先日、麦芽飲料「ミロ」が手軽に鉄分補給できると話題になり、人気が加熱して販売中止を発表しましたね。そんなふうに、人々がいま関心をもっているのが「鉄分」。
鉄分不足というと、大人の女性のテーマのように思いますが、子どもたちにとっても「鉄分」はもちろん必要不可欠な栄養素です。
たんぱく質とくっつき、血液中の赤血球の素となるヘモグロビンの主原料となるのが「鉄」。ヘモグロビンは肺で酸素とくっつき、体の隅々の細胞まで酸素を運ぶ働きをしています。
ヘモグロビンの主原料にならなかった残りの鉄は、肝臓、脾臓や筋肉、骨髄などに蓄えられます。この鉄はヘモグロビンになる鉄が足りなくなった時に使われる、貯蔵鉄として蓄えられているのです。
蓄えられた鉄が少なくなると「鉄欠乏性貧血」という状態になり、全身にくまなく酸素を運ぶことができないため、動悸や息切れ、頭痛、疲れやすい、だるい、集中力に欠ける、イライラするなどの症状が出てきます。
また、鉄は脳の神経伝達物質の合成にも関与するため、不足すると気分が落ち込んだり、睡眠障害などを引き起こすこともあります。
鉄不足の心配があるのは、子どもでいうとまずは乳児期です。
赤ちゃんは、お腹の中でお母さんから鉄分をもらって貯蔵鉄を蓄えた状態で生まれてきます。母乳にも鉄分が含まれていますが、生後半年がすぎる頃になると、母乳には鉄が不足しはじめます。そのため、離乳食が始まったら、ほうれん草、小松菜、豆腐などから少しずつ鉄分を意識して食べさせるようにといわれるのはそのためなのです。
さらに、女の子の場合、10歳〜13歳ごろに生理が始まると出血により鉄が失われるため、食事でしっかり鉄の摂取をすることが重要になってきます。この時期は体型を気にして食事を減らしたり、偏った食生活をしてまうことも多いのですが、鉄欠乏性貧血になりやすいので注意が必要です。
その時期から比較すると、幼児期は特に鉄分不足を神経質に気にする必要はありません。たんぱく質、カルシウム、ビタミンなどといっしょにバランスよく食事がとれていれば、不足する心配はないでしょう。
ただし、鉄はヘモグロビンになることで消費される以外にも、汗と一緒に体外に排出されてしまうため活動量の多い子どもや、特に汗をよくかく夏には意識して鉄を摂るように心がけましょう。
ちなみに、めまい立ちくらみがする貧血は「脳貧血」といい、脳に一時的に血液が上手にいかないために脳が酸欠になった状態で、「貧血」とは言っても鉄が不足することによる貧血とは異なります。
3歳〜5歳の子どもが、1日の食事で摂るべき鉄の推奨量は男女ともに5.5mg。これに対して実際に1日に摂っている鉄の量はおよそ4mgと言われています。そのため、鉄分不足を心配しなくてよいといっても、積極的に鉄を多く含む食材は摂っていくことが望ましいと言えるでしょう。
※参考文献:厚生労働省 鉄の食事摂取基準
鉄を多く含む食材位というと、「レバー」を連想する人も多いと思いますが、鉄はレバー以外の食材にも含まれています。 鉄には、動物性の食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性の食品に含まれる「非ヘム鉄」があります。鉄を多く含む食材には以下のようなものがあります。
また
ヘム鉄と非ヘム鉄は体内での吸収率が異なり、ヘム鉄は高く、非ヘム鉄は低いです。
実際、食事で摂ったおおよそ15%程度しか吸収されないと言われているのが「鉄」。でも大丈夫、一緒に摂る食材の組み合わせ次第で吸収を良くすることができます。
野菜や果物、いも類などに多く含まれるビタミンCを一緒に摂ることで、鉄の吸収率がアップします。
牛肉と一緒にビタミンCの多いパプリカやブロッコリーを炒めたり、あさりと一緒にキャベツを蒸したり、料理の仕上げにレモンを絞るなども。果物が好きな子どもならば、食事の際にビタミンCを多く含むいちご、キウイ、オレンジなどの果物を一緒に出すようにするのもおすすめです。
鉄はたんぱく質を一緒に摂ることで吸収率がアップします。もともとたんぱく質、鉄を多く含む肉類や魚介類は単体で食べても吸収が良いのですが、たんぱく質を含まない野菜、果物などを食べる際にはたんぱく質を一緒にとるのがおすすめ。
緑茶、烏龍茶、紅茶、コーヒーなどに含まれる「タンニン」は鉄にくっついて吸収を阻害してしまいます。食事中、食後はタンニンを含まない飲み物を選ぶようにしましょう。
ハムやソーセージ、インスタントラーメンやスナック菓子に多く含まれる「リン酸塩」も鉄の吸収を阻害するので注意が必要です。
よく噛むことで胃液が分泌されます。胃液が分泌されることで鉄の吸収を高まります。
いかがでしたか?
意外に身近な食材にも含まれている鉄。まずはしっかり3食食べることから始めてみてくださいね。
管理栄養士・料理研究家 尾花 友理
給食委託会社において産業給食、保育園給食などの献立作成及び給食管理、栄養相談などを経験。料理研究家のアシスタントを経て、大手レシピサイト運営会社にてレシピ開発や動画撮影に従事後、独立。管理栄養士としての豊富な知識とリアルな生活者の気持ちや暮らしに寄り添った、取り入れやすい栄養アドバイスやレシピに定評がある。
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