そのキャッチーなタイトルが気になり、気づいたら一気読みしていました!

※本ページはアフィリエイトプログラムを利用しています。

あるある…わが子の失敗を許せない、わたしたち

この本では、著者の成田さんが出会ってきた多くの高学歴親&子どもたちの様子を数多く紹介しています。成田さんは、ノーベル賞科学者山中伸弥教授と大学の同級生で共著もある脳科学者。代表を務める相談機関には多くの高学歴な親御さんが来られると言います。

たとえば、自分からなかなか宿題に取り組まない息子の横で問題を解かせ、息子の代わりに学校の準備から鉛筆を削ることまでをやってしまう親。

成田さんは「宿題も学校への持ち物も、子ども自身が困らない限り自分でやらないから、お母さんはほうっておいていいよ」と伝えるも、どうしても息子の「できなさ」が気になって手出し。息子さんは息子さんで、過度なお母さんの手出しにイライラして反抗的な態度に。

「どうして、私の思ったように育ってくれないんでしょうか。私はこんなに気にかけてあげているのに」とお母さんの嘆きが止まらないそう。

客観的に見れば「もう少し子ども任せでいいのでは?」と思いつつも…いざわが子だったらどうだろう? 「言わないとやらないんだから!」
「やってあげないとできなんだから!」
と、つい口や手を出してしまいそうな気がします。

その裏には、
「子どもに任せきれない」
「失敗して恥をかいてほしくない」
「ふつうにできる子でいてほしい」…そんな思いがあるから。

そう思うと、この本で書かれている「高学歴親」という言葉も他人事ではなく受け止められるようになりました。

子どもの脳の育ち方を間違えると、いずれ心身のバランスが崩れる!

しかし、そんな「失敗してほしくない」ゆえの親の手出しが、逆に子どもたちの脳の成長の可能性を削るという衝撃の事実が説かれています。

読んでいて非常に勉強になったのが、子どもの脳の育ち方についての解説。成田さんは「脳の発達は順序が大切」と強く繰り返します。

0~5歳の間は「からだの脳=生きるための脳」。
内臓の働きや自律機能の調節を行う脳などを育てる時期で、生活習慣がからだに身についたり、喜怒哀楽の表現を覚えていくそう。

だからこそ、赤ちゃんの時期にいっぱい話しかけたり笑いかけることが、子どもの情緒を豊かにし、「からだの脳」のあとに育ち始める「おりこうさんの脳」の土台となっていきます。

続いて発達する「おりこうさんの脳=人間らしさの脳」は1歳ごろから18歳ごろまで時間をかけて育ち、言葉や微細運動、勉強・スポーツといったさまざまな発達を促します。

そして10歳くらいから「からだの脳」と「おりこうさんの脳」をつなぐ「こころの脳」が育ち始めるのが正しい順番だと言います。「こころの脳」は、人間的な論理的思考を行う問題解決能力を指します。

この3段階で脳は育つのだけれど、多くの親たちが「からだの脳」を育てずに「おりこうさんの脳」と「こころの脳」の機能を求めているため、それが高学歴親の子育てでつまずく大きな要因だと成田さんは指摘。

幼少期は親の言うことをよく聞き優秀だった子どもが、小学校高学年以降に、不登校や不安障害など、こころの問題を引き起こすリスクが高まるとのこと。

だからこそ、成田さんは、早寝・早起き・朝ごはんもしっかり…といった生活リズムの改善が脳育てに不可欠な基礎と言います。

科学的な裏付けに基づいたアドバイスは、説得力があり、すぐにでもわが家でも気を付けていきたいと思いました!

子どもの成長を信頼して任せてみよう

学ぶことが非常に多い一冊ではありましたが、読んでいて安心したこともたくさんあります。

早期教育がかならずしも「頭がよくなる」ことに直結するわけではないということ。
それよりも睡眠時間の確保のほうが、時期的に大切なこと。
また、「からだの脳」はいつからでも育て直せるという事実にも、心強く感じました。

そしてそれらの基礎は、正しい生活リズム。これは今日からでも意識して改善していかねばと強く思いました。

また、「おりこうさんの脳」をよく育てるコツは、「学校で習う以外の知識・情報」も大切ということも。宇宙人でも鉄道でも虫でもなんでも、子どもが本当に興味を持って自発的に知識を得ようとする姿が見られれば脳育ては大成功と言います。

5歳の長女は「プリキュア」シリーズが大好きで、いつの間にか歌やダンスも練習し、「大きくなったらプリキュアになる!」という夢を持っています。前向きに応援したいと思う筆者でした!

『子育ては「心配」を「信頼」に変える旅』これは成田さんが提唱する言葉です。
つい手や口を出して子どもに任せられない、でも子どもの成長には信頼して任せてみる、失敗してもそこから学ぶことを体験させる…完全にはムリでも、親として意識していきたいことが多く書かれています。

「高学歴親」でも、そうでなくても、子どもの健やかな成長のために親が知っておきたい情報がわかりやすくギュッと詰まっています。ぜひ子育てに行き詰まる前におすすめしたい一冊でした。

『高学歴親という病』
著:成田奈緒子
発行:講談社
価格:単行本(新書)990円(税込)/Kindle版(電子書籍)935円(税込) Amazon購入はこちら

【わたし的評価】
満足度   ★★★★☆
実践度   ★★★☆☆
読みやすさ ★★★★☆
わかりやすさ★★★★☆

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執筆者

ライター 河瀬 みこと

大学卒業後16年間、教育関連企業で編集・マーケティング業務を担当。第一子妊娠時に退職。その後保育士資格を取得。二児の姉妹を育てながら、編集・ライター業に邁進中。
2023年春より、念願の「食堂+寺子屋 nuinu(ぬいぬ)」開業。

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